ところが透析患者さんでは、腎機能がていかしているために、体内の水分量を調節することができません。
そのため、水分をとり過ぎると、心臓・血管に大きな負担がかかり、さまざまな症状や身体の変化が現れてきます。
≪水分を摂り過ぎた時の症状・からだの変化≫
・むくみ
・体重増加
・咳・痰が出る
・寝ていると息苦しい
・動機、息切れ、呼吸困難
・胸痛、胸が苦しい
・血圧上昇
・ヘマトクリット値が下がる
・心胸比が50%以上になる
・肺に水が溜まる
≪水分を摂り過ぎた時の透析合併症≫
▼高血圧透析患者さんでよく見られる高血圧は、容量依存性高血圧といわれ、からだの水分量(体液量)の過剰が原因です。この場合、摂取水分と塩分量を減らすことにより血圧を下げることが出来ます。
※一般的に高血圧はさまざまな合併症を引き起こす生活習慣病としてもよく知られています。高血圧が持続すると心肥大(心臓が大きくなる)を起こし、心臓の機能を低下させたり、動脈硬化を悪化させます。また高血圧は虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)や脳血管障害に対しても危険因子となります。
▼心不全
心不全は、全身に必要な血液が送られない状態です。水分を塩分の摂り過ぎが原因であることが多く、過剰な水分と塩分により、心臓の仕事量が増え、最終的に心臓の働きが低下します。水分を摂り過ぎた症状の大部分は、心不全が原因であることが多く、最も注意すべき合併症です。
▼肺うっ血
肺が水浸しになった状態で心不全に合併してみられます。呼吸が苦しく、泡状の痰が出たりします。血液中の酸素濃度が低くなり、早急に透析で水を除去しないと危険な状態です。
≪ポイントは、ナトリウム≫
ナトリウムは、主に細胞の外に存在し、細胞外液の水分量を調節する役割を果たしています。体内では、ナトリウムは水分とともに移動し、血管内の血液の量を維持する重要な役割を果たしています。※ナトリウム=塩分と考える。
≪ナトリウムの動き≫
食塩として口から入ったナトリウムは吸収され、血液の中に入ります。ナトリウムが血液に入ることにより、血液中の塩分濃度は濃くなりますが、血液の塩分濃度を一定に保つ必要があるため、血液中への水分移動が起こります。
血液中の塩分濃度が濃くなると、喉が渇いて飲水が多くなり、血液の塩分濃度を正常化します。その後、健常であれば余分に摂った水分や塩分は腎臓から排泄されますが、透析患者さんでは腎臓による水分の調節能力がほとんどないため、ナトリウムの摂取によって、体内の水分は溜まる一方になり、不都合が生じてきます。
喉が渇いて水を飲んでしまうために、塩分の摂り過ぎは水分管理の最大の敵と言えます。
≪水分調節は透析の大切な役割≫
血液透析には、大きく分けて4つの役割があります。➀尿毒素毒素を取り除く:尿素窒素やクレアチニンなどの老廃物が除去されます。
②過剰な水分を取り除く:体内の過剰な水分を取り除き、からだの水分量を一定に保ちます。
③電解質を調節する:血液中におけるナトリウム、カリウム、カルシウム、リンといった電解質の濃度を正常に近づけます。
④血液のpHを一定に保つ:血液中のpHを正常な状態である弱アルカリ性になるようにします。水分やナトリウムは、透析で除去されますが、1回の透析で除去する量を多くすると、身体に負担がかかり、ふらつき、血液低下、気分の不良を招きます。したがって、塩分や水分を控える必要があります。
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