2019年5月29日水曜日

■タリージェの開発の経緯は!?

タリージェ錠(一般名:ミロガバリンベシル酸塩)は、第一三共株式会社が創製した電位依存性カルシウムチャネルα2δサブユニットに対するリガンドであり、新規の末梢性神経障害性疼痛治療剤です。α2δリガンドはシナプス前終末においてカルシウムイオンの流入を減少させ、興奮性神経伝達物質の放出を抑制することで痛みの緩和をもたらすと考えられています。本剤は、α2δサブユニットに強力かつ特異的に結合することで鎮痛作用を発揮します。また、神経障害性疼痛モデル動物を用いた検討では、疼痛閾値の上昇作用が示されました。


 
神経障害性疼痛は、国際疼痛学会により「体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛」と定義されており、原因となる神経の損傷部位の解剖学的な位置によって「末梢性神経障害性疼痛」と「中枢性神経障害性疼痛」に分類されます。末梢性神経障害性疼痛には、糖尿病性末梢神経障害性疼痛(diabetic peripheral neuropathic painDPNP)、帯状疱疹後神経痛(post-herpetic neuralgiaPHN)や、その他神経根障害等の多くの疾患が含まれます。日本で糖尿病が強く疑われる人は約1,000万人と推測されており、糖尿病患者さんのうち、DPNPを有する割合は約922%と報告されています。また、日本における帯状疱疹の年間発症数は約60万人とされており、そのうち、PHNを有する割合は1025%と報告されています。したがって、日本でも多くの患者さんが末梢性神経障害性疼痛を有していると考えられます。 

本剤は、第Ⅰ相試験で良好な忍容性、経口吸収性が確認された後、日本を含むアジア地域での国際共同試験として、DPNP患者さんを対象とした第Ⅱ相試験、DPNP患者さん及びPHN患者さんをそれぞれ対象とした第Ⅲ相試験を実施しました。その結果、本剤の有効性が検証され、安全性が確認されたことから、製造販売承認申請を行い、20191月に末梢性神経障害性疼痛を効能・効果としてタリージェ錠2.5mg5mg10mg及び15mgの承認を取得しました。

(第一三共社より)
 



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■タリージェの食事の影響は!?

タリージェの吸収速度は食事により低下しますが、その影響は限定的であり、食事の有無によらず服薬可能と考えられました。
<外国人データ:タリージェインタビューフォーム>
タリージェの用法・用量における食前・食後の指示はありません
 
 

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2019年5月28日火曜日

■タリージェの特徴

1)電位依存性カルシウムチャネルα2δ-1サブユニットに強力かつ持続的に結合(in vitro)し、鎮痛効果を発揮する国産の新規末梢性神経障害性疼痛治療剤。

2)日本人を含むアジア人を対象とした第Ⅲ相臨床試験で、優れた鎮痛効果を示している。

3)タリージェ30mg/日群では、投与開始1週目から平均疼痛スコアの低下を示している。

4)日本人を含むアジア人を対象とした第Ⅲ相臨床試験(長期投与期)において、52週にわたり鎮痛効果が維持されたことが確認されている。

5)臨床試験における副作用の発現状況は以下のとおり。
▽糖尿病性末梢神経障害性疼痛(DPNP
日本を含むアジアで実施したDPNP患者を対象とした臨床試験において、854例中267例(31.3%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められました。主な副作用は、傾眠107例(12.5%)、浮動性めまい77例(9.0%)、体重増加27例(3.2%)等でした。〔承認時〕

●帯状疱疹後神経痛(PHN
日本を含むアジアで実施したPHN患者を対象とした臨床試験において、553例中241例(43.6%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められました。主な副作用は、傾眠110例(19.9%)、浮動性めまい65例(11.8%)、体重増加37例(6.7%)等でした。〔承認時〕

重大な副作用として、めまい(頻度不明)、傾眠(頻度不明)、意識消失(0.1%未満)、肝機能障害(頻度不明)があらわれることがある。





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2019年5月12日日曜日

■血液製剤とは!?

¢血液製剤とは、輸血用血液製剤と血漿分画製剤に分かれる。
¢輸血用血液製剤:医療機関に届けられる輸血用血液製剤は赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤がほとんどである。
¢血漿分画製剤:主なものに、アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤がある。

≪保管≫
・各製剤に定められた保管方法を遵守する。

≪搬送≫
・各製剤の保管方法に応じた搬送方法をとる。

≪投与≫・同意書を確認する(同意書がない場合は、輸血をしない)

・輸血用血液製剤の場合は輸血バッグ、適合票、血液型報告書の3点の血液型が一致していることを必ず確認する(血液型の不適合は重大な副作用を起こすため、必ず2人以上の医療従事者で確認する)

≪廃棄≫
・医療廃棄物として処理する。副作用が出現した場合は、該当する輸血バッグを回収するため廃棄しない。
・未使用分は速やかに検査室・薬局に返却する。

≪記録≫・輸血用血液製剤の使用に際する記録と保管については、血液製剤(輸血用血液製剤及び血漿分画製剤)であって特定生物由来製品に指定されたものについては、将来、当該血液製剤の使用により患者へのウイルス感染などのおそれが生じた場合に対処するため、診療録とは別に、当該血液製剤に関する記録を作成する必要があります。
記録する内容としては、
1
患者氏名、住所
2
製品名及び製造番号(ロット番号)
3
投与日
4
その他保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するために必要な事項
で、これらは紙媒体での記録でなくても構いません


作成した記録は、診療録とは別に、少なくとも使用日から20年を下回らない期間保管する必要があります

*インフォームドコンセント(十分な説明と同意)。
  薬剤受け取りの際は同意書または確認書を持参する。
*血液製剤専用処方せんを使用。
ロット番号(シール)を伝票へ貼付。
使用記録を20年間保存。



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2019年5月6日月曜日

■GI療法(じーあいりょうほう/グルコース・インスリン療法)とは、

 GI療法(じーあいりょうほう/グルコース・インスリン療法)とは、インスリンとブドウ糖を同時に投与して血液中のカリウム濃度を下げる高カリウム血症の治療法です。
 
 高カリウム血症は、血液中のカリウム濃度が高くなった状態(通常5mEq/Lを超える場合)を指します。特に6.5mEq/L以上では、重篤な不整脈を引き起こし致死的になることがありカリウム濃度を下げる必要があります。
 
 インスリンは、血中のブドウ糖とカリウムを同時に細胞内に取り込んで、血糖値を下げます。GI療法はこの性質を利用した治療法です。インスリンのみを投与すると低血糖になるためグルコースを補います。

 投与方法は、静脈注射か点滴注射で行い、内容は施設によって異なることが多いです。治療中は血糖測定を行い、低血糖症状(動悸、発汗、振戦、意識障害など)に注意が必要です。また心電図波形を観察(高カリウム血症ではP波の消失、QRS幅の延長、テント状T波、低カリウム血症ではST低下、T波の平定化、U波の増高など)、カリウム変動に伴う症状(高カリウム血症では脱力感、四肢のしびれ、低カリウム血症では四肢緊張の低下、全身倦怠感、周期性四肢麻痺)の出現に注意が必要です。特に腎機能の低下している患者ではインスリンの分解が遅いため、低血糖が遷延する場合があります。



▼血糖値300未満
50%ブドウ糖50mlにレギュラーインスリン10単位混注して静脈内投与
低血糖予防に10%ブドウ糖50ml 1時間で静脈内投与
血糖値を1時間ごとに測定、6時間までフォロー

▼血糖値300以上
レギュラーインスリン10単位静脈内投与
ブドウ糖追加投与は不要


②インスリンをブドウ糖34gに対し1単位(もし糖尿病があればブドウ糖2gに対し1単位)加えた2050%高張ブドウ糖液200300mlを、30分くらいで静脈内投与。


50%ブドウ糖50mlまたは10%ブドウ糖250mlまたは5%ブドウ糖500mlに速効性インスリン510単位を入れて静脈内に持続投与する。


④レギュラーインスリン510単位を静注し、この直後またはこれと同時に50%ブドウ糖50mlを迅速に投与する。低血糖予防のために、10%ブドウ糖50ml/時で引き続き投与する。



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