今回から褥瘡(じょくそう)シリーズに入ります。褥瘡は「床ずれ」とも呼ばれる創傷で、高齢者・長期臥床患者に多く発生します。薬剤師として知っておくべき褥瘡の基礎知識を解説します。
褥瘡とは
褥瘡(pressure ulcer / pressure injury)とは、身体に加わった外圧(圧力・ずれ・摩擦)によって、皮膚・皮下組織・筋肉などが損傷した状態です。
俗に「床ずれ(とこずれ)」とも呼ばれます。
褥瘡が発生するメカニズム
圧力(pressure) 骨突出部(仙骨・踵骨・肘・後頭部など)と床やマットレスの間の皮膚・組織に持続的な圧力がかかると、毛細血管が閉塞して血流が途絶え、組織が壊死します。
ずれ(shear) ベッドの頭部を挙上した時に、皮膚は固定されたまま体が滑り落ちようとすることで、皮膚内部でずれ力が働き組織が損傷します。
摩擦(friction) 体位変換や移動の際に皮膚が擦れることで、表面が傷つきます。
褥瘡の好発部位
体位によって発生しやすい部位が異なります。
仰臥位(あおむけ):仙骨部・踵骨部・肘・後頭部・肩甲骨
側臥位(横向き):大転子部(お尻の横)・腸骨稜・膝の内側・足首
腹臥位(うつ伏せ):額・膝・足背
仙骨部と踵骨部が最も多い発生部位です。
褥瘡のステージ分類
日本では日本褥瘡学会の「深達度分類」と、NPUAP(北米褥瘡諮問委員会)分類が使われます。
ステージⅠ(発赤) 皮膚の損傷はないが、圧力を加えても白くならない発赤(不可逆的な発赤)がある状態。皮膚は完全。
ステージⅡ(真皮に至る部分損傷) 表皮または真皮を含む浅い損傷。水泡・びらんが見られる。
ステージⅢ(皮下組織に至る全層損傷) 皮下組織まで達する全層損傷。壊死組織・肉芽組織が見られることがある。骨・腱・筋は露出していない。
ステージⅣ(筋肉・骨・支持組織に至る全層損傷) 骨・腱・筋肉が露出するほどの深い全層損傷。壊死組織が認められることがある。
皮膚の老化とドライスキン
**ドライスキン(乾燥肌)**の問題も褥瘡と密接に関係しています。
65歳以上の90%以上にドライスキンが見られます。皮膚の水分・皮脂が不足して乾燥した状態で、褥瘡発生のリスク因子になります。
皮膚の老化は18〜20歳でピークを迎え、それ以降はゆっくり低下。女性では45歳、男性では55歳頃からはっきりした皮膚の老化が始まります。
ドライスキンケアの注意点:
- 掻いてはいけない。掻くと痒みを感じる神経が伸びてさらに痒くなる悪循環に
- 保湿剤は入浴後5分以内に塗ることが効果的
- 尿素含有の保湿剤は傷があるとピリピリする場合がある
褥瘡発生のリスク因子
内因性リスク因子:
- 低栄養状態(低Alb血症)
- 浮腫
- 感覚・運動障害
- 失禁(皮膚の湿潤)
- 循環障害
外因性リスク因子:
- 圧力・ずれ・摩擦
- 体位変換の不足
- 不適切なマットレス
褥瘡予防の基本
① 体位変換 2時間ごとの体位変換が基本(リスクが高い場合は1時間ごとも)。ずれを作らない移動技術も重要。
② 体圧分散マットレス エアマットレス・ウレタンマットレスなど体圧を分散するマットレスの使用。
③ スキンケア 皮膚の清潔・保湿。失禁がある場合は撥水性のある保護クリームの使用。
④ 栄養管理(NSTとの連携) 低栄養は褥瘡の最大のリスク因子のひとつ。栄養状態の改善なしに褥瘡は治らない。
まとめ
- 褥瘡=圧力・ずれ・摩擦による皮膚・組織の損傷(床ずれ)
- 好発部位:仙骨部・踵骨部(仰臥位)
- ステージⅠ〜Ⅳ:発赤→真皮損傷→皮下組織損傷→骨・筋露出
- 65歳以上の90%以上にドライスキンあり。褥瘡発生リスク因子
- 予防の基本:体位変換・体圧分散マットレス・スキンケア・栄養管理
次回は「モイストウンドヒーリング:傷は乾かすな!」を解説します。
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