「絶食中だからソルデム3Aを入れています」——この状況、実はとても危険かもしれません。ソルデム3Aを1日3本投与しても、カロリーはわずか258kcal。「おにぎり1.5個分」の栄養しかありません。今回は輸液のカロリーと栄養問題を徹底解説します。
あなたはこの輸液のカロリーを知っていますか?
病棟でよく使われる輸液のカロリーを確認してみましょう。
| 輸液製剤 | カロリー | 特徴 |
|---|---|---|
| ラクトリンゲル 500ml | 0kcal | 電解質補液のみ |
| 生理食塩水 500ml | 0kcal | 電解質補液のみ |
| ソルデム1 500ml | 52kcal | ブドウ糖26g含有 |
| ソルデム3A 500ml | 86kcal | ブドウ糖43g含有 |
| 5%ブドウ糖 500ml | 100kcal | ブドウ糖50g |
| 10%ブドウ糖 500ml | 200kcal | ブドウ糖100g |
| 50%ブドウ糖 200ml | 400kcal | 高濃度 |
| ビーフリード 500ml | 210kcal | アミノ酸15g(+ブドウ糖100g) |
| 20%イントラリポス 100ml | 200kcal | 脂肪乳剤 |
| エルネオパ1号 1000ml | 560kcal | TPN製剤 |
| エルネオパ2号 1000ml | 820kcal | TPN製剤 |
ソルデム3A×3本は「おにぎり1.5個分」
よくある絶食患者への処方:
ソルデム3A 500ml × 3本 = 258kcal
おにぎり1個が約170kcalとすると、1日3本の点滴でおにぎり1.5個分しかカロリーが摂れていません。
しかもソルデム3Aにはたんぱく質(アミノ酸)が全く含まれていません。
血清Alb(アルブミン)値が下がるのは当然のことです。
たんぱく質が入っていない点滴の問題
ソルデム3Aなど多くの維持輸液製剤には、たんぱく質(アミノ酸)が含まれていません。
人間の体はたんぱく質を常に消費しています。特に病気やケガのある患者さんはたんぱく質の需要が高まります。
たんぱく質(アミノ酸)が補給されないと:
- 筋肉が分解されてエネルギーとして使われる(筋肉量の低下)
- アルブミン合成が低下して血清Alb値が下がる
- 傷の治癒が遅れる(コラーゲン合成に必要)
- 免疫機能が低下する
- 褥瘡の発生・悪化リスクが上がる
ビーフリードに変えるだけで変わること
ソルデム3A 500ml×3本をビーフリード 500ml×3本に変えると——
| ソルデム3A ×3本 | ビーフリード ×3本 | |
|---|---|---|
| カロリー | 258kcal | 630kcal |
| アミノ酸 | 0g | 45g |
| 電解質組成 | 維持液 | ほぼ同様の維持液 |
電解質組成はほぼ同じなので、多くの症例でソルデム3Aの代替として使えます(腎機能低下など個別判断が必要)。
浸透圧が上がり、静脈炎リスクが上がるのはデメリットです。
さらに20%イントラリポス 100mlを側管から追加すれば:
630kcal + 200kcal = 830kcal まで増量可能です。
イントラリポスを側管から投与することにより、浸透圧が下がるので、静脈炎リスクも下がります。
絶食患者に必要なカロリーは?
一般的な必要エネルギー量の計算式:
Harris-Benedict式(簡易計算)
- 男性:66.5 + 13.8×体重(kg) + 5.0×身長(cm) - 6.8×年齢
- 女性:655.1 + 9.6×体重(kg) + 1.9×身長(cm) - 4.7×年齢
さらにストレス係数・活動係数をかけます。
簡便法:体重×25〜30kcal/日
例:体重60kgの患者なら1500〜1800kcal/日が目安です。
ソルデム3A×3本の258kcalでは目安量の15〜17%しか充足できません。
「BUN/Creatinine比」で栄養状態を読む
薬剤師がNSTでよく確認する検査値のひとつがBUN/Cre比です。
- BUN(血中尿素窒素):たんぱく質の代謝産物
- Creatinine(クレアチニン):筋肉の代謝産物
BUN/Cre比が高い(20以上):
- たんぱく質の過剰投与
- 脱水(BUNは上昇するがCreは正常)
BUN/Cre比が低い:
- たんぱく質摂取不足(消耗状態)
このような検査値を読みながら、適切な輸液・栄養療法を提案することが薬剤師のNST業務です。
経腸栄養が使えるなら経腸栄養を優先
「腸が使えるなら腸を使う(If the gut works, use it!)」
これはNSTの基本原則です。
経腸栄養(経鼻チューブ・胃瘻・腸瘻)が使える場合は、静脈栄養より優先します。理由は:
- 腸管免疫の維持(腸を使わないと腸管バリア機能が低下)
- 感染性合併症の減少
- コストが安い
- 生理的な栄養補給ができる
どうしても経腸栄養が難しい場合に末梢静脈栄養(PPN)または中心静脈栄養(TPN)を選択します。
まとめ
- ソルデム3A×3本=258kcal=おにぎり1.5個分。これでは栄養不足
- 多くの維持輸液にたんぱく質(アミノ酸)は含まれていない
- ビーフリードへの変更だけで630kcal+アミノ酸45gを確保できる
- 目安のカロリーは体重×25〜30kcal/日
- BUN/Cre比で脱水・過剰・不足を評価する
- 腸が使えるなら経腸栄養を優先する
次回は経腸栄養・経静脈栄養の種類と選択について解説します。
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