2026年7月26日日曜日

NSTの目的・役割・活動成果10選:なぜNSTが病院に必要なのか【NSTシリーズ②】

 「NSTって何をしているの?」という疑問に、具体的な目的・役割・活動成果で答えます。NSTは患者さんの回復を助けるだけでなく、病院経営にも大きな効果をもたらします。


NSTの10の目的

①症例個々に応じた適切な栄養管理法の選択とその実施 

②適切かつ質の高い栄養管理の提供 

③早期栄養障害の発見と早期栄養療法の開始 

④栄養療法による合併症の予防 

⑤疾患罹病率・死亡率の減少 

⑥病院スタッフのレベルアップ 

⑦医療安全管理の確立とリスクの回避 

⑧栄養素材・資材の適正使用による経費削減 

⑨在院日数の短縮と入院費の節減 

⑩在宅治療症例の再入院や重症化の抑制

数字を見ると「在院日数の短縮」「経費削減」という病院経営的な目的も含まれていることがわかります。NSTは患者さんのためだけでなく、病院全体の経営改善にも貢献するのです。


NSTの7つの役割

①栄養管理が必要か否かの判定(栄養アセスメント) 

②適切な栄養管理がなされているかのチェック 

③最もふさわしい栄養管理法の指導・提言 

④栄養管理に伴う合併症の予防・早期発見・治療 

⑤栄養管理上の疑問(コンサルテーション)への回答 

⑥新しい知識・技術の紹介・啓発 

⑦栄養療法の評価・効果判定

薬剤師はこの中で特に「③の提言」「④の合併症予防」「⑤のコンサルテーション」に大きく貢献します。輸液・薬剤の専門家として、栄養投与ルートの提案から相互作用の確認まで幅広く関わります。


NSTの活動成果8つ

実際にNSTが機能している病院では以下の成果が得られます。

①栄養療法の適正化による中心静脈栄養の減少と経口・経腸栄養の増加 

②カテーテル敗血症などの合併症の減少 

③院内感染をはじめとする感染症の予防と抗生剤使用量の減少 

④褥瘡発生率の減少 

⑤地域一体型NSTによる地域医療連携の強化 

⑥医療安全管理体制の確立 

⑦平均在院日数の短縮(治療効果の促進) 

⑧医療費の削減と病院経営の改善

特に注目すべきは「④褥瘡発生率の減少」です。褥瘡は栄養状態と密接に関係しており、NSTが機能している病院では褥瘡の発生が減ります。


DPC(包括医療制度)とNSTの関係

NSTが病院経営に必要な理由として、DPC(Diagnosis Procedure Combination:包括医療制度)との関係があります。

従来の「出来高払い制度(使っただけ払われる)」から「定額払い制度(ある病気の治療ならいくら、と決まった金額しか払われない)」に変わってきています。

DPCでは、感染症などの合併症が起きて抗生物質を投与したり、創の治癒が悪くて入院期間が長くなったりすると、その分の費用は病院負担となります。つまり病院は赤字になります。

この定額払い制度が導入されて以来、病院全体で合併症を減らして病院経営が悪化しないように、感染対策チーム(ICT)やNSTが設置されてきているともいえます。


チーム医療と診療報酬

チーム医療と診療報酬の関係を整理します。

チーム診療報酬
感染対策チーム(ICT)加算・減算
安全対策チーム減算
褥瘡対策チーム加算&減算
緩和ケアチーム加算
NST(栄養サポートチーム)加算

NSTは加算が算定できます。適切なNST活動をすることで、病院の収益にもプラスになります。


NST導入で変わる職場環境

NSTが機能すると、スタッフレベルでも変化が現れます。

人的リスクの回避

  • 患者・家族からの不満・苦情の著減
  • 患者満足度の向上
  • 職種間の良好な情報交換による一貫した診療情報の確立
  • 誤投薬の回避(職員の知識・意識向上)
  • 全職員のサービス・接遇の改善
  • 人材開発の促進(チームリーダーの輩出)

業務システムの質向上

  • 経腸栄養ルートの誤接続防止
  • カテーテル敗血症の著減
  • 中心静脈栄養症例の減少
  • 全症例に対する適正カロリー投与の実施
  • 院内感染の減少
  • 高齢者褥瘡発生率の低下

まとめ

  • NSTの目的は10項目。患者の回復から病院経営改善まで含む
  • NSTの役割は7項目。栄養アセスメントから効果判定まで
  • 活動成果:褥瘡減少・感染症減少・在院日数短縮・経費削減
  • DPCの普及でNSTの重要性はさらに高まっている
  • NST加算は病院収益にもプラス

次回は「薬剤師がNSTで担う具体的な役割」を解説します。


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NSTとは何か① 

hospharブログ(病院薬剤師の専門情報)

2026年7月25日土曜日

NSTとは何か?栄養サポートチーム誕生の歴史と意義を薬剤師が解説【NSTシリーズ①】

 私はNST専門療法士として、これまで複数の病院でNST活動に携わってきました。KT病院ではNST事務局を担当し、離島・僻地の病院でも栄養サポートの仕組みを立ち上げてきました。今回からNST・褥瘡シリーズをお届けします。


NSTとは

NST(Nutrition Support Team)とは、栄養サポートチームのことです。

栄養管理を症例個々に応じて適切に実施することを「栄養サポート」といい、これを各診療科を越え、医師だけでなく看護師・薬剤師・管理栄養士・検査技師らが職種間の壁を越えて専門的な知識・技術を活かしながら一致団結して実施する集団がNSTです。


NSTはなぜ生まれたのか

NSTは1970年代にアメリカで誕生した栄養療法におけるチーム医療です。

1968年にアメリカで**TPN(中心静脈栄養:Total Parenteral Nutrition)**が発明され、栄養療法に一大革命がもたらされました。経口摂取ができない患者さんにも、静脈から完全な栄養を投与できるようになったのです。

しかし同時に問題も起きました。TPN輸液製剤やラインによる合併症が多発し、栄養不良に起因する合併症も多く発生して、アメリカでは社会問題となりました。

これらの問題を解決する方法として「栄養療法をチームで行えば合併症が減り、しかもコストを抑えて治療ができる」という発想のもとに誕生したのがNutrition Support Service——これがNSTの発端です。


なぜ栄養管理がチームで必要なのか

栄養療法には経口・経腸・経静脈と多くの方法があります。

栄養投与ルートの種類

  • 経口摂取(口から食べる)
  • 経腸栄養(経鼻経管・胃瘻・腸瘻)
  • 末梢静脈栄養(PPN)
  • 中心静脈栄養(TPN)

栄養不良の患者さんに栄養療法を行う場合、方法・投与する栄養の量・成分などを決めなければなりません。さらに栄養療法の効果判定も必要です。

こうした多くの課題を主治医だけで判断するのは大変です。そのためチーム医療を実施して主治医にアドバイスし、患者さんの回復を助けることにNSTの意義があります。


栄養と病気の関係

「なぜ病院で栄養管理が重要なのか?」——この根本を理解することが大切です。

病院に来る患者さんは何かしら病気やケガをしているわけですから、健康な状態ではありません。病気やケガがひどければ、食事すなわち栄養が摂れない状態になる可能性があります。

病気やケガではエネルギーを消費します。さらに、病気やケガが治るためには普段よりも多くのエネルギーを必要とします。

十分な栄養が摂れなければ、病気が治らない・治りにくい・そして病気になりやすい状態になるのです。


日本でのNST普及

日本では2006年度からNST加算が診療報酬として認められ、病院でのNST活動が本格的に広がりました。

NST加算算定の要件として:

  • 医師・看護師・薬剤師・管理栄養士のNST専門療法士資格保持者が含まれること
  • 週1回以上のNST回診の実施
  • 栄養アセスメントの実施と記録

私が最初にNST事務局に携わったのは鹿児島徳洲会病院時代(2006年)。当時NST認知率が35%だった病院で啓蒙活動から始め、7ヶ月で71%まで引き上げた経験が私のNSTの原点です。


NSTに関わる略語を覚えよう

NSTを学ぶ上で知っておくべき略語:

略語正式名称意味
NSTNutrition Support Team栄養サポートチーム
TPNTotal Parenteral Nutrition中心静脈栄養
PPNPeripheral Parenteral Nutrition末梢静脈栄養
ENEnteral Nutrition経腸栄養
CVCCentral Venous Catheter中心静脈カテーテル
PEGPercutaneous Endoscopic Gastrostomy経皮内視鏡下胃瘻造設術

なお「IVH(Intravenous Hyperalimentation)」という言葉は日本でよく使われますが、世界共通の表現はTPNです。IVHは日本だけの呼び方なので注意が必要です。


まとめ

  • NST=栄養サポートチーム。医師・看護師・薬剤師・管理栄養士などが職種を超えて協働する
  • 1968年のTPN発明→合併症多発→「チームで行えば合併症が減る」という発想からNST誕生
  • 栄養が摂れなければ病気は治らない。これがNSTの根本思想
  • 日本では2006年からNST加算が認められ普及が加速

次回はNSTの目的・役割・活動成果を詳しく解説します。


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hospharブログ(病院薬剤師の専門情報) 

田浦マインドのパーソナルブログ

2026年7月24日金曜日

コーチングシリーズ総まとめ:明日からできる行動10選【コーチングシリーズ㉕・完結】

 全25回のコーチングシリーズ、最終回です。長い旅にお付き合いいただきありがとうございました。今回は全シリーズの核心をまとめ、「明日からすぐにできる10の行動」としてお届けします。


コーチングシリーズ全25回の旅

①コーチングとは何か ②ティーチング・カウンセリングとの違い ③内発的動機づけ ④心理的安全性 ⑤信頼関係の作り方 ⑥傾聴スキル ⑦承認スキル ⑧質問スキル ⑨Iメッセージ・YOUメッセージ ⑩GROWモデル ⑪アドラー心理学 ⑫共感的理解 ⑬内発的気づき ⑭ABC理論 ⑮コーチングマインドチェックリスト ⑯糖尿病患者への質問例 ⑰心理的安全性7つの質問 ⑱タイプ別コミュニケーション ⑲コーチングの本質 ⑳コーチングが機能する5つの条件 ㉑2:6:2の法則 ㉒経験学習サイクル ㉓服薬指導実例集 ㉔講演研修ご案内 ㉕総まとめ(本記事)


コーチングの本質を3つに凝縮する

25回分の内容を、最終的には3つに凝縮できます。

① 「正そうとするな、わかろうとせよ」

患者さんを正しい方向に変えようとする前に、まず「この人はどう感じているのか、何を望んでいるのか」をわかろうとすること。この姿勢が信頼関係の基盤になります。

② 「答えは相手の中にある」

患者さんもスタッフも、問題を解決する答えを自分の中に持っています。コーチは答えを与えるのではなく、相手が自分で答えを見つけられるよう支援する役割です。

③ 「まずは自分が元気であること」

元気のない医療従事者からは、何も始まりません。土台は「医療従事者としての自分の心の状態(Mind)」です。


明日からできる行動10選

コーチングシリーズで学んだことを、明日から実践できる10の行動に凝縮しました。

① 患者さんの話を最後まで遮らずに聴く(傾聴) 一回の服薬指導で一度だけでも、最後まで聴く。これだけで信頼が変わります。

② 「なぜ?」より「どうすれば?」を使う(質問スキル) 「なんで飲まないの?」→「どうしたら飲めそうですか?」

③ 「ありがとう」「嬉しい」「助かった」を一日一回言う(勇気づけ3兄弟) 難しいスキルより、この3つの言葉が最強の承認です。

④ 薬を飲めた部分を先に承認してから課題を話す(プロセス承認) 「この1ヶ月、ほぼ毎日飲んでくれていましたね(承認)。一週間に1〜2回飲み忘れがあるようなので(課題)…」

⑤ スタッフに名前を呼んで挨拶する(存在承認) 「〇〇さん、おはようございます」——名前を呼ぶだけで「あなたの存在を認識している」というメッセージになります。

⑥ D言葉(だから・だけど・でも…)を意識して減らす(傾聴の妨げ除去) 全部なくすのは難しい。一日1回減らすことから始めましょう。

⑦ 「どんな状態を目指しますか?」をゴール設定に使う(GROWモデルG) 患者さんと一緒に「目指す状態」を言語化する習慣を作る。

⑧ 「一つだけ試してみることは何ですか?」を加える(自己決定感) 一つに絞ることで患者さんが考えやすくなり、実行率が上がります。

⑨ 「ミスをした人を責めない、状況を聴く」を実践する(心理的安全性) ミスをした瞬間の最初の反応が、組織の文化を作ります。

⑩ 自分自身が元気でいること(Mindの土台) 朝の挨拶を笑顔で。自分のエネルギーを整えることが、すべての出発点。


コーチングは「やってみたらできた」

コーチングスクールで出会ったある言葉が忘れられません。

「やってみたらできた」

完璧に準備してから始めようとすると、永遠に始まりません。一つでいい、今日から試してみる。上手くいかなくて当然。また試す。その繰り返しがいつか「できる」になります。

私自身も、まだまだ実践しきれていないことが多くあります。でも意識し続けることで、少しずつ変わっています。一緒に成長していきましょう。


最後に:コーチングは「自分と周りの人が幸せになるツール」

コーチングを学び、実践してきて、最終的にたどり着いた感覚があります。

コーチングは自分と周りの人々が幸せになる、魅力的なツールのひとつです。

患者さんの「扉が開く瞬間」——自分で答えを見つけ、目が輝く瞬間——を一度体験すると、コーチングの虜になります。

スタッフが「自分で考えて動き始める」瞬間を見る喜びも、コーチングが教えてくれた宝物です。

皆さんの医療現場に、コーチングの光が差し込むことを願っています。

25回、最後までお読みいただきありがとうございました。


講演・研修のご依頼

「コーチングを活用した患者・スタッフとの信頼関係の作り方」研修を病院・薬局向けに承っています。アンガーマネジメント研修・コミュニケーション研修・災害医療研修なども対応可能です。

ご要望に合わせてカスタマイズしますので、まずはお気軽にご連絡ください。

E-mail:toshiki.taura@gmail.com 


コーチングシリーズ 全25記事一覧

① コーチングとは何か? ② コーチング・ティーチング・カウンセリングの違い ③ 内発的動機づけとは? ④ 心理的安全性とは? ⑤ 信頼関係の作り方:尊敬・安心感・味方 ⑥ 傾聴スキル:心で聴く3つのレベル ⑦ 承認スキル:5種類の承認 ⑧ 質問スキル:WHY→WHAT・HOWへ ⑨ Iメッセージ・YOUメッセージ ⑩ GROWモデル:面談の4ステップ ⑪ アドラー心理学の5つの要素 ⑫ 共感的理解:同じ目・耳・心で聴く ⑬ 内発的気づきを引き出す ⑭ ABC理論:受け止め方が感情を決める ⑮ コーチングマインドチェックリスト ⑯ 糖尿病患者さんへの6つの質問例 ⑰ 心理的安全性を高める7つの質問 ⑱ タイプ別コミュニケーション実践 ⑲ 「正そうとするな、わかろうとせよ」 ⑳ コーチングが機能する5つの条件 ㉑ 2:6:2の法則 ㉒ 経験学習サイクル ㉓ 服薬指導実例集 ㉔ 研修・講演のご案内 ㉕ 総まとめ:明日からできる行動10選(本記事)

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病院薬剤師の仕事ブログ(hosphar) 

田浦マインドのパーソナルブログ

2026年7月23日木曜日

医療従事者向けコーチング研修のご案内【コーチングシリーズ㉔】

 コーチングシリーズを長く読んでいただき、ありがとうございます。今回は研修・講演について詳しくご紹介します。


こんなお悩みはありませんか?

医療機関のご担当者・管理職の方に多くいただくお悩みです。

患者さんとの関わりについて

  • 「何度説明しても患者さんが薬を飲んでくれない」
  • 「患者さんのやる気を引き出したいが、方法がわからない」
  • 「服薬指導が一方通行になってしまっている」

スタッフマネジメントについて

  • 「スタッフが自主的に動いてくれない」
  • 「部下への声かけが上手くいかない」
  • 「1on1面談をどう進めていいかわからない」

職場環境について

  • 「心理的安全性を高めたいが、どこから始めていいかわからない」
  • 「ミスが隠れやすい文化を変えたい」
  • 「コミュニケーションが活発な職場にしたい」

これらの悩みに、コーチングは具体的な答えを与えてくれます。


研修の特徴

私の研修には3つの特徴があります。

① 医療現場に特化した内容

コーチングの理論を「患者さんへの服薬指導」「スタッフへの指導」「1on1面談」に直結させた内容です。企業向けコーチング研修とは異なり、医療現場ですぐに使える実践的な内容です。

② 理論+ワーク+体験

講義を聞くだけでなく、ディスカッションワーク・ロールプレイ・グループワークを組み込みます。「頭でわかる」から「体で覚える」を目指します。

③ 現役病院薬局長による実体験ベースの話

22年の病院薬剤師経験、熊本・能登への災害派遣、離島医療の現場経験、コーチングスクール修了——これらの経験をすべて盛り込んだ「生きたコンテンツ」をお届けします。


研修メニュー

【基礎コース・90分〜120分】

  • コーチングとは何か
  • ティーチング・カウンセリングとの使い分け
  • 傾聴・承認・質問の基本スキル
  • 明日からできる行動

【実践コース・180分〜240分】

  • 上記基礎コース全内容
  • 心理的安全性と職場改革
  • GROWモデルを使った1on1面談
  • タイプ別コミュニケーション
  • アドラー心理学・内発的動機づけ

【カスタムコース】 「アンガーマネジメント+コーチング」「糖尿病患者への服薬指導特化」など、ニーズに合わせてカスタマイズ可能です。


これまでの研修実績(一部)

  • 徳洲会グループ薬剤部合同研修会
  • 薬学部実習生向け合同講義
  • 大阪府病院薬剤師会研修会
  • 奈良県看護協会研修会
  • 薬剤師オンラインサロン「薬剤師の学校」
  • 医療・介護・福祉コミュニティ勉強会

オンライン(Zoom)・対面どちらにも対応しています。


田浦マインドのプロフィール

資格・経験

  • 病院薬剤師歴:22年(●●病院薬局長)
  • NST専門療法士
  • 医療安全管理者
  • 医療メディエーター(医療対話推進者)
  • 認定実務実習指導薬剤師
  • 心理カウンセラー
  • アンガーマネジメントファシリテーター
  • コーチングスクール修了
  • 熊本地震・能登半島地震 災害派遣薬剤師
  • 離島医療経験(沖永良部島)
  • ●●グループ災害医療薬剤師研究会 委員長
  • ●●県病院薬剤師会 理事・災害対策委員

活動

  • YouTubeチャンネル「田浦マインド」
  • ブログ「hosphar.blogspot.jp」「toshiki-t.blogspot.com」

お申し込み・お問い合わせ

まずはお気軽にご連絡ください。内容・日程・費用等についてご相談させていただきます。

E-mail:toshiki.taura@gmail.com 

「ブログを見ました」と一言添えていただけると助かります。


次回はコーチングシリーズ最終回

次回は「コーチングシリーズ総まとめ:明日からできる行動10選」でシリーズを締めくくります。

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コーチング服薬指導実例集㉓ 

病院薬剤師の仕事ブログ(hosphar)

2026年7月22日水曜日

コーチングを使った服薬指導実例集:場面別使い方ガイド【コーチングシリーズ㉓】

 「理論はわかった。でも実際の服薬指導でどう使えばいいの?」という方のために、今回は場面別の実例集をお届けします。


場面①:薬を飲み忘れている患者さんへ

従来の関わり方(NG) 「飲み忘れちゃったんですか!ちゃんと飲まないとダメじゃないですか!」 → 患者さんは萎縮し、「はい、気をつけます」で終わる

コーチングを使った関わり方(推奨)

S:「薬の飲み忘れが少しあると教えてくれましたね(承認)。そんなこともありますよ(共感)。どうしたら忘れずに飲めそうだと思いますか?(未来質問・肯定質問)」

患者:「財布に入れておいたら思い出せるかも…」

S:「いいですね!財布なら毎日必ず触りますもんね。試してみませんか?(承認・提案)次回、どうだったか聞かせてください(継続性)」


場面②:血糖値がなかなか改善しない患者さんへ

従来の関わり方(NG) 「血糖値がまだ高いですね。食事はどうですか、運動はしていますか?」 → 尋問のようになり、患者さんは防衛的になる

コーチングを使った関わり方(推奨)

S:「前回から糖尿病の治療を続けてきましたね(存在承認)。この3ヶ月間、どんなことに取り組んできましたか?(プロセス引き出し)」

患者:「食事は少し気をつけているんですが、なかなか難しくて…」

S:「食事を意識してくれているんですね(プロセス承認)。難しい中でも気をつけてくれているのは大きな一歩です。血糖値を良くするために、あと一つ何かできそうなことがあるとしたら何ですか?(コーチング質問)」


場面③:治療に消極的な患者さんへ

状況:新たに高血圧と診断されたが「薬を飲みたくない」と言っている

カウンセリングを先に使う(心がマイナスの状態)

S:「薬を飲むことに、何か気になることはありますか?(オープンクエスチョン)」

患者:「副作用が怖いし、一生飲み続けるのが嫌で…」

S:「それは不安になりますよね(共感)。副作用を心配されているんですね(バックトラッキング)。どんな副作用が一番心配ですか?(チャンクダウン)」

→ 不安を十分に受け止めてから、ティーチング(正確な情報提供)に移る


場面④:スタッフへのフィードバック(調剤過誤後)

従来の関わり方(NG) 「なんでこんなミスをしたの!ちゃんと確認しなかったの!」 → スタッフは萎縮し、隠蔽体質が生まれる

コーチングを使った関わり方(推奨)

管理者:「まず話を聞かせてください(傾聴の姿勢)。その時どんな状況でしたか?(状況確認)」

スタッフ:「外来が混んでいて、急いでいて…」

管理者:「忙しい中で頑張ってくれていたんですね(状況承認)。今回のことから、どんなことを学んだと思いますか?(内省促進)」

スタッフ:「確認を一か所省略してしまいました。次は必ずダブルチェックするようにします」

管理者:「それがいいと思います。あなたが自分で気づいてくれたことが大切です(勇気づけ)。何かサポートできることがあれば言ってください(味方の姿勢)」


場面⑤:1on1面談(半期の振り返り)

冒頭の一言 「今期の半年間を10点満点で振り返ったら何点でしょう?(具体的経験の振り返り)」

→ 7点と答えたら「どんなところが良かったですか?(プロセス承認)」 → 「どうすればあと1点上がると思いますか?(内省・概念化)」 → 「次の半期、何か一つ意識することを宣言してみてください(能動的実験)」

シンプルな4問ですが、このサイクルがスタッフの自己成長を促します。


まとめ:場面別コーチングの使い方早見表

場面アプローチ
飲み忘れ肯定質問+未来質問「どうしたら忘れずに飲めそうですか?」
治療不良プロセス承認→コーチング質問「あと一つ何かできそうなことは?」
治療拒否まずカウンセリング(不安の受け止め)→ティーチング
ミス後対応傾聴→状況承認→内省促進→勇気づけ
1on1面談10点満点→良かった点→あと1点→宣言

コーチングは一朝一夕に身につくものではありません。「一つ試してみる」を繰り返すことで、自分のものになっていきます。

次回は「コーチングシリーズ総まとめ:明日からできる行動10選」をお届けします。


講演・研修依頼について

「コーチングを活用した患者・スタッフとの信頼関係の作り方」研修を病院・薬局向けに承っています。 E-mail:toshiki.taura@gmail.com

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経験学習サイクル㉒ 

病院薬剤師の仕事ブログ(hosphar)