「経験は最高の先生」と言いますが、経験するだけでは成長しません。経験から学びを引き出す「経験学習サイクル(コルブ理論)」を、コーチングと組み合わせて解説します。
経験学習サイクルとは
デービッド・コルブが提唱した「経験学習サイクル」は、人が経験から学ぶための4段階のプロセスです。
① 具体的経験(Concrete Experience) 実際の体験をする。患者さんと関わる、手技を実施する、面談をするなど。
② 内省的観察(Reflective Observation) その経験を振り返る。「何が起きたのか」「どうだったのか」を観察・内省する。
③ 抽象的概念化(Abstract Conceptualization) 振り返りから法則・理論・教訓を抽出する。「次はこうしよう」「これが原因だった」という概念化。
④ 能動的実験(Active Experimentation) 学んだことを次の行動に活かす。実際に試してみる。
この4段階のサイクルを繰り返すことで、経験が本当の成長につながります。
なぜ経験だけでは成長しないのか
同じ経験をしても成長する人とそうでない人がいます。
違いは「②内省的観察」と「③抽象的概念化」をしているかどうかです。
経験したことを「ただやった」で終わらせるのか、「なぜそうなったのか」「次はどうすれば良いか」と考えるのか——この差が積み重なって大きな成長の差になります。
コーチングでサイクルを加速させる
経験学習サイクルをコーチングで加速できます。
① 具体的経験の後に(コーチング質問) 「今日の服薬指導、どうでしたか?」「印象に残った場面はありましたか?」
② 内省を促す質問 「その時、患者さんはどんな表情をしていましたか?」「あなたはその時、何を感じましたか?」
③ 概念化を促す質問 「その経験から、何を学びましたか?」「次回同じ状況になったら、どうしますか?」
④ 実験への移行を促す質問 「では、次の患者さんの時、何を一つ試してみますか?」
1on1面談での活用
私が実際に使っている1on1面談のテンプレートも、経験学習サイクルに沿っています。
「今期(6ヶ月)を10点満点中何点?」 → 経験の振り返りを促す
「何でその点数だったの?頑張ったこと、反省を教えて」 → 内省的観察を促す
「どうすればあと1〜2点上がりますか?」 → 抽象的概念化を促す
「次期に向けて、何を頑張りたい?一つ宣言して」 → 能動的実験への移行
「振り返り」文化を作る
組織全体で経験学習サイクルが回るためには、「振り返り文化」が必要です。
具体的な取り組み:
朝礼・終礼での振り返り 「昨日一番学んだことは何ですか?」「今日挑戦することは?」
症例検討会・ケースカンファレンス 個別の経験を組織の学びにする
プレアボイド報告 薬剤師が処方の問題点を発見・介入したケースを共有し、組織の学びにする
コーチングとの組み合わせ
経験学習サイクルは「ティーチングより内発的気づき」というコーチングの考え方と完全に一致します。
「こうすれば良かった(外発的気づき・ティーチング)」を教えるより、
「どうすれば良かったと思う?(内発的気づき・コーチング)」と問いかける方が、相手の中に深く残ります。
自分で考えた教訓は「自分のもの」になります。人から教えてもらった教訓はすぐに忘れます。
まとめ
- 経験学習サイクル4段階:具体的経験→内省的観察→抽象的概念化→能動的実験
- 経験するだけでは成長しない。「振り返り(内省)」が成長のカギ
- コーチング質問で各段階を促進できる
- 1on1面談は経験学習サイクルの実践の場
- 「振り返り文化」を組織に根付かせることが長期的成長をもたらす
次回は「コーチングを使った服薬指導実例集:こんな時どう使う?」を解説します。
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