「心理的安全性(Psychological Safety)」——この言葉を聞いたことはありますか?実はGoogle社の研究から生まれたこの概念が、医療チームのパフォーマンスを大きく左右することがわかっています。
心理的安全性とは
心理的安全性とは、**「職場の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも、安心して発言できる環境」**のことです。
Googleが数百のチームを研究した結果、最も生産性が高く離職率が低いチームの共通点として発見しました。
心理的安全性が高い職場では:
- 失敗をしても、リスクを取った行動をとっても「この職場であれば大丈夫」と思える
- 自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを出したりしても、誰も馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる
「良い病院はミスが多い」という逆説
これは衝撃的な事実ですが、心理的安全性の研究で明らかになっています。
悪い病院は、 ミスが少ない → 報告がきちんと上がらない → さらに悪くなる
良い病院は、 ミスが多い → 報告がきちんと上がる → さらに良くなる
「悪い病院のミスが少ない」のは、実際にミスが少ないのではなく、心理的安全性が低いため報告できないのです。
ミスを報告すると怒られる、責められる——そんな職場では、ミスは隠蔽され蓄積されます。
一方、心理的安全性が高い職場では、ミスを安心して報告・共有できるため、組織として学び、改善し続けられます。
心理的安全性のない職場で起きること
職場の心理的安全性を測る7つの質問があります。
① チームの中でミスをすると、たいてい非難される ② チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える(逆転項目) ③ チームのメンバーは、自分と異なることを理由に他者を拒絶することがある ④ チームに対してリスクのある行動をしても安全である(逆転項目) ⑤ チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい ⑥ チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない(逆転項目) ⑦ チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる(逆転項目)
あなたの職場はいかがでしょうか?
薬剤部で心理的安全性が高いと何が変わるか
① 個人の能力を発揮できる 失敗や批判を恐れることなく考えを発言できる。知らないことを積極的に質問し、効率よく成長できる。自分を尊重してもらえることで責任感が芽生え、自主的な行動が増える。
② 仕事の効率が上がる わからないことをすぐに質問できるため、ミスを未然に防げる。良いやり方をチームで共有してクオリティを上げられる。不安が少なく業務に集中できる。
③ 離職率が低下する 離職理由の多くは人間関係や仕事のやりがいのなさ。心理的安全性が高いと、自分を尊重してもらえる満足度・充実感が高まり、離職率が下がる。
心理的安全性を高める3つの方法
① 明確な目標設定 チームの目標が明確になると、メンバーの役割が明確になり、仕事に意義を感じられる。週1〜月1回のミーティングで目標・進捗を確認する習慣が有効。
② 質問しやすい環境づくり 上司・先輩が「無知・無能と思われる心配なく質問・相談できる」雰囲気を作る。「どんな質問でも無意味ではない」という文化を醸成する。
③ 個人を尊重する すべてのメンバーが認められ受け入れられている状態を目指す。1on1ミーティングで個人の思いを丁寧に聴く。「ありがとう」「助かった」「嬉しい」という言葉を日常的に使う。
心理的安全性 ≠ 「ぬるい職場」
誤解されやすいのですが、心理的安全性が高い職場は「馴れ合い」「ぬるい」職場ではありません。
心理的安全性と使命感・責任感が両方高い状態が「学習ゾーン(高パフォーマンスゾーン)」です。
心理的安全性が高くても使命感が低ければ「快適ゾーン(共依存の組織)」に留まります。
心理的安全性が高い + 高い使命感 = 率直に発言できる・懸念や疑問を言及できる・アイデアを話し合える組織
これが最強チームの姿です。
まとめ
- 心理的安全性:「自分の考えを誰にでも安心して発言できる環境」
- Google研究で最強チームの共通点として発見された
- 「良い病院はミスが多い」——報告できる環境があるから改善できる
- 心理的安全性が高いと、個人の能力発揮・仕事効率・離職率低下につながる
- 高める方法:明確な目標・質問しやすい環境・個人を尊重する姿勢
次回は「アドラー心理学の全体像と信頼関係の作り方」を解説します。
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