コーチングの3大基本スキルは「傾聴・承認・質問」です。今回はその中でも最も基本となる「傾聴」について解説します。傾聴は「ただ聞く」ことではありません。
傾聴には3つのレベルがある
レベル1:耳で聞く 耳で音だけを聞く。BGMとして聞く。話に食いつかない。
レベル2:頭で聞く 頭でいろいろ判断し、自分の考えをもって聞く。反対意見を持ったりして(しまう)。
レベル3:心で聴く(本当の傾聴) 心を一緒に動かして聴く。
相手の眼になり、耳になり、心になって、 相手と同じ目で見て、同じ耳で聴いて、同じ心で感じようと思って 相手の話を聴くこと。
コーチングで求められるのはこのレベル3です。
傾聴の4つのポイント
① 先入観・固定観念の排除(ゼロポジション)
「この患者さんはいつも薬を飲まない人だから…」「この部下は問題を起こすから…」という固定観念を取り払う「ゼロ」の状態で聴く。
自分のフレームを取り払うことが、相手を正しく理解する最初のステップです。
② 最後まで聴く
自分の話したいことは脇に置く。相手が話し終わるまで遮らない。これだけで相手の信頼を大きく得ることができます。
③ うなずき・あいづち
相手が話しやすくなるような、うなずき・あいづちをしましょう。 ポイントは相手の話し方に合わせた深さ・同じくらいの頻度。「うんうんうん」と連続したり、口癖のように「なるほどなるほど」を繰り返すのは逆効果です。バリエーションを持って。
④ 共感(同情・同感と区別する)
| 意味 | |
|---|---|
| 同情 | かわいそうに思うこと |
| 同感 | 自分の経験から解釈すること |
| 共感 | 他人の気持ちを理解しようと努めること |
「かわいそうに」と上から見るのでも、「自分もそうだったから」と自分の経験を押し付けるのでもなく、「あなたはそう感じているんですね」と相手の気持ちに寄り添うのが共感です。
⑤ ペーシング
相手の身振りや動作、表情、話すスピードに合わせること。人は「自分と似ている」と感じる相手に親近感を覚えます。
傾聴を妨げる「D言葉」
傾聴を妨げる「D言葉」があります。
「だから」「だけど」「だったら」「だって」「でも」「ですから」「どうせ」
相手との会話の中でD言葉を使うと、相手は自分を否定されたと感じ、話を傾聴してもらえないという不信感を持つようになります。
代わりに「YES+BUT法」を使う:
「そうですね(YES)」→ 相手の気持ちを受け取る 「しかし…」(BUT)→ 自分の考えを添える 「どうでしょうか?」→ 確認する
この順番で話すと、否定的なニュアンスを和らげながら自分の意見を伝えられます。
傾聴の3つの具体スキル
ミラーリング 相手の姿勢や仕草を鏡のように合わせる
ペーシング 相手の声のトーンや話すペースを合わせる
バックトラッキング(オウム返し) 相手の言葉をそのまま繰り返したり、時おり要約して返す
バックトラッキングは特に強力です。話し手が自分の言葉を聞き直すことで、混沌としていた考えが整理され、新たな気づきが生まれます。
例: 患者さん:「最初の1週間は頑張って散歩していたけど、雨が続いてやめちゃいました。やっぱりだめですね」
バックトラッキングA:「雨が続いてやめちゃったんですね」(ネガティブを強調) バックトラッキングB:「運動のよさを実感された時期もあったんですね」(ポジティブを強調)
バックトラッキングの仕方によって、その後の話の方向性が大きく変わります。できたことに焦点を当てることで、行動変容がより効果的になります。
「聴くということ」——詩に学ぶ傾聴の本質
グレン・ヴァン・エカレンの詩の一節を紹介します。
話を聞いてくれと言うと、あなたは忠告を始める。 私はそんなことを頼んでいない。 話を聞いてくれと言うと、問題を解決してくれようとする。 私が求めているのは、そんなことではない。 聞いてください。ただ私の話を聞くだけでいい。
患者さんもスタッフも、まず「聴いてほしい」と思っています。すぐにアドバイスや解決策を出そうとするより、まず「聴く」——この姿勢が、信頼関係の基盤になります。
まとめ
- 傾聴の3レベル:耳で聞く→頭で聞く→心で聴く(コーチングはレベル3)
- 4つのポイント:先入観排除・最後まで聴く・うなずき・共感
- D言葉(だから・だけど・でも…)は傾聴を妨げる
- ミラーリング・ペーシング・バックトラッキングが具体スキル
- まず「聴く」——これが信頼関係の土台
次回は「承認スキル:5種類の承認で相手の自己肯定感を高める」を解説します。
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