2026年5月29日金曜日

病院薬剤師が考える「心理的安全性」と医療安全|現場で本当に大切なこと

 

はじめに

医療安全という言葉を聞くと、多くの人は「インシデント防止」や「事故を起こさない仕組み」を思い浮かべるのではないでしょうか。

もちろん、それは重要です。

しかし、病院で働いていると感じるのは、医療安全はマニュアルやルールだけでは守れないということです。

どれだけ立派なルールがあっても、現場で「言いにくい」「聞きにくい」「相談しにくい」空気があると、小さな異変が見逃され、結果として重大な事故につながる可能性があります。

そこで近年注目されているのが「心理的安全性」です。

今回は、病院薬剤師として現場で働く立場から、「心理的安全性」と「医療安全」の関係について考えてみたいと思います。


心理的安全性とは?

心理的安全性とは、

「このチームでは、自分の意見や疑問を安心して言える」と感じられる状態

のことを指します。

「こんなこと聞いて大丈夫かな」
「怒られそうだから言わない方がいいかな」
「間違っていたら恥ずかしい」

そう感じて発言をためらう環境では、組織は徐々に危険な方向へ進みます。

一方で心理的安全性が高い職場では、

  • 疑問を気軽に相談できる
  • ミスを隠さず共有できる
  • 新人でも質問しやすい
  • 他職種へ意見を伝えやすい

といった特徴があります。

これは「甘い職場」ではありません。

むしろ、

患者安全のために、必要なことを言える職場

と言えるかもしれません。


医療現場で心理的安全性が重要な理由

病院では、わずかな確認不足が患者さんの不利益につながることがあります。

例えば、

「これ、投与量少し多くないですか?」

「処方意図を確認した方が良さそうです」

「患者さんの状態、少し変化していませんか?」

こうした“違和感”を声に出せるかどうか。

ここが医療安全に直結します。

逆に、

「忙しそうだから言いにくい」
「機嫌が悪そう」
「前に怒られたからやめておこう」

そんな雰囲気があると、現場は沈黙します。

そして沈黙は、時に事故の温床になります。

実際、多くの医療事故の背景には、

「誰かが違和感を持っていたが、言えなかった」

という構造があります。


心理的安全性が低い職場で起こること

1.新人が質問できない

新人時代を思い出してみてください。

「こんなこと聞いていいのかな」
「忙しそうだから後にしよう」

と思った経験はないでしょうか。

しかし、医療現場では「聞かなかった」が事故につながります。

心理的安全性が低い職場ほど、

“分からないまま進む”

という危険な状態が起こります。


2.インシデント報告が減る

一見すると、

「インシデントが少ない=安全」

に見えます。

しかし実際は、

“報告できない職場”

になっている場合があります。

責められる文化があると、人は失敗を隠します。

すると組織は改善機会を失います。

インシデント報告は、

犯人探しではなく、再発防止の材料

です。

安心して報告できる文化が必要です。


3.多職種連携が悪化する

病院はチーム医療です。

薬剤師だけで患者さんを守ることはできません。

医師、看護師、栄養士、検査技師、事務職員など、多職種連携が必要です。

その中で、

「医師に確認しづらい」
「看護師へ言いにくい」
「職種間の壁がある」

状態になると、小さな確認不足が積み重なります。

患者安全を守るためには、

“言いやすい関係性”

が不可欠です。


病院薬剤師として意識したいこと

では、私たちは何をすれば良いのでしょうか。

大きな改革でなくても、できることがあります。

1.否定から入らない

相談された時、

「それ違うよ」
「何で確認しないの?」

と反射的に返してしまうことがあります。

しかし、一度強く否定されると、人は次から相談しなくなります。

まずは、

「相談ありがとう」
「確認してくれて助かる」

という姿勢が大切です。


2.“ありがとう”を増やす

心理的安全性は、大きな制度ではなく、小さな言葉から生まれます。

例えば、

  • 「確認ありがとう」
  • 「気づいてくれて助かる」
  • 「言ってくれて良かった」

こうした言葉は、想像以上に職場の空気を変えます。


3.ミスを責めるより、仕組みを考える

人は誰でもミスをします。

問題は、

「誰が悪いか」ではなく「なぜ起きたか」

です。

  • 業務が複雑だったのか
  • 確認手順に穴があったのか
  • 疲労や人員不足が影響したのか

個人責任だけにすると、また同じ事故が起きます。


現場で感じること

病院で働いていると、

「何か変だと思ったけど言えなかった」
「相談しておけば良かった」

という場面に出会うことがあります。

一方で、

「一言確認してくれたおかげで防げた」

という経験もあります。

医療安全は、特別な誰かが守るものではなく、

現場の一人ひとりの“声”で守られている

のだと思います。

そして、その声を出しやすくするのが心理的安全性です。


まとめ

心理的安全性は、

「優しい職場づくり」

だけの話ではありません。

患者さんの安全を守るための、重要な医療安全対策です。

誰かが気づいた違和感を安心して言える。

新人でも質問できる。

失敗を隠さず改善につなげられる。

そんな職場こそ、本当に安全な職場ではないでしょうか。

病院薬剤師として、私自身も、

“相談しやすい空気をつくる側”

でありたいと思っています。

皆さんの職場では、心理的安全性は守られていますか?



≪相互リンク≫

2023年10月13日金曜日

■インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの間隔について

 

インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの間隔について、間隔を空ける必要がなく、同時接種も可能です。

新型コロナワクチンと他のワクチンの同時接種については、インフルエンザと新型コロナワクチン以外のワクチンに関しては、投与間隔を13日以上空けることとなっています。