「理論はわかった。でも実際の服薬指導でどう使えばいいの?」という方のために、今回は場面別の実例集をお届けします。
場面①:薬を飲み忘れている患者さんへ
従来の関わり方(NG) 「飲み忘れちゃったんですか!ちゃんと飲まないとダメじゃないですか!」 → 患者さんは萎縮し、「はい、気をつけます」で終わる
コーチングを使った関わり方(推奨)
S:「薬の飲み忘れが少しあると教えてくれましたね(承認)。そんなこともありますよ(共感)。どうしたら忘れずに飲めそうだと思いますか?(未来質問・肯定質問)」
患者:「財布に入れておいたら思い出せるかも…」
S:「いいですね!財布なら毎日必ず触りますもんね。試してみませんか?(承認・提案)次回、どうだったか聞かせてください(継続性)」
場面②:血糖値がなかなか改善しない患者さんへ
従来の関わり方(NG) 「血糖値がまだ高いですね。食事はどうですか、運動はしていますか?」 → 尋問のようになり、患者さんは防衛的になる
コーチングを使った関わり方(推奨)
S:「前回から糖尿病の治療を続けてきましたね(存在承認)。この3ヶ月間、どんなことに取り組んできましたか?(プロセス引き出し)」
患者:「食事は少し気をつけているんですが、なかなか難しくて…」
S:「食事を意識してくれているんですね(プロセス承認)。難しい中でも気をつけてくれているのは大きな一歩です。血糖値を良くするために、あと一つ何かできそうなことがあるとしたら何ですか?(コーチング質問)」
場面③:治療に消極的な患者さんへ
状況:新たに高血圧と診断されたが「薬を飲みたくない」と言っている
カウンセリングを先に使う(心がマイナスの状態)
S:「薬を飲むことに、何か気になることはありますか?(オープンクエスチョン)」
患者:「副作用が怖いし、一生飲み続けるのが嫌で…」
S:「それは不安になりますよね(共感)。副作用を心配されているんですね(バックトラッキング)。どんな副作用が一番心配ですか?(チャンクダウン)」
→ 不安を十分に受け止めてから、ティーチング(正確な情報提供)に移る
場面④:スタッフへのフィードバック(調剤過誤後)
従来の関わり方(NG) 「なんでこんなミスをしたの!ちゃんと確認しなかったの!」 → スタッフは萎縮し、隠蔽体質が生まれる
コーチングを使った関わり方(推奨)
管理者:「まず話を聞かせてください(傾聴の姿勢)。その時どんな状況でしたか?(状況確認)」
スタッフ:「外来が混んでいて、急いでいて…」
管理者:「忙しい中で頑張ってくれていたんですね(状況承認)。今回のことから、どんなことを学んだと思いますか?(内省促進)」
スタッフ:「確認を一か所省略してしまいました。次は必ずダブルチェックするようにします」
管理者:「それがいいと思います。あなたが自分で気づいてくれたことが大切です(勇気づけ)。何かサポートできることがあれば言ってください(味方の姿勢)」
場面⑤:1on1面談(半期の振り返り)
冒頭の一言 「今期の半年間を10点満点で振り返ったら何点でしょう?(具体的経験の振り返り)」
→ 7点と答えたら「どんなところが良かったですか?(プロセス承認)」 → 「どうすればあと1点上がると思いますか?(内省・概念化)」 → 「次の半期、何か一つ意識することを宣言してみてください(能動的実験)」
シンプルな4問ですが、このサイクルがスタッフの自己成長を促します。
まとめ:場面別コーチングの使い方早見表
| 場面 | アプローチ |
|---|---|
| 飲み忘れ | 肯定質問+未来質問「どうしたら忘れずに飲めそうですか?」 |
| 治療不良 | プロセス承認→コーチング質問「あと一つ何かできそうなことは?」 |
| 治療拒否 | まずカウンセリング(不安の受け止め)→ティーチング |
| ミス後対応 | 傾聴→状況承認→内省促進→勇気づけ |
| 1on1面談 | 10点満点→良かった点→あと1点→宣言 |
コーチングは一朝一夕に身につくものではありません。「一つ試してみる」を繰り返すことで、自分のものになっていきます。
次回は「コーチングシリーズ総まとめ:明日からできる行動10選」をお届けします。
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