私はNST専門療法士として、これまで複数の病院でNST活動に携わってきました。KT病院ではNST事務局を担当し、離島・僻地の病院でも栄養サポートの仕組みを立ち上げてきました。今回からNST・褥瘡シリーズをお届けします。
NSTとは
NST(Nutrition Support Team)とは、栄養サポートチームのことです。
栄養管理を症例個々に応じて適切に実施することを「栄養サポート」といい、これを各診療科を越え、医師だけでなく看護師・薬剤師・管理栄養士・検査技師らが職種間の壁を越えて専門的な知識・技術を活かしながら一致団結して実施する集団がNSTです。
NSTはなぜ生まれたのか
NSTは1970年代にアメリカで誕生した栄養療法におけるチーム医療です。
1968年にアメリカで**TPN(中心静脈栄養:Total Parenteral Nutrition)**が発明され、栄養療法に一大革命がもたらされました。経口摂取ができない患者さんにも、静脈から完全な栄養を投与できるようになったのです。
しかし同時に問題も起きました。TPN輸液製剤やラインによる合併症が多発し、栄養不良に起因する合併症も多く発生して、アメリカでは社会問題となりました。
これらの問題を解決する方法として「栄養療法をチームで行えば合併症が減り、しかもコストを抑えて治療ができる」という発想のもとに誕生したのがNutrition Support Service——これがNSTの発端です。
なぜ栄養管理がチームで必要なのか
栄養療法には経口・経腸・経静脈と多くの方法があります。
栄養投与ルートの種類
- 経口摂取(口から食べる)
- 経腸栄養(経鼻経管・胃瘻・腸瘻)
- 末梢静脈栄養(PPN)
- 中心静脈栄養(TPN)
栄養不良の患者さんに栄養療法を行う場合、方法・投与する栄養の量・成分などを決めなければなりません。さらに栄養療法の効果判定も必要です。
こうした多くの課題を主治医だけで判断するのは大変です。そのためチーム医療を実施して主治医にアドバイスし、患者さんの回復を助けることにNSTの意義があります。
栄養と病気の関係
「なぜ病院で栄養管理が重要なのか?」——この根本を理解することが大切です。
病院に来る患者さんは何かしら病気やケガをしているわけですから、健康な状態ではありません。病気やケガがひどければ、食事すなわち栄養が摂れない状態になる可能性があります。
病気やケガではエネルギーを消費します。さらに、病気やケガが治るためには普段よりも多くのエネルギーを必要とします。
十分な栄養が摂れなければ、病気が治らない・治りにくい・そして病気になりやすい状態になるのです。
日本でのNST普及
日本では2006年度からNST加算が診療報酬として認められ、病院でのNST活動が本格的に広がりました。
NST加算算定の要件として:
- 医師・看護師・薬剤師・管理栄養士のNST専門療法士資格保持者が含まれること
- 週1回以上のNST回診の実施
- 栄養アセスメントの実施と記録
私が最初にNST事務局に携わったのは鹿児島徳洲会病院時代(2006年)。当時NST認知率が35%だった病院で啓蒙活動から始め、7ヶ月で71%まで引き上げた経験が私のNSTの原点です。
NSTに関わる略語を覚えよう
NSTを学ぶ上で知っておくべき略語:
| 略語 | 正式名称 | 意味 |
|---|---|---|
| NST | Nutrition Support Team | 栄養サポートチーム |
| TPN | Total Parenteral Nutrition | 中心静脈栄養 |
| PPN | Peripheral Parenteral Nutrition | 末梢静脈栄養 |
| EN | Enteral Nutrition | 経腸栄養 |
| CVC | Central Venous Catheter | 中心静脈カテーテル |
| PEG | Percutaneous Endoscopic Gastrostomy | 経皮内視鏡下胃瘻造設術 |
なお「IVH(Intravenous Hyperalimentation)」という言葉は日本でよく使われますが、世界共通の表現はTPNです。IVHは日本だけの呼び方なので注意が必要です。
まとめ
- NST=栄養サポートチーム。医師・看護師・薬剤師・管理栄養士などが職種を超えて協働する
- 1968年のTPN発明→合併症多発→「チームで行えば合併症が減る」という発想からNST誕生
- 栄養が摂れなければ病気は治らない。これがNSTの根本思想
- 日本では2006年からNST加算が認められ普及が加速
次回はNSTの目的・役割・活動成果を詳しく解説します。
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