「仕事をしていて一番つらいことの一つは、誰にも認めてもらえないこと」——これはスタッフにも患者さんにも共通する感情です。今回はコーチングの「承認スキル」を解説します。
承認とは何か
承認とは、相手の変化や成長、存在そのものを、ありのままに認めて、相手に伝えることです。
「誰かに認めてもらいたい」——これは人間の根本的な欲求です(マズローの欲求5段階説の第4段階:承認欲求)。
この承認欲求が満たされることで、人は次の「自己実現」へと向かう力を得ます。
承認は「心の栄養・心のビタミン」です。
「褒める」と「勇気づけ」の決定的な違い
アドラー心理学では「褒めない、叱らない。勇気づけをする」と言われます。
この「褒める」と「勇気づけ」の違いが重要です。
褒める(縦の関係・YOUメッセージ)
「綺麗に掃除できたね。偉いです!」 「売上目標達成したね。良くやった!」
褒めるは「事実+評価」。主語が「あなた(YOU)」になります。評価する側とされる側という縦の関係になります。
勇気づけ(横の関係・Iメッセージ)
「わかりやすい資料ですね。助かります!」 「元気な挨拶してくれるね。嬉しいよ!」
勇気づけは「事実+Iメッセージ(私の感情)」。相互尊敬・相互信頼の横の関係から生まれます。
アドラーの言葉:
「人は貢献感を感じ、自分に価値があると思える時にだけ勇気を持つことができる」
勇気づけの3兄弟
最も万能な承認の言葉は、実はシンプルな3つです。
- 「ありがとう!」
- 「嬉しい!」
- 「助かった!」
これが「勇気づけ3兄弟」です。
難しいことを言わなくていい。この3つを日常的に使うだけで、職場の雰囲気は大きく変わります。
5種類の承認
承認には5つの種類があります。
① 結果承認 生み出した結果を承認する。 「先月のHbA1cが改善しましたね!」
② プロセス承認(過程承認) 結果に至るまでのプロセスや苦労を承認する。失敗したときに特に効果的。 「毎日頑張って来てくれてましたよね。その積み重ねが確実に出てきています」
③ 行動承認 具体的な行動を承認する。 「毎日薬を飲み続けているんですね」
④ 意識承認 まだ行動には出ていないが、意識していることを承認する。 「薬を飲もうとしていることが、もう大事な一歩ですね」
⑤ 存在承認 相手の唯一性・存在そのものを承認する。承認の中で最も重要。 「○○さんに来てもらえて、私も元気をいただいています」
存在承認:在宅・終末期で特に重要
5種類の中で最も大切なのが「存在承認」です。
医療の最前線——在宅や終末期の現場では特に重要です。
利用者さん:「いつもすまんなぁ。ワシなんか人に世話をかけてばっかりで、何の役にも立たん」
薬剤師:「そんなことありませんよ。○○さんに来てもらいたくて、私はお薬を準備しています。○○さんにお会いして、元気をいただいているんですよ。」
利用者さん:「…ありがとう」
「あなたがここにいていいんだ」という安心感——これが存在承認の力です。
承認の示し方:うなずき・あいづち・リフレイン
承認は言葉だけでなく、非言語でも伝えられます。
うなずき 相手の話をしっかり聴き、うなずく。うなずきがない相手に話すことはとても苦痛に感じてしまいます。うなずくだけでも相手は認めてもらっていると感じられます。
あいづち 「うん」「なるほど」「そうなんですね」「いいですね」など。コツは少なすぎず多すぎず。口癖のようにならないよう、バリエーションを持つ。
リフレイン(オウム返し) 相手の言葉をそのまま繰り返したり、キーワードのみを繰り返す。
まとめ
- 承認とは相手の変化・成長・存在をありのままに認めて伝えること
- 「褒める(縦・YOU)」より「勇気づけ(横・I)」が強力
- 勇気づけ3兄弟:「ありがとう」「嬉しい」「助かった」
- 5種類の承認:結果・プロセス・行動・意識・存在
- 存在承認が最も重要。「あなたがいていい」という安心感を届ける
次回は「質問スキル:相手の可能性を引き出す効果的な質問とは」を解説します。
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