2026年7月15日水曜日

糖尿病患者さんへの6つの質問例:コーチングを服薬指導に活かす【コーチングシリーズ⑯】

 今回は理論ではなく「実践」の話です。糖尿病患者さんへの服薬指導でコーチングをどう使うか、具体的な質問例と実際の会話の流れを解説します。


糖尿病患者さんが抱える課題

糖尿病は以下の特徴を持つ疾患です。

  • 全身性疾患で、多くの臓器に影響する
  • 生活習慣や加齢の影響を受ける
  • 根治困難で、生涯にわたってケア・管理が必要
  • 診療には多職種チーム医療が重要
  • 自己教育・自己管理が治療効果に大きく影響する
  • 診療の対象は検査値ではなく患者さん自身

この特徴から見えてくるのは、患者さん自身が「動く・変わる」ことなしに治療は成功しないということです。だからこそコーチングが有効です。


糖尿病患者さんの受診中断の理由

受診中断者の理由(糖尿病受診中断対策包括ガイド2019.9より):

1位:多忙のため 2位:体調が良いから 3位:医療費が負担だから

これらの理由の裏には「受診の必要性を感じていない」「通院そのものがつらい」という患者さんの気持ちが隠れています。

コーチングで患者さんと向き合うことで、これらの背景を引き出し、行動変容に繋げられます。


糖尿病患者さんへの「質問力」を高める6つの例

① 「糖尿病でもっとも困っている・心配なことは何ですか?」

最初に患者さんが何を心配しているのかを把握します。「合併症が怖い」「仕事に影響しないか」「家族に心配をかけたくない」——それぞれに応じた関わりが変わります。

② 「糖尿病はあなたやご家族の毎日の生活にどんな影響を与えていますか?」

生活全体への影響を聞くことで、患者さんが「なぜ治療するのか」という動機に繋がる部分を探れます。

③ 「(説明前に)お知りになりたいのはどんなことでしょうか?」

一方的に説明する前に、まず患者さんが知りたいことを聞く。患者さんのニーズに合った情報提供ができます。

④ 「どうすればもっとお役に立てるでしょうか?」

患者さんに「薬剤師に何を求めているか」を直接聞く。サービスとしての服薬指導の質が上がります。

⑤ 「糖尿病を良くするために何かしていることがありますか?」

できていることを承認するための入口。「散歩を始めました」「食事の量を少し減らしました」——小さな取り組みでも承認することで次の行動につながります。

⑥ 「糖尿病を良くするために何か一つしてみるとしたら、どんなことができそうですか?」

最も重要な質問です。「一つ」に絞ることで患者さんが考えやすくなります。自分で言葉にした目標は実行率が高まります。


実際の会話の流れ

薬剤師:「先月よりHbA1cが少し改善しましたね(結果承認)。この1ヶ月、何か工夫されましたか?(プロセス引き出し)」

患者:「夕食を少し早めに食べるようにしてみたんです」

薬剤師:「それは素晴らしいですね。夕食の時間を変えるって、習慣を変えることで、実はなかなか難しいことだと思います(プロセス承認)。続けられてよかったです(存在承認)」

患者:「まあ、なんとか。でもやっぱり間食は減らせなくて…」

薬剤師:「間食について、どんな工夫だったらできそうだと思いますか?(コーチング質問)」

患者:「間食の種類を変えるくらいならできるかも…ナッツとかならいいですかね?」

薬剤師:「いいですね!ナッツは血糖値への影響も比較的緩やかですし、満足感もありますよ(ティーチング)。次回、試してみた感想を聞かせてください(継続性)」


「コーチングが必要な患者さん」と「不要な患者さん」

コーチングはすべての患者さんに同じように使うのではありません。

コーチングが特に有効:

  • 生活習慣の改善が必要な患者さん
  • アドヒアランスが低い患者さん
  • 治療への抵抗感がある患者さん
  • 長期的な関わりが必要な慢性疾患の患者さん

ティーチングが主体になる場面:

  • 急性疾患で緊急の情報提供が必要
  • 初めての薬剤で必ず知っておくべき情報がある
  • 患者さん自身が「教えてほしい」と求めている

まとめ

  • 糖尿病治療は患者さんの自己管理が鍵。だからコーチングが有効
  • 受診中断の背景を引き出すことで適切なアプローチができる
  • 6つの質問例を服薬指導に組み込む
  • 承認(できていること)→コーチング(一つ試してみること)→ティーチング(知識提供)の順が効果的
  • 全患者さんに一律ではなく、状況に応じてコーチングとティーチングを使い分ける

次回は「心理的安全性を高める7つの質問と職場診断の実践」を解説します。


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コーチングマインドチェックリスト⑮ 

病院薬剤師の仕事ブログ(hosphar)

2026年7月14日火曜日

コーチングマインドチェックリスト:今の自分の姿勢を点検しよう【コーチングシリーズ⑮】

 「コーチングのスキルは学んだ。でも、実際にできているのだろうか?」——今回は、自分のコーチングマインドを点検するためのチェックリストをお届けします。


コーチングマインドとは

コーチングマインドとは、コーチングを実践する上での「心の状態・姿勢」のことです。スキルの前に、この心の状態が整っていなければコーチングは機能しません。

コーチングマインドの5要素:

  1. 答えは患者自身が持っていると信じる
  2. 患者の力を100%信じる
  3. 患者と医療者は、対等な関係である
  4. レッテルを貼らず、先入観のない白紙の心で患者と向き合う
  5. 患者個々の価値観を大切にし、本人が望むものを提供する

コーチングマインドチェックリスト

友人に相談を頼まれたケースを想定して、チェックしてみましょう。

□ 相手が話し終わるまでしっかり耳を傾けている

相手が話し終わる前に、自分の意見やアドバイスを言い始めていませんか?「最後まで聴く」——これがコーチングの基本中の基本です。

□ 良い悪いで判断をせず、ありのままを受け入れている

「それはダメですね」「それは正しくない」——こうした評価をしながら聴いていませんか? まずは受け止める。

□ アドバイスよりも質問を通して、相手から考えや解決策を引き出している

すぐにアドバイスを出したくなる衝動を感じませんか? 「どうすればいいと思いますか?」と質問して相手に考えさせる。

□ 相手の強みに焦点を当てて、それを使って目標を促している

「できていないこと」ではなく「できていること」に注目できていますか?

□ 意見を押しつけず、相手の考えを尊重している

「こうすべきだ」「絶対にこの方法がいい」と自分の考えを押し付けていませんか?


いくつ当てはまりましたか?

5つすべてできていれば、コーチングマインドが整っています。

3〜4つ:ほぼできています。残りの1〜2つを意識しましょう。

1〜2つ:まだまだ成長の余地があります。でも意識し始めているだけで大きな前進です。

0つ:正直でいいです!これから一緒に学んでいきましょう。


コーチングマインドの実践を妨げる6つの落とし穴

スキルは学んでいても、以下の落とし穴にはまるとコーチングが機能しません。

① すぐにアドバイスしてしまう 「それはこうすればいいですよ」と反射的に答えてしまう。まず質問。

② 沈黙を埋めてしまう 相手が考えている沈黙に耐えられず、話しかけてしまう。沈黙は内省の時間。待つ。

③ 自分のフレームで解釈してしまう 「この患者さんはこういう人だから」という固定観念で判断する。毎回ゼロポジションで。

④ 結果だけを評価する 「HbA1cが下がった、上がった」だけで評価する。プロセスも承認する。

⑤ 相手に変わることを強制する 「絶対に○○してください」と変化を強制する。相手のペースを尊重する。

⑥ 専門用語を多用する 「アドヒアランスが低下していますね」と専門用語を使う。相手にわかる言葉で。


医療コーチングの本質

医療でコーチングが機能するポイントは3つです。

① 相手が話したくなるような関係性が先にある 関係性ができていない人にコーチングをしても、相手は心を開きません。

② 時間がない時は「傾聴・雰囲気・姿勢」で補う コーチングに時間をかけられない忙しい現場でも、聴く姿勢・表情・うなずきだけでコーチングマインドは伝えられます。

③ コーチング9:フィードバック1のバランス 信頼関係の貯金(コーチング)を十分に積んでから、フィードバック(指摘・改善要求)を伝える。信頼残高がないのにフィードバックをすると相手は受け入れられません。


明日からできる5つの行動

  1. 患者さんの話を遮らずに最後まで聴く(1回の服薬指導で1度試す)
  2. 「なぜ?」より「どうすれば?」を使ってみる
  3. 「ありがとう」「嬉しい」「助かった」を意識して使う
  4. 服薬できた部分(プロセス)を先に承認してから課題を話す
  5. 毎日1人、名前を呼んで挨拶する

スキルより先に「心の状態(Mind)」を整えること。まずは自分が元気であること。元気で医療を提供していこう。それが土台です。


まとめ

  • コーチングマインドの5要素:相手を信じる・対等・先入観なし・価値観尊重
  • チェックリストで自分の現在地を把握する
  • 6つの落とし穴:アドバイス衝動・沈黙への恐れ・固定観念・結果のみ評価・強制・専門用語
  • 時間がない時も「傾聴・雰囲気・姿勢」でコーチングマインドは伝わる
  • コーチング9:フィードバック1のバランスで信頼残高を積む

次回は「糖尿病患者さんへの6つの質問例:コーチングを服薬指導に活かす実践」を解説します。


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ABC理論⑭ 

病院薬剤師の仕事ブログ(hosphar)

2026年7月13日月曜日

ABC理論:出来事・受け止め方・感情の構造を医療現場で活かす【コーチングシリーズ⑭】

 「怒りは第2感情」——アンガーマネジメントシリーズでもお伝えしましたが、今回はその背景にある「ABC理論」をコーチングの文脈で深掘りします。


ABC理論とは

アルバート・エリスが提唱した認知療法の基本概念です。

  • A(Activating event):出来事 遭遇する出来事。100%コントロールは不可能。
  • B(Belief):受け止め方 出来事をどう受け止めるか。自分の意志のもとに生まれる。
  • C(Consequence):感情 結果として生まれる感情・気持ち。

重要な発見:感情Cを生み出しているのは、出来事Aではなく受け止め方Bである

同じ出来事に遭遇しても、受け止め方が違えば、生まれる感情は全く変わります。


医療での具体例

場面:夜勤明けに急患が来た

Aさんの受け止め方:「なんでこんな時間に…最悪だ」→ C:怒り・疲弊感

Bさんの受け止め方:「よかった、私がいるタイミングで来てくれた」→ C:使命感・充実感

同じ「夜勤明けの急患(A)」でも、受け止め方(B)によって感情(C)が全く違います。


患者さんへの応用

場面:糖尿病と診断された患者さん

受け止め方①:「もう終わりだ、一生薬を飲み続けないといけない」→ C:絶望・無力感

受け止め方②:「早期発見できてよかった、今から気をつければ合併症を防げる」→ C:安心感・前向きさ

薬剤師が介入できるのは「B(受け止め方)」へのアプローチです。

「血糖値が改善してきましたね。この調子でいけば、合併症を防いで元気な生活が続けられますよ」という言葉が、患者さんのBを変え、Cを変え、次の行動を変えます。


怒りは「第2感情」

ABC理論と関連して、感情の構造を理解しましょう。

怒りは第2感情です。怒りの前には「期待」という第1感情があります。

薬を飲んでいない患者さんに怒りを感じる——その裏には「良くなってほしい」「心配している」という期待・一次感情があります。

その期待・一次感情を伝えると、相手の受け取り方が全く変わります。

「なんで薬飲んでないの!(怒り・二次感情)」 →「薬を飲んでくれないと、倒れたりしないか心配なんです(心配・一次感情)」

二次感情より一次感情を伝えることが、Iメッセージの本質でもあります。


受け止め方(B)を変えるコーチングの質問

受け止め方(B)に働きかけるコーチングの質問例:

「この状況を、違う角度から見るとどう見えますか?」 「10年後に今の状況を振り返ったら、どう見えると思いますか?」 「もし親友が同じ状況だったら、何と声をかけますか?」 「この経験から学べることは何ですか?」

視点が変わると、受け止め方が変わります。受け止め方が変わると、感情が変わります。感情が変わると、行動が変わります。


まとめ

  • ABC理論:感情Cは出来事Aでなく受け止め方Bが決める
  • 同じ出来事でも受け止め方次第で感情は変わる
  • 医療従事者が介入できるのは患者さんのBへのアプローチ
  • 怒りは第2感情——その裏の第1感情(期待・心配)を伝える
  • 受け止め方を変える質問で視点を広げる

次回は「コーチングマインドチェックリスト実践編:今の自分の姿勢を点検しよう」を解説します。


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内発的気づき⑬ 

病院薬剤師の仕事ブログ(hosphar)

2026年7月12日日曜日

内発的気づきを引き出す——指示より質問が人を成長させる理由【コーチングシリーズ⑬】

 「何度言っても変わらない」「指導しても次の日には元に戻っている」——そんな経験はありませんか?その原因は「伝え方」にあるかもしれません。今回は「内発的気づき」について解説します。


気づきには2種類ある

外発的気づき:指示やアドバイスによって促される気づき

「○○してください」「○○しないといけません」と言われて「ああ、そうか」と気づく。

→ やらされ感が生まれる。指示待ちになりやすい。

内発的気づき:質問や提案によって、自分の内省から生まれる気づき

「どうすれば○○できると思いますか?」という質問から、自分自身で答えを見つけ出す。

→ 行動への納得感が高く、成果が出やすい。自ら考える習慣がつき、成長につながる。


なぜ指示だと続かないのか

「薬を飲みなさい」と言われて飲む患者さん。「どうしたら忘れずに飲めると思いますか?」と聞かれて自分で考えた患者さん。

どちらが長期的に続くでしょうか?

答えは明らかです。自分で考えた解決策は「自分が選んだ」という自己決定感があるため、たとえ上手くいかない日があっても「自分が決めたことだから」という責任感を持ちやすくなります。

内発的気づきによる行動変容は:

  • モチベーションがアップする
  • 行動に納得感があり成果が出やすい
  • 自分と向き合う習慣により成長する

セキュリティカードの事例から学ぶ

上司が部下に対して「振り返り・今後の対応」を話す場面を例に考えます。

A君がセキュリティカードを紛失し、規則通りの報告をしなかった——このような失敗をした部下とどう向き合うか?

外発的アプローチ(NG例) 「なぜルールを守らなかったのか!」 → A君は反省の言葉を言うだけで、本質的な気づきは生まれない

内発的気づきを促すアプローチ(推奨例)

① まず聴く 感情・思考・行動・結果を分けて聴く。できた部分は共感的理解で聴く。できなかった部分も共感的理解で聴く。(自己開示も有効)

② 組織と個人が共に目指せるゴールを設定 チームの考えを説明し、組織と部下が共に目指せるポイントを探す。部下が自ら内省できるように促す。

③ できていることを勇気づけする 今、できていることを具体的に認める。

④ 課題を明確にする 「今回の課題は何だと思う?」という内発的気づきを促す質問で課題を一緒に明確化する。

⑤ 各課題の具体的な対策を検討する 「どうしていけばいいと思う?」という内発的気づきを促す質問で対策を一緒に考える。

⑥ 具体的対策の確認と後押し 合意した対策を確認し、「できる」という勇気づけをする。


内発的気づきを引き出す質問の作り方

内発的気づきを促す「For you」の質問の例:

  • 「いつまでに、どんな状態になるのが理想?」
  • 「サポートしてくれるとしたら誰がいる?」
  • 「何が成功の邪魔をしていると思う?」
  • 「もし制限がなかったとしたら、何をやってみたい?」

スタッフへの実践:「答えを教えない」指導法

若手スタッフが服薬指導で困っている場面:

外発的アプローチ(普通の指導) 「その患者さんには、こう言えばいい。○○を確認して、△△を説明して…」

内発的気づきを促すアプローチ(コーチング型指導) 「その患者さんに、どんなことを聞いてみたい?」 「何が一番気になった?」 「次回来たとき、どんな声かけをしてみようと思う?」

答えを与えるより時間はかかります。でも、自分で考えた解決策は「自分のもの」になります。これが本当の成長です。


まとめ

  • 気づきには外発的気づき(指示)と内発的気づき(質問・提案)がある
  • 内発的気づきはモチベーション・納得感・成長につながる
  • 失敗した時こそ「聴く→ゴール設定→勇気づけ→課題明確化→対策検討」の順で
  • 内発的気づきを引き出す質問は「For you」の質問
  • 「答えを教えない」指導が長期的な成長を育てる

次回は「自己決定理論の3つの心理的欲求:人が動く根本的なエネルギー」を解説します。


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共感的理解⑫ 

病院薬剤師の仕事ブログ(hosphar)

2026年7月11日土曜日

共感的理解:同じ目・耳・心で聴くとはどういうことか【コーチングシリーズ⑫】

 「共感」という言葉はよく使われますが、「共感的理解」は少し違います。今回はコーチングの核心にある「共感的理解」を、医療現場での実践につながる形で解説します。


「共感」と「共感的理解」の違い

まず言葉の整理から。

共感(Sympathy) 他人の考え・主張に「全くそうだと感ずること」。

共感的理解(Empathic Understanding) 相手が見たまま、聞いたまま、感じたままを、自分の解釈を入れず、評価せず受け止めるという行為。

共感は「私もそう思う」という共鳴ですが、共感的理解は「あなたがそう感じているということを、私は理解しようとしている」という姿勢です。


共感的理解を別の言い方で

「相手と同じ目で見て、同じ耳で聴いて、同じ心で感じようと思って、相手の話を聴くこと」

これが共感的理解の本質です。

「思って」というのがポイントです。完全に同じ心になることは不可能ですが、「なろうとする姿勢」——これが相手に伝わります。


同情・同感・共感の違い

医療現場でよく混同される3つの概念を整理します。

概念意味
同情かわいそうに思うこと(上から見下ろす視点)
同感自分の経験から解釈すること(自分フィルター)
共感的理解他人の気持ちを理解しようと努めること(相手の視点)

「かわいそうに」は同情で、相手の感情に対して上から評価しています。 「私もそういう経験があります」は同感で、自分の経験を投影しています。 「あなたがそう感じているんですね」が共感的理解です。


共感的理解の効果

共感的理解で聴くと、相手に3つのことが起きます。

  • 相手は、とても安心します
  • 相手は、もっと話したい気持ちになります
  • 相手と信頼関係の基礎を築くことができます

患者さんが「聴いてもらえた」と感じた瞬間から、心が開き始めます。アドバイスが届くのはその後です。


コミュニケーションの2つのポイント

共感的理解を実践するための2つの視点:

① 視点を変えて見てみよう(特に相手の目線で)

「私はこう思う」ではなく、「この患者さんはどう見ているのか」という視点の切り替え。同じ状況でも立場によって全く違う風景が見えています。

② イメージ化がポイント

伝える時はイメージ化。聴く時もイメージ化。

患者さんが「朝起きるのがつらくて、薬を飲む気になれない」と言った時、その患者さんの朝の風景を頭の中で映像化する。そうすることで、言葉の奥にある感情が伝わってきます。


聴き方の12のポイント

共感的理解を実践するための具体的な聴き方:

① ポジション(位置・距離) ② 姿勢 ③ ゼスチャー ④ 表情 ⑤ うなずき ⑥ あいづち ⑦ バックトラッキング(オウム返し) ⑧ ミラーリング ⑨ マッチング ⑩ イメージング(共感的理解) ⑪ プラス1ステート(相手より少し高いエネルギー状態を保つ) ⑫ 質問


バックトラッキングの使い方

前回も触れましたが、共感的理解において特に重要なのがバックトラッキングです。

患者さんの言葉をそのまま返したり、要約して返すことで:

  • 「ちゃんと聴いてもらえている」という安心感を与える
  • 患者さん自身の考えが整理される
  • 後の会話の方向性をポジティブに導ける

例: 患者さん「最近、仕事が忙しくて薬を飲み忘れることが増えてきました…」

バックトラッキング:「仕事が忙しい中でも、薬を飲もうとしているんですね」

同じ内容でも、「飲み忘れている(ネガティブ)」ではなく「飲もうとしている(ポジティブ)」にフォーカスすることで、次の話が全く変わります。


まとめ

  • 共感的理解:相手の解釈・評価を入れず、見たまま・聴いたまま・感じたままを受け止める
  • 同情(上から)・同感(自分フィルター)と区別する
  • 「あなたがそう感じているということを、理解しようとしている」姿勢が伝わる
  • 共感的理解の効果:安心・もっと話したくなる・信頼関係の基礎
  • バックトラッキングでポジティブな側面にフォーカスする

次回は「内発的気づきを引き出す——指示より質問が人を成長させる理由」を解説します。


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≪関連記事≫ 

アドラー心理学⑪ 

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