コーチングの3大スキルの中で、最もコーチ力が問われるのが「質問」です。良い質問は相手の視点を変え、相手自身が気づきを見つける力を持ちます。
「For me」の質問と「For you」の質問
質問には大きく2種類あります。
「For me」の質問(情報収集の質問) 質問者が知りたいことを聞く質問。「今日はどこが痛いですか?」「薬はいつ飲みますか?」
「For you」の質問(効果的な質問) 相手の内発的気づきを促す質問。相手の行動を促進し、相手が自ら考える力をつける。
コーチングで求められるのは「For you」の質問です。
4種類の質問の特性
過去質問 vs 未来質問
過去質問(あまりオススメしない) 「飲み忘れちゃったんですか?」→「…はい」 過去に焦点を当てる。「そんなこと言われても、構わないでくれ」と感じさせてしまうことがある。
未来質問(オススメ) 「どうしたら忘れずに飲めると思いますか?」→「財布においたら、忘れなくなると思います!」 未来に焦点を当て、これからの行動に結びつきやすい結果が得られる。
否定質問 vs 肯定質問
否定質問(あまりオススメしない) 「ダメじゃないですか!」→「…ですよね。でも、」 やることをやっていなかった場面でつい使いがち。相手は保身にまわりやすく、考えを閉ざしてしまう。
肯定質問(オススメ) 「そんなこともありますよ。どうしたら、できそうですか?」→「つい忘れちゃって。次は気をつけます!」 相手の言動を肯定的に捉え、相手の考えを促す。具体的な行動に結びつきやすい。
WHY質問からWHAT・HOW質問へ
これが最も重要な質問の転換です。
WHY質問(原因追及型:オススメしない)
「どうしてできないの!?」 「なぜ間違えた!?」 →「…」(沈黙)
「なぜ・どうして」という疑問詞は、その人自身の責任を追及する「原因思考型質問詞」です。相手を傷つける結果になりやすく、改善策には繋がりにくい。
WHAT・HOW質問(解決指向型:オススメ)
「何が調剤過誤の原因だと思う?」→「忙しかったからだと思います」 「どうしていったらいいかな?」→「優先順位をつけるといいと思います」
WHATとHOWは「具体的な解決先に向かうことができる解決指向型質問詞」です。
原因をその人に帰属させるのではなく、原因を外側に引っ張り出して「何が原因なのか」「どのようにしていけばよいか」を一緒に考える。
ミスの当事者も自分が責められた感じがしにくいので、自分のミスを客観的に見つめ直し、改善策を冷静に考えられます。
拡大質問と限定質問の使い分け
拡大質問(オープンエンドクエスチョン) 5W1Hを使う質問。相手が自由に考え、言語化することをサポートする。 「将来どうなっていたいですか?」「血糖値を良くするためにどんなことができそうですか?」
→ 話し好きな方・積極的な方に有効。情報量が多く、踏み込みやすい。
限定質問(クローズドクエスチョン) Yes/Noで答えられる質問。 「循環器内科にご通院ですか?」「朝食後に飲んでいますか?」
→ 話したがらない方・シャイな方に有効。簡単に答えられる。
実は限定質問から始めて話しやすい雰囲気を作り、拡大質問に移行するという使い方も効果的です。
糖尿病患者さんへの「質問力」実例
コーチングを使った糖尿病患者さんへの具体的な質問例:
「糖尿病でもっとも困っている・心配なことは何ですか?」 「糖尿病はあなたやご家族の毎日の生活にどんな影響を与えていますか?」 「(説明前に)お知りになりたいのはどんなことでしょうか?」 「糖尿病を良くするために何かしていることがありますか?」 「糖尿病を良くするために何か一つしてみるとしたら、どんなことができそうですか?」
これらはすべて「For you」の未来質問・肯定質問です。
質問のポイントまとめ
① 拡大質問 ≧ 限定質問(まず拡大、シャイな人には限定から) ② 未来質問 > 過去質問 ③ 肯定質問 > 否定質問 ④ WHAT・HOW > WHY(「なぜ」より「何が・どのように」)
まとめ
- 「For you」の質問が相手の内発的気づきを促す効果的な質問
- 過去より未来に焦点を当てる質問が行動に結びつく
- 否定より肯定の表現で相手の考えを促す
- WHYより「WHAT・HOW」で解決指向の話し合いができる
- 患者さんへの具体的な質問例を意識して活用する
次回は「Iメッセージ・YOUメッセージ:言葉の主語を変えるだけで関係が変わる」を解説します。
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