褥瘡治療では外用剤に加えて「創傷被覆材(ドレッシング材)」が重要な役割を果たします。多くの種類があって迷いやすい創傷被覆材の選び方を、浸出液量を軸に整理して解説します。
創傷被覆材とは
創傷被覆材(ドレッシング材)とは、褥瘡・創傷の創面を覆うための医療材料です。
従来の「ガーゼ+消毒」による乾燥療法に代わり、モイストウンドヒーリング(湿潤療法)を実践するためのツールとして普及しました。
ドレッシングの4分類
創傷被覆材は「開放性/閉鎖性」×「ウェット/ドライ」の2軸で4分類できます。
Ⅰ.開放性ウェットドレッシング 食品用フィルム・持続陰圧閉鎖療法(VAC療法)など
Ⅱ.開放性ドライドレッシング 乾燥ガーゼ(現在では推奨されない方法)
Ⅲ.閉鎖性ウェットドレッシング(主流) ポリウレタンフィルム・ポリウレタンフォーム・ハイドロコロイド・軟膏ガーゼなど
Ⅳ.閉鎖性ドライドレッシング カデックス・ユーパスタなど浸出液を吸収・脱水するタイプ
浸出液量で選ぶ:吸収能力別分類
創傷被覆材の選択で最も重要な指標は「浸出液の量」です。
浸出液吸収能力:低いもの(浸出液が少ない創向け)
- テガダーム・パーミロール(ポリウレタンフィルム)
- ラップ(食品用フィルム)
浸出液吸収能力:中程度
- ハイドロサイト薄型(ポリウレタンフォーム)
- デュオアクティブET(ハイドロコロイド)
- アブソキュアサジカル
浸出液吸収能力:高いもの
- ハイドロサイトADジェントル
- アブソキュアウンド
- カルトスタット(アルギン酸塩)
- アクアセル(ハイドロファイバー)
浸出液吸収能力:最も高いもの
- 尿とりパッド・紙おむつ(代用として使用されることもある)
主要な創傷被覆材の特徴
テガダーム・パーミロール(ポリウレタンフィルム)
特徴:透明で薄く、水蒸気は通すが細菌・水は遮断する
使用場面:
- ステージⅠ褥瘡(不可逆的な発赤)
- 骨突出部の摩擦・ずれ防止(予防的使用)
- 浸出液のない浅い創の保護
デュオアクティブET(ハイドロコロイド)
特徴:浸出液を吸収してゲル化し、湿潤環境を維持する
使用場面:
- ステージⅡ褥瘡(水泡・びらん)
- 浸出液が少〜中等度の浅い創
注意:感染創・深い創への使用は避ける
ハイドロサイト・ハイドロサイトADジェントル(ポリウレタンフォーム)
特徴:スポンジ状で浸出液を効率よく吸収・保持する
使用場面:
- ハイドロサイト薄型:浸出液が少ないステージⅡ、上皮形成期
- ハイドロサイトADジェントル:浸出液が多いステージⅡ〜Ⅲ
- 赤色期(肉芽増殖期)の浸出液管理
カルトスタット(アルギン酸塩)
特徴:海藻由来のアルギン酸塩が浸出液を吸収してゲル化。止血作用もある
使用場面:
- 皮下に至る創(ステージⅢ)
- 肉芽増殖期
- 浸出液が多い創
- 止血が必要な創
アクアセル(ハイドロファイバー)
特徴:繊維状のハイドロコロイドが浸出液を吸収し、ゲル状のシートになる
使用場面:
- 皮下組織に至る創
- 黄色壊死期後半〜肉芽増殖期〜表皮形成期
- 浸出液が中〜多い創
グラニュゲル(ハイドロゲル)
特徴:水分を多く含むゲル。乾燥した壊死組織を軟化させる
使用場面:
- 皮下に至る創
- 壊死組織(特に乾燥した黒色壊死)の軟化・除去
創傷被覆材の使い方の実際
創傷被覆材の選択は「試してみながら調整する」というアプローチが現実的です。
① まず貼ってみる(創の状態から最適と思われるものを選択)
② 翌日の浸出液の量・性状を観察する
③ 浸出液がにじみ出ているようなら、同じ被覆材を重ねるか、一段階上の浸出液吸収能力を持つ被覆材を使用
④ ②・③の繰り返しで最適な被覆材を見つける
ステージ別・創傷被覆材選択マニュアル
ステージⅠ(不可逆的発赤) → テガダーム・パーミロール(摩擦・ずれ防止)、アズノール軟膏
ステージⅡ(水泡・びらん)
- 水泡 → デュオアクティブET・アズノール
- びらん → デュオアクティブET・アズノール
- 浸出液が多い → ハイドロサイトADジェントル
- 上皮形成期(白色) → アクトシン・ハイドロサイト薄型
ステージⅢ・Ⅳ(黄色期・黒色期・赤色期)
- 黄色期(壊死・感染なし) → ブロメライン軟膏
- 黒色期(感染あり・浸出液少) → ゲーベンクリーム
- 黒色期(感染あり・浸出液多) → ネグミンシュガー・カデックス
- 赤色期(肉芽形成中・深い) → フィブラストスプレー
- 赤色期(浸出液中) → ハイドロサイトADジェントル
まとめ
- 創傷被覆材の選択軸は「浸出液量」
- 少ない → フィルム・ハイドロコロイド
- 中程度 → ポリウレタンフォーム(ハイドロサイト)
- 多い → アルギン酸塩(カルトスタット)・ハイドロファイバー(アクアセル)
- まず貼って翌日に評価し、調整するアプローチが現実的
- 外用剤と組み合わせて使用する
次回は「褥瘡と栄養の深い関係:NST専門療法士の視点から」を解説します。
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