「褥瘡の治療はこれが正解!」という絶対的な答えはありません。今回は褥瘡治療の多様性と、薬剤師が知っておくべき基本的な考え方を解説します。
褥瘡治療に「絶対の正解」はない
褥瘡治療には、必ずこれをしなければいけないという絶対はありません。一つの傷に対しても何通りもの考え方・治療法があります。
例えば——
皮膚科の先生は外用剤(塗り薬)を塗ることを好む傾向があります。
形成外科の先生はデブリードマン(壊死組織の切除)をして創傷被覆剤を貼ることを好む傾向があります。
ラップ療法を使う先生もいます(食品用ラップで創を覆う)。
マゴットセラピーを使う先生もいます(医療用ウジ虫で壊死組織を除去する)。
どれが「正しい」というわけではなく、それぞれの先生の経験・哲学・患者さんの状態によって最適解が変わります。
褥瘡治療に必要な要素
処置だけで褥瘡は治りません。褥瘡治療には以下の要素が複合的に関わります。
- 薬剤(外用薬)
- 創傷被覆剤(ドレッシング材)
- 体位交換(圧力の除去)
- マットレス(体圧分散)
- 栄養状態(低栄養では治らない)
- 血流(末梢循環の改善)
「創の処置をしているのに良くならない」という場合、処置以外の要素に問題があることが多いです。特に栄養状態と血流は治癒に直結するため、薬剤師・管理栄養士の介入が重要になります。
皮膚潰瘍治療の基本的な考え方:3ステップ
褥瘡を含む皮膚潰瘍の治療は、以下の3ステップで考えます。
Step 1:壊死があれば除去を図る
壊死組織は創傷治癒を妨げる最大の要因です。
方法:外科的切除(デブリードマン)または外用剤による自己融解の促進
注意点:
- 特に浸出液の多い壊死は積極的に除去する
- 乾燥している壊死は少し待ってもいい場合もある(自己融解を促してから)
- 血流障害による潰瘍(糖尿病性壊疽・虚血性潰瘍)は触らない方がいい場合もある
Step 2:感染があれば対策を図る
感染は創傷治癒を大きく妨げます。
感染の徴候:
- 浸出液の増加・性状の変化(膿性)
- 創周囲の発赤・熱感・腫脹・疼痛
- 臭いの増強(感染臭)
- 全身症状(発熱・白血球上昇・CRP上昇)
感染対策:抗菌薬を含有する外用剤の使用(ゲーベンクリーム・ネグミンシュガーなど)
Step 3:壊死・感染が軽快したら肉芽形成促進・上皮化を図る
壊死除去・感染コントロールができたら、いよいよ肉芽形成と上皮化の段階です。
使用するもの:肉芽形成促進薬(フィブラストスプレー・アクトシン軟膏)・創傷被覆剤
全ての時期において創の清浄化(洗浄)に努めることが重要です。
褥瘡の色調と病期の関係
褥瘡の色は病期(治癒段階)を表しています。「NERB分類」(日本褥瘡学会の考え方)で整理します。
黒色期(Necrotic:壊死期・炎症期) 黒色〜茶褐色の壊死組織がある状態。 → まず壊死組織の除去が必要
黄色期(Fibrinous:感染期・不良肉芽) 黄色い壊死組織・膿性浸出液がある状態。感染が多い。 → 感染コントロール・壊死除去
赤色期(Granulation:肉芽増殖期) 赤い良性肉芽が形成されている状態。 → 肉芽形成の促進・創の保護
白色期(Epithelialization:上皮形成期) ピンク〜白色の上皮が伸びてきている状態。 → 上皮化の促進・保護
褥瘡アセスメントで「なぜできたか」を考える
褥瘡の傷をアセスメントして「どうやってできたのか」を分析することが大切です。
傷ができた原因がわかれば、対策が立てられます。
例えば:
- 仙骨部褥瘡 → 体位変換が不足している? マットレスが合っていない?
- 踵骨部褥瘡 → 踵をフリーにするポジショニングができているか?
- 耳介部褥瘡 → 酸素マスクや医療デバイスによる圧迫では?
原因を特定することで、処置だけでなく発生予防策が打てます。
まとめ
- 褥瘡治療に「絶対の正解」はない。医師によってアプローチが異なる
- 処置だけでなく栄養・血流・体位・マットレスが全て関係する
- 皮膚潰瘍治療の3ステップ:壊死除去→感染対策→肉芽形成促進
- 全時期で創の清浄化(洗浄)が最重要
- 色調(黒→黄→赤→白)で病期を把握する
次回は「褥瘡に使う外用剤:ゲーベン・ネグミンシュガー・ブロメラインを徹底解説」です。
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