2015年8月3日月曜日

■てんかん発作患者の検査

てんかん発作は、脳における電気現象であるので脳波や脳磁図が診断に必要な検査である。

MRI:磁気共鳴画像
特定の周波数を持った電磁波を照射し、身体を構成している多数の元素のうち、特定の元素だけを共鳴させて、発生したこの信号を集めて身体の断面像としたものである。
てんかん患者で、てんかんの病因および焦点検索のためにまず選択される画像検査である。
脳の硬化や委縮病変を、CTよりも正確に観察できる。
≪メリット≫
・造影剤を使わず無侵襲である
・目的に応じて優れた画像コントラストを得ることができる
・骨や空気による悪影響がないため、脳や脊髄などを鮮明に診断できる
・各方向の断面が得られ。3次元の画像も撮影できるので理解しやすい
・大きな血管に関する情報が容易に得られる(MRアンギオグラフィー)
≪デメリット≫
・検査時間がCT検査よりも長くかかる(30分〜60分程度)
・検査空間が狭いので、閉所恐怖症の人などは検査しづらい
・磁場を変化させる際に、装置そのものから大きな音が発生する
・体内にペースメーカーなどがある人は検査ができない

CT:コンピュータ断層撮影
放射線(X)を利用して人の体を走査しコンピュータを用いて処理し、体の断層像を撮影する。断層像の他にも立体的な3D画像を作成することができる。
てんかん患者で、急性症候性発作(何らかの原因で全身痙攣を生じた場合など)などの場合に、出血などの急性病変を診断する目的で用いられることが多い。
≪メリット≫
・検査時間が短時間である。
・磁気を使用しないので金属(心臓ペースメーカー)使用者にも施行可能である。
・普及率が高く、安価である。
≪デメリット≫
・放射線被爆がある
・軟部組織の組織学的変化があまり反映されない

PET:陽電子放射断層撮影
F¹-フルオロデオキシブドウ糖(FDG)という放射性医薬品を投与し、脳内でどのように代謝されるかを放射線の量で確認し、画像化するものである。
FDG-PETは、てんかんの焦点検索に用いることができる。脳内の糖代謝分布を画像化すると、てんかん原性領域は機能障害を反映し、発作間欠期には低代謝領域として抽出される。
≪メリット≫
CTMRIでは解らない脳の活動状態も調べることが可能である。
・色々な種類の脳機能検査が可能である。
・てんかん焦点部位をSPECTより高率に描出することが可能である。
≪デメリット≫
・解像力が悪く、単独では決定的診断根拠にはなり得ない。
PET検査が受けられる施設が少なくて全国で70施設程度しかない

SPECT:単光子放出断層撮像法
体内に放射性医薬品を投与して脳まで達した医薬品から出てくる放射線を、一定時間単位で測定し医薬品の分布を画像として表したものである。
外科治療を行う際には、切除領域を決める補助検査となる。てんかん原性領域は、発作間欠期には機能低下を生じるため脳血流量は低下しているため、低灌領域として抽出される。発作時のSPECT施行は困難であるが、うまく発作時に行うことができれば、てんかん発作による高灌領域として描出される。
≪メリット≫
・発作中に静注すれば発作後であっても発作期の脳血流を画像化できる
・発作中に装置内に患者が固定される必要はなく、検査の自由度が高い。
≪デメリット≫
・我が国では放射性医薬品の投与は管理区域内でのみしか行うことができない
・解像度が悪く、正確な場所を特定することは困難である。

MEG:脳磁図
神経が電気を発する時に、同時に発生させている磁気も検出するものである。
てんかんの発作焦点を脳の画像の上に点(ダイポール)として示して、発作発生源を推定し、外科治療を考慮する有用な焦点局在診断法の一つとされている。
≪メリット≫
・頭の形に影響されない
・頭蓋骨や頭皮による抵抗の影響を受けにくい
・脳波で現れない以上を、脳磁図ではっきりと見つけることが出来る場合がある
≪デメリット≫
・脳の出す磁気はさらに微弱であり、測定は簡単ではない
・磁気シールドルームとSQUID(超伝導量子干渉素子)をもった脳磁計が必要
MEG検査ができる病院は国内で25箇所程度である

▽脳波
大脳の神経細胞の電気活動を波形として描き出し、診断に役立てる。
基礎律動の異常は非突発性異常脳波といい、振幅の増減や欠如、左右差、徐波(δ波)の出現などがみられる。δ波は、成人ではほとんど出現することがないため、基礎律動の徐波化は、脳機能低下を表す。
賦活時脳波の記録は開閉眼、閃光刺激、睡眠などの試験を行い誘発させることで測定を行う。

▽問診:アミタールテスト(ワダテスト)
アミタールテストは、左右どちらかの脳に言葉の機能があるかを診断する検査法である。この原理は、左右の半球を片方ずつ眠らせて、どちらかを眠らせたときに言葉が喋れなくなるかを調べるもの。
≪検査方法≫
右腿の付け根から、大腿動脈にカテーテルを挿入し、頸部の動脈までカテーテルを上昇させていき、エックス線の透視下にカテーテルを内頚動脈に導き、ここで麻酔薬を注入する。
右の脳に麻酔薬が入ると、左手が麻痺してだっりと下がるので、そこで注入を中止する。脳が麻痺してしている間に、名前・住所・生年月日など簡単な質問をして、言語機能が保たれているかを検査する。
右の脳が麻酔から完全に覚醒したら、同じ検査を左の脳についても行う。
言語のテスト同様に、左右どちらの脳で主に記憶を司っているか、記憶の検査も可能であるが、記憶に関係する海馬を養う血管は後大脳動脈で、内頸動脈から麻酔薬を注入した結果については、100%確実ではない。




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