「NSTって管理栄養士の仕事でしょ?」——薬剤師がNSTに関わると伝えると、よくこう言われます。でも薬剤師こそ、NSTで独自の価値を発揮できます。今回は薬剤師がNSTで果たす具体的な役割を解説します。
薬剤師がNSTに関われる理由
薬剤師は輸液製剤・配合変化・薬物相互作用・薬物動態の専門家です。これらの知識はNSTにおいて非常に重要です。
薬剤師がNSTで関われる主な領域:
- 輸液の種類とカロリー・栄養素の把握
- TPN・PPNの適正投与計画への提言
- 輸液製剤の配合変化チェック
- 薬物と栄養の相互作用の確認
- 誤嚥対策薬・消化管運動改善薬などの提案
- 褥瘡回診への参加と栄養面からの評価
薬剤師のNST介入事例
私がKT病院・OT病院時代に実際に行っていた介入の具体例です。
① 輸液カロリー不足の発見と改善提案 絶食患者にソルデム3Aが1日3本(258kcal)だけ投与されているケースを発見。「おにぎり1.5個分のカロリーしかない」という状態です。ビーフリード(500ml×3本)に変更を提案することで630kcalに増量でき、アミノ酸45gも同時に投与可能になります。
② 脂肪乳剤の積極的活用の提案 20%イントラリポス100mlを側管から追加することで200kcal上乗せできます。エネルギー密度の低い末梢静脈栄養でも工夫次第でカロリー確保が可能です。
③ 貧血患者への提案 Hb低値の患者の原因を考え、貧血食や鉄剤・ビタミンC・葉酸などの提案を行う。
④ 誤嚥対策薬の提案 誤嚥の多い患者にACE阻害薬(嚥下反射を促す作用)などの提案を行う。
⑤ 消化管運動促進薬の提案 嘔吐の多い患者にドンペリドンやモサプリドなどの提案を行う。
⑥ 脱水・過剰栄養の評価 BUN/Cre比などをチェックし、脱水や過剰なたんぱく質投与がないか評価する。
⑦ TPN・PPNの最適化提案 その患者に必要な栄養素量に近づけられないか提案する。
輸液のカロリーを正しく知る
薬剤師として最低限知っておくべき輸液のカロリーを整理します。
| 輸液 | カロリー |
|---|---|
| ラクトリンゲル 500ml | 0kcal |
| ソルデム1 500ml | 52kcal |
| ソルデム3A 500ml | 86kcal |
| 生理食塩水 500ml | 0kcal |
| 5%ブドウ糖 500ml | 100kcal |
| 10%ブドウ糖 500ml | 200kcal |
| 50%ブドウ糖 200ml | 400kcal |
| ビーフリード 500ml | 210kcal(アミノ酸15g含む) |
| 20%イントラリポス 100ml | 200kcal |
| エルネオパ1号 1000ml | 560kcal |
| エルネオパ2号 1000ml | 820kcal |
絶食でソルデム3A 500ml×3本=258kcal。これしかなければアルブミン値が下がるのは当然です。
ビーフリード採用で変わること
私がOT病院でNSTを立ち上げた時のエピソードです。
当時、末梢静脈から投与できるアミノ酸製剤はアミノレバン(肝不全用)とネオアミュー(腎不全用)の2種類しか採用されていませんでした。
「普通の患者さんに末梢から投与できるアミノ酸製剤がない」——これでは栄養管理の選択肢が限られます。
ビーフリードを採用した結果、末梢静脈栄養からでも積極的にたんぱく質の投与ができるようになりました。ビーフリード採用後の1ヶ月平均使用量が222.8本という実績が出ました。
脂肪乳剤の重要性
「脂肪の点滴」というと敬遠されがちですが、脂肪乳剤は重要なエネルギー源です。
イントラファットなどの脂肪乳剤のメリット:
- 末梢静脈から投与可能で高カロリー(100ml=200kcal)
- 必須脂肪酸(リノール酸など)の補給ができる
- 静脈炎を起こしにくい(脂質は浸透圧が低い)
私が関わった病院で、NST活動開始後に脂肪乳剤の使用量が月平均17本→46.8本に増加した実績があります。これは「適切な栄養管理が浸透した」証拠です。
薬剤師として大切にしていること
NSTで薬剤師が医師に提案する際に意識していること:
- まず輸液のカロリーと栄養素を正確に把握する
- 「現状で足りているか」を患者の体格・病態から計算する
- 変更案を具体的に(「ソルデム3Aを3本→ビーフリード3本に変えると630kcalになります」)
- 副作用・禁忌・腎機能への影響も合わせてチェック
まとめ
- 薬剤師はNSTで輸液・薬剤・栄養の専門家として独自の価値を発揮できる
- 具体的介入:輸液カロリー不足の発見・脂肪乳剤活用・誤嚥対策薬提案・貧血対策
- ソルデム3A×3本=258kcal。これしかなければアルブミンが下がって当然
- ビーフリード・脂肪乳剤の積極活用で末梢静脈栄養でもカロリーを確保できる
次回は「絶食患者の輸液カロリーを正しく計算しよう」を解説します。
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