「何度言っても変わらない」「指導しても次の日には元に戻っている」——そんな経験はありませんか?その原因は「伝え方」にあるかもしれません。今回は「内発的気づき」について解説します。
気づきには2種類ある
外発的気づき:指示やアドバイスによって促される気づき
「○○してください」「○○しないといけません」と言われて「ああ、そうか」と気づく。
→ やらされ感が生まれる。指示待ちになりやすい。
内発的気づき:質問や提案によって、自分の内省から生まれる気づき
「どうすれば○○できると思いますか?」という質問から、自分自身で答えを見つけ出す。
→ 行動への納得感が高く、成果が出やすい。自ら考える習慣がつき、成長につながる。
なぜ指示だと続かないのか
「薬を飲みなさい」と言われて飲む患者さん。「どうしたら忘れずに飲めると思いますか?」と聞かれて自分で考えた患者さん。
どちらが長期的に続くでしょうか?
答えは明らかです。自分で考えた解決策は「自分が選んだ」という自己決定感があるため、たとえ上手くいかない日があっても「自分が決めたことだから」という責任感を持ちやすくなります。
内発的気づきによる行動変容は:
- モチベーションがアップする
- 行動に納得感があり成果が出やすい
- 自分と向き合う習慣により成長する
セキュリティカードの事例から学ぶ
上司が部下に対して「振り返り・今後の対応」を話す場面を例に考えます。
A君がセキュリティカードを紛失し、規則通りの報告をしなかった——このような失敗をした部下とどう向き合うか?
外発的アプローチ(NG例) 「なぜルールを守らなかったのか!」 → A君は反省の言葉を言うだけで、本質的な気づきは生まれない
内発的気づきを促すアプローチ(推奨例)
① まず聴く 感情・思考・行動・結果を分けて聴く。できた部分は共感的理解で聴く。できなかった部分も共感的理解で聴く。(自己開示も有効)
② 組織と個人が共に目指せるゴールを設定 チームの考えを説明し、組織と部下が共に目指せるポイントを探す。部下が自ら内省できるように促す。
③ できていることを勇気づけする 今、できていることを具体的に認める。
④ 課題を明確にする 「今回の課題は何だと思う?」という内発的気づきを促す質問で課題を一緒に明確化する。
⑤ 各課題の具体的な対策を検討する 「どうしていけばいいと思う?」という内発的気づきを促す質問で対策を一緒に考える。
⑥ 具体的対策の確認と後押し 合意した対策を確認し、「できる」という勇気づけをする。
内発的気づきを引き出す質問の作り方
内発的気づきを促す「For you」の質問の例:
- 「いつまでに、どんな状態になるのが理想?」
- 「サポートしてくれるとしたら誰がいる?」
- 「何が成功の邪魔をしていると思う?」
- 「もし制限がなかったとしたら、何をやってみたい?」
スタッフへの実践:「答えを教えない」指導法
若手スタッフが服薬指導で困っている場面:
外発的アプローチ(普通の指導) 「その患者さんには、こう言えばいい。○○を確認して、△△を説明して…」
内発的気づきを促すアプローチ(コーチング型指導) 「その患者さんに、どんなことを聞いてみたい?」 「何が一番気になった?」 「次回来たとき、どんな声かけをしてみようと思う?」
答えを与えるより時間はかかります。でも、自分で考えた解決策は「自分のもの」になります。これが本当の成長です。
まとめ
- 気づきには外発的気づき(指示)と内発的気づき(質問・提案)がある
- 内発的気づきはモチベーション・納得感・成長につながる
- 失敗した時こそ「聴く→ゴール設定→勇気づけ→課題明確化→対策検討」の順で
- 内発的気づきを引き出す質問は「For you」の質問
- 「答えを教えない」指導が長期的な成長を育てる
次回は「自己決定理論の3つの心理的欲求:人が動く根本的なエネルギー」を解説します。
講演・研修依頼について
「コーチングを活用した患者・スタッフとの信頼関係の作り方」研修を病院・薬局向けに承っています。 E-mail:toshiki.taura@gmail.com
≪関連記事≫
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。