2026年7月28日火曜日

輸液のカロリーを正しく知っていますか?絶食患者の栄養問題【NSTシリーズ④】

 「絶食中だからソルデム3Aを入れています」——この状況、実はとても危険かもしれません。ソルデム3Aを1日3本投与しても、カロリーはわずか258kcal。「おにぎり1.5個分」の栄養しかありません。今回は輸液のカロリーと栄養問題を徹底解説します。


あなたはこの輸液のカロリーを知っていますか?

病棟でよく使われる輸液のカロリーを確認してみましょう。

輸液製剤カロリー特徴
ラクトリンゲル 500ml0kcal電解質補液のみ
生理食塩水 500ml0kcal電解質補液のみ
ソルデム1 500ml52kcalブドウ糖26g含有
ソルデム3A 500ml86kcalブドウ糖43g含有
5%ブドウ糖 500ml100kcalブドウ糖50g
10%ブドウ糖 500ml200kcalブドウ糖100g
50%ブドウ糖 200ml400kcal高濃度
ビーフリード 500ml210kcalアミノ酸15g(+ブドウ糖100g)
20%イントラリポス 100ml200kcal脂肪乳剤
エルネオパ1号 1000ml560kcalTPN製剤
エルネオパ2号 1000ml820kcalTPN製剤

ソルデム3A×3本は「おにぎり1.5個分」

よくある絶食患者への処方:

ソルデム3A 500ml × 3本 = 258kcal

おにぎり1個が約170kcalとすると、1日3本の点滴でおにぎり1.5個分しかカロリーが摂れていません。

しかもソルデム3Aにはたんぱく質(アミノ酸)が全く含まれていません。

血清Alb(アルブミン)値が下がるのは当然のことです。


たんぱく質が入っていない点滴の問題

ソルデム3Aなど多くの維持輸液製剤には、たんぱく質(アミノ酸)が含まれていません。

人間の体はたんぱく質を常に消費しています。特に病気やケガのある患者さんはたんぱく質の需要が高まります。

たんぱく質(アミノ酸)が補給されないと:

  • 筋肉が分解されてエネルギーとして使われる(筋肉量の低下)
  • アルブミン合成が低下して血清Alb値が下がる
  • 傷の治癒が遅れる(コラーゲン合成に必要)
  • 免疫機能が低下する
  • 褥瘡の発生・悪化リスクが上がる

ビーフリードに変えるだけで変わること

ソルデム3A 500ml×3本をビーフリード 500ml×3本に変えると——

ソルデム3A ×3本ビーフリード ×3本
カロリー258kcal630kcal
アミノ酸0g45g
電解質組成維持液ほぼ同様の維持液

電解質組成はほぼ同じなので、多くの症例でソルデム3Aの代替として使えます(腎機能低下など個別判断が必要)。

浸透圧が上がり、静脈炎リスクが上がるのはデメリットです。

さらに20%イントラリポス 100mlを側管から追加すれば:

630kcal + 200kcal = 830kcal まで増量可能です。

イントラリポスを側管から投与することにより、浸透圧が下がるので、静脈炎リスクも下がります。


絶食患者に必要なカロリーは?

一般的な必要エネルギー量の計算式:

Harris-Benedict式(簡易計算)

  • 男性:66.5 + 13.8×体重(kg) + 5.0×身長(cm) - 6.8×年齢
  • 女性:655.1 + 9.6×体重(kg) + 1.9×身長(cm) - 4.7×年齢

さらにストレス係数・活動係数をかけます。

簡便法:体重×25〜30kcal/日

例:体重60kgの患者なら1500〜1800kcal/日が目安です。

ソルデム3A×3本の258kcalでは目安量の15〜17%しか充足できません。


「BUN/Creatinine比」で栄養状態を読む

薬剤師がNSTでよく確認する検査値のひとつがBUN/Cre比です。

  • BUN(血中尿素窒素):たんぱく質の代謝産物
  • Creatinine(クレアチニン):筋肉の代謝産物

BUN/Cre比が高い(20以上)

  • たんぱく質の過剰投与
  • 脱水(BUNは上昇するがCreは正常)

BUN/Cre比が低い

  • たんぱく質摂取不足(消耗状態)

このような検査値を読みながら、適切な輸液・栄養療法を提案することが薬剤師のNST業務です。


経腸栄養が使えるなら経腸栄養を優先

「腸が使えるなら腸を使う(If the gut works, use it!)」

これはNSTの基本原則です。

経腸栄養(経鼻チューブ・胃瘻・腸瘻)が使える場合は、静脈栄養より優先します。理由は:

  • 腸管免疫の維持(腸を使わないと腸管バリア機能が低下)
  • 感染性合併症の減少
  • コストが安い
  • 生理的な栄養補給ができる

どうしても経腸栄養が難しい場合に末梢静脈栄養(PPN)または中心静脈栄養(TPN)を選択します。


まとめ

  • ソルデム3A×3本=258kcal=おにぎり1.5個分。これでは栄養不足
  • 多くの維持輸液にたんぱく質(アミノ酸)は含まれていない
  • ビーフリードへの変更だけで630kcal+アミノ酸45gを確保できる
  • 目安のカロリーは体重×25〜30kcal/日
  • BUN/Cre比で脱水・過剰・不足を評価する
  • 腸が使えるなら経腸栄養を優先する

次回は経腸栄養・経静脈栄養の種類と選択について解説します。


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