2026年7月30日木曜日

離島・僻地病院でのNST活動体験記:医師が少ない環境で薬剤師にできること【NSTシリーズ⑥】

 今回は私の体験談です。鹿児島県の離島・OKE島、そしてYG病院(僻地)でのNST活動を振り返ります。「医師が少ない環境で薬剤師にできること」——これが私のNSTの原点です。


KT病院:NST事務局の経験(2006〜2009年)

私が初めてNSTに関わったのは薬剤師歴2年目、KT病院(310床)でのことです。NST事務局を担当することになり、「NSTを良くしていきたい!」という情熱だけで動き始めました。

最初の課題:NST認知率35%

NSTを良くするためにまず必要なのは「NSTを知ってもらうこと」でした。

2009年10月、院内でのNST認知率はわずか35%

実施した啓蒙活動:

  • 病院の全体朝礼で「NSTとは」について紹介
  • 摂食・嚥下委員会で「NST活動と活動成果による効果」の勉強会
  • 褥瘡委員会で「褥瘡に使われる薬剤・ドレッシング剤」と「褥瘡と栄養」の勉強会
  • 医療安全委員会で「輸液」についての勉強会

約7ヶ月間の啓蒙活動の結果、2010年5月には認知率**71%**まで向上。


栄養サポートが必要な患者への積極的介入

啓蒙活動と並行して、栄養サポートが必要な患者を積極的に発見し介入しました。

薬剤師として実施した介入:

  • 褥瘡回診に参加し、褥瘡回診時に栄養面も評価
  • Hb低値の患者の原因を考え、貧血食・鉄剤・ビタミンC・葉酸などの提案
  • 経口食事摂取量の少ない患者に補助食品の提案
  • 誤嚥の多い患者にACE阻害薬などの提案
  • 嘔吐の多い患者にドンペリドン・モサプリドなどの提案
  • BUN/Cre比をチェックし脱水や過剰たんぱく質の評価
  • TPN・PPNの投与量最適化提案

OKE島:離島のNST(2009〜2011年)

鹿児島の南西、奄美大島のさらに南にあるOKE島。人口約13,000人の離島にあるOT病院(132床)に異動しました。

離島ならではの制約

  • 専門医が少ない(場合によっては医師2〜3名体制)
  • 検査の種類に制限がある
  • 物資の調達に時間がかかる
  • 島の外への搬送は時間と費用が大きくかかる

このような環境で「NST活動ができるのか?」と思いましたが、逆に気づいたことがありました。

離島だからこそ薬剤師が輝く

医師が少ない環境では、薬剤師が積極的に情報収集・提案をしなければ患者さんの栄養管理が後回しになりやすい。

「今日の外来が終わったら、栄養状態が気になる患者さんを先生に相談しよう」「この点滴の組み合わせ、カロリーが足りていないと思いますが変えませんか?」

医師との距離が近い離島の病院だからこそ、薬剤師からの提案が直接届きやすいのです。

数値での成果: 脂肪乳剤(イントラファット)使用量が月平均17本→46.8本へ。ビーフリード採用後は月平均222.8本の使用実績。これは「適切な栄養管理が院内に浸透した」証拠です。

沖永良部病院での創傷被覆材の整備

NSTと並行して、褥瘡ケアの整備にも力を入れました。当時採用されていなかった創傷被覆材を順次採用し、「浸出液量に応じて選べる体制」を作りました。


NST専門療法士の取得(2010年)

OT病院でのNST活動を経て、2010年にNST専門療法士を取得しました。

NST専門療法士とは、日本静脈経腸栄養学会(現:日本臨床栄養代謝学会)が認定する資格で、医師・歯科医師・薬剤師・看護師・管理栄養士・臨床検査技師など多職種が取得できます。

取得のためには:

  • 5年以上のNST活動実績
  • 規定の講習・研修の受講
  • 資格認定試験の合格

薬剤師がNSTで大切にしてきたこと

10年以上のNST活動を通じて学んだことを一言で表すと——

「患者さんの栄養状態を数字で語れる薬剤師になること」

「なんとなく栄養が足りていないかも」ではなく、「現在の輸液で○kcal・アミノ酸○g。必要量は体重60kgとして1500kcal・60g/日なので、○○が不足しています。ビーフリードへの変更と脂肪乳剤の追加を提案します」と具体的に話せるかどうかが、医師に信頼される薬剤師かどうかの分かれ目です。


まとめ

  • KT病院でNST事務局としてゼロから立ち上げ。認知率35%→71%
  • 脂肪乳剤使用量が月17本→46.8本に増加。ビーフリード採用で月222.8本の実績
  • 離島・僻地では医師が少ないからこそ薬剤師の積極的な提案が重要
  • 「栄養状態を数字で語れる薬剤師」が目標

次回から褥瘡シリーズとして「褥瘡とは何か?原因・ステージ分類」を解説します。


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hospharブログ(病院薬剤師の専門情報)

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