2013年9月29日日曜日

■栄養剤に水を混ぜて注入するといけないのは、なぜですか?

▼原則的に、栄養剤は薄めないと考えてください。
栄養剤のみを先に注入してから、白湯やお茶はあとから注入するのが正しいという考えに最近はなっているみたいです。特に、お茶で栄養剤を薄めるっていうのは、栄養剤のたんぱく質と固まってしまってカテーテルを詰まらせる原因となったりするのでやめた方がいいです。
確かに以前は、栄養剤の浸透圧を下げるため水などで薄めて注入した方が下痢などが起こりにくいんじゃないかって言われてました。けどその考え方は見直されてきました。
日本で発売されている経腸栄養剤は、1kcal/mlの低濃度の製品が多く、もうこれ以上薄める必要がないほど薄いのです。
まっ最近では1.5~2kcal/mlのものも発売されてます。これらの製品は、1kcal/mlの製品では濃度が薄いので、量が多くいってお腹は膨れるがその割には栄養が入らないとかお腹(胃)が膨れ上がって胃食道逆流の危険性が増えるといったことなどに対して改良されたものです。
でも、白湯で薄めないといけない場合もあります。
それは、栄養剤に対して濃度依存性に下痢を起こす患者様に使う場合だったり、長期間消化管を使っていない患者様に栄養剤の慣らし運転をする場合です。慣らし運転は、濃度を低く量を少なくして栄養剤の投与を開始し、様子をみながら少しずつ増やしていくやり方です。あとは、栄養剤の固形化も結果としては薄めていることになりますが、特別な目的があるとき以外は薄めない方がいいのです。

▼さっここで、よくある質問です!!
『栄養剤のみを注入しても後から白湯を入れるのだから、胃の中で混ざって結局混ぜて注入するのと同じことじゃないの?』
この答えも調べました。これについて研究した人は偉いですよ~ヾ( ´ー`)
この考えは、間違いなのです。核医学的胃排出時間〔胃から栄養剤が十二指腸に出ていく時間を、胃内容が半分になるまでの時間で表したもの〕は、およそ55~70分〔高齢者では、57~106分〕だったみたいです。つまり、栄養剤が滴下されている間も、胃内容物はどんどん腸に流れているということになります。なので、胃内容が減った状態で後から白湯が入ってくるのと、最初から薄まった栄養剤が胃に入ってくるのとでは、違う現象であることがおわかりいただけるかと思います。それは、栄養剤を嘔吐して誤嚥するリスクと、白湯を嘔吐して誤嚥するリスクの差です。

▼下痢防止のために水で希釈しない。
栄養剤を水で希釈するのは、何度も言いますが、浸透圧を低下させるためです。じゃあその希釈することの問題点を考えてみましょう。まず希釈するという操作自体が細菌汚染の原因となります。なので、下痢予防のために栄養剤を水で希釈するのは逆効果です。また、栄養剤を薄めることは、栄養剤の粘度を低下させ、胃・食道逆流を誘発し、誤嚥性肺炎のリスクを高めます。そして水分の過剰摂取にも繋がり、下痢の原因になったりもします。
ヒトは約7,5Lの水分が唾液や消化液として分泌されています。特に小腸内には、1日に約7Lの小腸液が分泌されているため小腸内で希釈されるそうです。ですから、経腸栄養剤の投与速度を落とすと、経腸栄養剤が消化液で自動的に薄められるので、水で希釈するのと同じ効果が得られます。投与速度を半分に落として投与すれば、水で倍量に希釈するのと同じ効果が得られ、投与時間は同じです。
日本は、まだまだかもしれませんが、海外では、経腸栄養剤は水で希釈しないことが常識となっているそうです。
ただし、小児の場合は、腎機能の関係から高浸透圧性アシドーシスを予防するために0.5~0.8kcal/mlの濃度で投与することが推奨されています。

▼高濃度栄養剤〔1.5kcal/ml以上〕は下痢がおおいのでしょうか?
高濃度〔1.5kcal/ml以上〕の栄養剤は、浸透圧が高いため下痢が多いというイメージがあります。しかし、浸透圧が760mOsm/Lある成分栄養剤〔エレンタール〕とかの栄養剤ならともかく、高濃度という場合でも半消化態の栄養剤の場合は、それほど高くありません。約540mOsm/Lの浸透圧製品で、下痢の発生頻度が9.1%と報告されていますが、1kcal/mlの製品と比べてもそんなに高くありません。700mOsm/L以下なら特に問題はないと言われています。



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