2018年7月31日火曜日

■不眠のタイプ別の薬の使い分け

睡眠薬は、不眠のタイプ不眠期間の長さによって使い分けていきます。

まず不眠のタイプからみていきましょう。作用時間と睡眠の質によって使い分けていく必要があります。睡眠薬の作用時間と特徴を整理してみたいと思います。

自然な眠気を強くする睡眠薬としては、ベルソムラは中途覚醒や早朝覚醒に効果が期待できます。ロゼレムは、体内時計のリズムを整える作用が期待できます。
 
このため、お薬の作用時間の観点では以下のように使い分けられます。
入眠障害:超短時間型~短時間型
中途覚醒:短時間型~長時間型・ベルソムラ
早朝覚醒:中間型~長時間型・ベルソムラ

さらに睡眠の質の観点では、以下のように使い分けられます。
熟眠障害:ロゼレム・ベルソムラ・鎮静系抗うつ薬・抗精神病薬
悪夢:三環系抗うつ薬
睡眠覚醒リズム障害:ロゼレム

そして不眠で悩んでいる期間の長さも大切です。
一時的な不眠:短い睡眠薬
慢性的な不眠→長い睡眠薬・自然な眠気を強める睡眠薬

慢性的な不眠では、作用時間が長い睡眠薬を中心に使っていきます。これは睡眠薬の使用が長期にわたった時に、やめやすくするためです。ベルソムラのような自然な眠気を強める睡眠薬も依存性がないため、慢性的な不眠に向いています。

それに対して一時的な不眠では、短いタイプの睡眠薬で効果の実感が強いものを使っていきます。一時的な不眠を改善することで、心身の状態がよくなって不眠も改善することを期待していきます。
 
 

 

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■睡眠薬の「睡眠の質」への影響

睡眠薬を服用することで睡眠時間が長くなりますが、睡眠の質への影響はお薬によっても異なります。

睡眠は大きく2つに分けることができます。REM睡眠とnonREM睡眠になります。

REM睡眠では、身体が休みをとり脳では情報の処理を行っている睡眠です。私たちが夢を見ているときの睡眠で、REM睡眠が減ると身体の疲れが取れずに、記憶などが定着しづらくなります。

nonREM睡眠は、4段階に深さを分けられます。深い睡眠では、脳が休みをとっています。ですから深い睡眠が減ると熟眠感がなくなり、免疫などが低下します。

2つの睡眠のメリハリで、疲労やストレスから回復をします。これらの睡眠に対する不眠を改善するお薬の影響をみてみましょう。

最もよくつかわれるベンゾジアゼピン系は、浅い睡眠を増やすことで睡眠のメリハリが悪くなります。全体として睡眠の質が低下してしまいます。

睡眠の質を考えるときには、抗うつ剤や抗精神病薬も含めて考えていきます。抗精神病薬の睡眠への影響について、以下に代表的なお薬をまとめておきます。






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■睡眠薬以外の不眠に効果のあるお薬

不眠に使われるお薬は、睡眠薬以外にもあります。
・抗うつ剤
・抗精神病薬
これらのお薬のうち、眠気を生じるものがあります。患者さんの症状を全体的にみて、睡眠薬よりも効果が期待できることがあります。

抗うつ剤

  睡眠薬がわりに使われる抗うつ剤は、鎮静系抗うつ薬と呼ばれます。セロトニン2受容体をブロックする作用があり、これにより睡眠が深くなります。NaSSAや四環系、三環系などは抗ヒスタミン作用が強く、催眠作用も強く認められます。トリプタノールなどの三環系抗うつ薬はREM睡眠を減らす作用があるので、悪夢の時などに使われます。
 
 抗精神病薬


  抗精神病薬は、ドパミン2受容体をブロックすることで鎮静作用をもたらします。SDAやMARTAなどの非定型抗精神病薬にはセロトニン2A受容体をブロックする作用もあり、睡眠を深くする作用も期待できます。




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2018年7月30日月曜日

■睡眠薬の強さの違い



 睡眠薬ごとに強さは異なります。まずは睡眠薬のタイプによって比較してみましょう。これらのうち、おもに睡眠薬として使われているベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の強さについて、作用時間の違いごとに比較してみたいと思います。

睡眠薬の強さは、用量を増やせば作用は強くなります。ですから、最高用量で比較していきます。

超短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は2~4時間
(ハルシオン>アモバン>マイスリー≧ルネスタ)

短時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は6~10時間
(レンドルミン≧デパス≒エバミール
/ロラメット>リスミー)

中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は20~24時間
(ロヒプノール
/サイレース>ベンザリン/ネルボン>ユーロジン)

長時間型:効果のピークは3~5時間、作用時間は24時間~
(ドラール>ベノジール
/ダルメート≒ソメリン)

 用量を超えて過量服薬しても、効果が強まるわけではありません。睡眠薬の用量を決めるにあたっては、様々な量で効果と安全性を試験しています。

 その結果として効果が頭打ちになる量が、睡眠薬の最高用量となっています。眠れないからといって、用量を超えて使うことはやめましょう。




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■睡眠薬の作用時間による分類

 睡眠薬は効果以外にも、睡眠薬(処方薬)は半減期によって超短時間作用型、短時間作用型、中間作用型、長時間作用型の4つに分類されます。

超短時間作用型・短時間作用型
 入眠障害の人やシフト勤務などで昼夜逆転している人に処方されることが多い薬です。半減期が短く、翌朝に効果が残りにくいのが特徴です。超短時間作用型なら約2〜4時間、短時間作用型なら約6〜10時間で血中濃度が半減します。

<代表的な薬>
ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬)
ゾルピデム(非ベンゾジアゼピン系)
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系)

中間作用型・長時間作用型
 中途覚醒や早朝覚醒の人に処方されることが多い薬です。ベンゾジアゼピン系の薬が多く、GABAの作用を高めることにより、不安を和らげる効果も期待できることを利用して、心理的ストレスや精神疾患によって不眠に悩む人に処方されることがあります。血中濃度の半減には、中間作用型なら約20〜30時間、長時間作用型なら30時間以上かかるとされています。

<代表的な薬>
ニメタゼパム(ベンゾジアゼピン系)
クアゼパム(ベンゾジアゼピン系)

一口に睡眠薬といっても、その種類は効果や持続時間によって分類されています。処方薬は医師と、市販薬は薬剤師と相談し、自分の症状に合ったものを選んで、適切に飲むことが大切です。


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■睡眠薬の作用時間の違い


 睡眠薬として主に使われているのは、ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系になります。これらの睡眠薬は脳の機能を低下させることで催眠作用をもたらすのですが、効果を考えていくには作用時間が重要となります。
 作用時間によって、大きく4つのタイプに分けられています。


超短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は2~4時間
(ハルシオン・マイスリー・アモバン・ルネスタ)

短時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は6~10時間
(デパス・レンドルミン・エバミール/ロラメット・リスミー)

中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は20~24時間
(ロヒプノール/サイレース・ベンザリン/ネルボン・ユーロジン)

長時間型:効果のピークは3~5時間、作用時間は24時間~
(ドラール・ベノジール/ダルメート・ソメリン)




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2018年7月29日日曜日

■睡眠薬の効果

睡眠薬の効果は、種類ごとの効き方があります。

脳の活動を鈍くさせるタイプ
睡眠薬は、脳、すなわち中枢神経に作用するものがほとんどとなっています。またその代表的な部分がベンゾジアゼピン受容体という体機能を抑える器官です。

ベンゾジアゼピン受容体・・・脳機能の抑制に関わる物質。
人間のどの脳にもこのベンゾジアゼピン受容体は存在し、刺激されると活動機能が鈍くさせられます。睡眠薬や抗精神薬を飲むと気分がぽわーっとしてふらついたり眠くなるのはこの器官が働いているためです。
この受容体は、
ω1受容体、ω2受容体といった対をなした形をしており、
ω1受容体・・・睡眠への作用
ω2受容体・・・不安感情を和らげたり筋肉を緩める作用
といった見た目はさながら双子のようですが、別々の性質を持っています。睡眠薬はこの
BZD(ベンゾジアゼピン受容体)のω1ω2を刺激する事で催眠作用をもたらすのです。人によりますが、ルネスタ等の非BZD薬はω1にのみ狙って作用するのでふらつく等の副作用が少なくなったと言われています。

睡眠ホルモンに関与するタイプ
睡眠薬ロゼレムやそのジェネリックにのみに限って、ある特有のホルモンに働く作用があり、それがメラトニンというホルモンです。
メラトニン・・・人間が朝日が昇ったら活動し、夕方頃になると活動を静める体内時計ホルモン。
脳の視床下部と呼ばれる部分には、人間の寝ている・起きて
いるのリズムを決め、体内時計を管理するメラトニンというホルモンが存在します 。 時差ぼけや夜間シフトで昼間眠くなりがちなのはこのリズムが崩れている事が原因です。このホルモンを作動させる言わばスイッチのような部分がメラトニン受容体で、ロゼレム等の有効成分ラメルテオンは脳内のメラトニン受容体に作用し、睡眠(寝ている)と覚醒(起きている)のリズムを整え、自然な睡眠を促します。BZD受容体と比べ、速攻性を見込めない分はるかに自然な催眠効果と睡眠リズム形成する画期的なお薬です。



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2018年7月26日木曜日

■睡眠薬(処方薬)の種類とその構造

睡眠薬(処方薬)は、効果によって大きく4種類のタイプに分けられます。

≪ベンゾジアゼピン系≫
 前に述べたように、医師から処方される睡眠薬として一般的なタイプです。脳の神経活動を全般的に抑えることで眠りやすくする特徴を持ち、日本では約50年前から使われています。作用の持続時間が短いものから長いものまでいろいろな種類があることから、睡眠薬の中では比較的ポピュラーなタイプのものといえます。しかし、ふらつきなどの副作用が出やすい、依存性がやや高いというデメリットがあるため、慎重に飲む必要があります。

≪非ベンゾジアゼピン系≫
 ベンゾジアゼピン系と同様に、不眠改善作用に特化したタイプです。筋弛緩作用などが弱いため、ベンゾジアゼピン系の薬に見られるふらつきや転倒の危険性、依存性が緩和されているため、高齢者を中心に処方されています。

≪メラトニン受容体作動薬≫
 「メラトニン」という体内時計のリズムを整え、睡眠を促す働きを持つホルモンと同じような作用があるタイプの薬です。副作用の心配が少なく、総睡眠時間を増やす作用が期待できるのが特徴です。

≪オレキシン受容体拮抗(きっこう)薬≫
 睡眠からの目覚めを促す「オレキシン」というホルモンの働きを抑制することで、眠りやすい体内環境を作り出すことを目的としたタイプです。入眠のスムーズさに加え、中途覚醒を防ぐ効果も含まれています。日本では2014年から使われ始めた、比較的新しいタイプの睡眠薬として知られています




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2018年7月25日水曜日

■自然な眠気を強める睡眠薬

近年では、睡眠に関係する生理的な物質を調整するお薬が発売されています。
現在発売されているのは、2つの物質に関係するお薬です。
・メラトニン受容体作動薬:ロゼレム
・オレキシン受容体拮抗薬:ベルソムラ

ロゼレムは、体内時計のリズムを司っているメラトニンの分泌を促すお薬になります。

メラトニンは20時頃から分泌され、深夜12時頃をピークに、明け方になると光をあびて消えていくという物質です。年齢を経るごとに分泌量が減少するといわれていて、ロゼレムはこのメリハリをつけるお薬です。

ベルソムラは、私たちが覚醒状態があるときに働いているオレキシンという物質の働きをブロックし、睡眠状態へスイッチを切り替えていくようなお薬です。

どちらも生理的な物質に作用するため、依存性が極めて少ないといわれています。その一方で強引さがないため、効果や副作用に個人差が大きいという特徴があります。



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■脳の機能を低下させる睡眠薬

現在も中心となって使われている睡眠薬で、睡眠導入剤というとこのタイプになるかと思います。

・ベンゾジアゼピン系
・非ベンゾジアゼピン系
・バルビツール酸系

 この3つのタイプがありますが、いずれもGABAの働きを強めることで催眠作用がもたらされます。 GABAは神経間の情報を伝えている物質(神経伝達物質)で、GABAが働くことで神経細胞の興奮が抑制されます。

 バルビツール酸系は、量が多くなるとGABAを介した間接的な働きだけでなく、直接神経細胞にも働いてしまいます(cl-チャネル)。このため中枢神経を抑制しすぎるリスクが高く、安全性が低いため使われなくなりました。

 ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系の2つが主に使われています。どちらもGABA-A受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用するのですが、この結合部位はω1とω2という細かなタイプ(サブタイプ)に分かれています。

・ベンゾジアゼピン系:ω1+ω
・非ベンゾジアゼピン系:ω1 

それぞれのサブタイプは、

ω1:催眠作用
ω2:筋弛緩作用・抗不安作用

このような作用が期待できます。
このため非ベンゾジアゼピン系は、筋弛緩作用(ふらつき)が少ないお薬ということになります。
これらの脳の機能を低下させるタイプのお薬は計算がある程度でき、作用時間・強さから睡眠薬を選んでいきます。




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