▼食欲低下の原因を調べる
食欲低下の原因は、栄養状態・食事・疾患・症状・精神状態・薬剤の副作用などがあります。
栄養不良状態では、食欲低下の原因にも結果にもなります。
食事の原因には、味が薄い・食事摂取不良による味覚異常・亜鉛やビタミンB郡不足などがあります。
疾患では、食べ物を消化する能力の低下・発熱・炎症(CRPが5以上とかでは、著名に食欲が低下するって言う話も聞いたことがあります。)・尿毒症の症状・精神的影響・薬剤の副作用などがあります。
▼対策
①栄養状態を改善する。
栄養状態が悪いと消化能力や体力の低下が起こり、食事摂取量が進まず、さらにどんどん低栄養状態に進んでいきます。したがって、栄養状態の改善を行う必要があります。
・必要栄養量を満たすために、TPN〔中心静脈栄養法〕やPPN〔末梢静脈栄養法〕やEN〔経腸栄養法〕を併用します。
・経口で摂取を増やせるようなら、濃厚流動食や経腸栄養剤などを追加します。
・食事は、消化吸収に負担がないような形態にして、食べやすい味付けにします。
②味が薄いときは濃くする。
塩分は、食欲増進作用があるため増やします。塩分増加の方法としては、主食では嗜好品をつけたり、おじやや麺類やおにぎりにしたり、副食では味付けを濃くしたり、食べやすいおかずや汁物の回数を増やします。
摂取量が少ない状態の人への塩分制限は、摂取している塩分が少ないのですから十分な量を摂取できるようになるまで塩分制限を解除したりすることも考慮します。
③味覚異常時には、亜鉛補給をします。
食事摂取が不良していることによる味覚異常の原因は、亜鉛を多く含む蛋白質源が長期に不足していることが考えられます。亜鉛不足の状態では、食事ののみの亜鉛の補給量では、味覚異常の回復には十分な量ではないため、薬物での補給が必要になります【プロマック:胃潰瘍に使われる薬なんですが、亜鉛を多く含んでおり、味覚異常や褥瘡などの創傷治癒促進のための亜鉛補給として使われたりします】。改善した後も、積極的に亜鉛を食事で補給します。亜鉛を多く含む触診として、カキ(貝)・ウナギ・豚肩ロース・コンビーフ・ホタテ・カニ缶などがあります。
④ビタミンB郡の摂取を増やす。
ビタミンB1の不足では、乳酸などの疲労物質が溜まり、食欲が低下します。このような状態で効果的な方法は、ビタミンB1だけでなく、エネルギーの供給や老廃物の代謝に働くビタミンB2やナイアシンなどの、ビタミンB郡全体を摂取することです。増やす食品は、蛋白質源が中心ですが、総合的に摂取するには、経腸栄養剤【グランケアなどがいいって言われています】やサプリメントなどが有効です。また、甘いものを中心に栄養補給を行う時には、ビタミンB1を同時に補給します。
食品には、レバー・牛乳・卵・豚肉・鶏肉・大豆・などがあります。
⑤発熱や尿毒症の場合
発熱や炎症では、炎症物質がある限り食欲はなく、経口摂取を思うように増やせないため、静脈栄養などの併用を検討していきます。
尿毒症の原因は、腎機能低下に対するたんぱく質の過剰摂取です。まず一番の対策は、たんぱく質の原料です。尿毒症は、食欲低下を伴うことが多いため、重度の浮腫がなければ、塩分制限をなくして7gを超えないよう摂取量を観察していきます。十分に食べられるようになったら、塩分は制限します。
⑥精神状態
癌の告知などやいろいろなトラブルが精神面に及ぼす影響は、食欲を大きく低下させます。1週間にわたる摂取量の低下があれば、PPNやTPNやENなどで栄養量の補給を検討します。また、病院食と家での食事の違いが大きく、食欲が出ないということもあります。こういう場合は、可能な限り家での食事パターンに近づけるように配慮します。食事内容でできることは、摂取しやすいものを提供することです。
⑦薬剤の副作用
食欲に関係する薬物の副作用は、食欲低下や口内炎や味覚異常などがあります。食欲低下が起こりやすい抗がん剤の投与期間に経口摂取を施すことは、患者様にとって負担になります。このような場合の栄養補給も、PPNやTPNやENの併用を検討します。抗精神病薬や眠気の副作用を施す薬剤などが投与されている場合は、薬剤の投与を中止することで食欲が回復する場合がありますので、薬剤を本当に飲む必要があるのかについても再度見直していくことが必要となります。
▼全般的に、食欲がない場合は、いずれの原因でも、まず塩分を増やしてビタミンB郡や亜鉛の補給を考慮します。しかし、食欲不振が1週間持続したら、摂取量の増加がない時は、静脈栄養の併用を検討します。静脈栄養の併用は、安易な補給方法と考えられるかもしれませんが、重要なのはまず栄養状態の低下を防ぐことです。栄養状態の低下が続けば、またそれが食欲不振の原因へとなるからです。
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