2017年10月20日金曜日

■輸液ルートと環境ホルモン

 環境ホルモンとは、正しくは『外因性内分泌攪乱化学物質』というもので、ヒトや野生動物の内分泌の作用を乱し、生殖機能などを阻害する可能性のある環境化学物質のことをいいます。

 輸液用のルートのほとんどは、ポリ塩化ビニル(PVC:Poly vinyl Chloride)でできています。このポリ塩化ビニルを柔軟にするための可塑剤として、DEHP(ジエチルヘキシルフタレート)と呼ばれる物質がよく用いられていますが、この物質が抗がん剤や免疫抑制剤などの一部の薬剤と反応し、環境ホルモンとして溶け出してしまうことがあります。

 この環境ホルモンが人体に及ぼす影響ははっきりとは解明されておらず、まだ不明な点が多いのが現状です。特に急性や毒性の報告例はほとんどなく、現時点で懸念されている点は長期間体内に入り続けることによる長期毒性です。動物実験では精巣や生殖機能に影響を与える例が報告されており、また直接的には肝機能障害を引き起こすと言われています。
 
 特に輸液ルートから環境ホルモンを溶けださせる薬物として抗がん剤と脂肪乳剤などがあり、これらはDEHPの溶出量が多いと言われています。抗がん剤のパクリタキセルはポリ塩化ビニル製の点滴ルートを溶かすことすらあります。
 こうした薬を使用する場合は、通常DEHPが用いられていない輸液ルートを選択します。


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