特異的な治療法はなく、安静・経口補水液・輸液による脱水予防、解熱鎮痛薬の使用など対症療法が中心となる。抗ウィルス薬であるリバビリンの使用は推奨されていない。
▽抗菌薬
免疫能の低下がみられるため、肺炎や中耳炎などの合併の際に細菌の2次感染が起こりやすい。注意深い観察が必要だが、予防のための抗菌薬投与は推奨されていない。細菌感染の兆候がみられる症例に対してはためらいなく使用する。
▽ビタミンA
ビタミンAの投与は、海外の報告では麻疹の重症化や死亡率を著明に減少させると報告されている。栄養状態が悪い途上国はもちろんであるが、先進国の患者でも麻疹の経過中にビタミンAの血中濃度が低下する。作用メカニズムは明確になっていないが、抗酸化作用・抗炎症作用・粘膜障害の予防などが推定されている。
わが国でも入院を要する重症例には投与が勧められる。
WHOは、国に関係なくすべての急性期の麻疹小児に以下の1回投与量で1日1回2日間の投与を推奨している。
・生後6ヶ月未満:5万単位
・生後6~11ヶ月:10万単位
・生後12ヶ月以上:20万単位
角膜潰瘍などビタミンA欠乏の症状や所見のある小児では、2~4週後に追加投与(3回目)を行う。わが国での検討では、投与群で咳嗽の期間が短縮したという報告や第4病日までに投与した群では、第5病日以降に投与した群に比べて、高熱の持続時間が短く、肺炎合併例が少なかったという報告がみられている。
第5病日以降の投与において、年齢に応じて1回3000~10000万単位を1日1回3~5日間という比較的少量の投与で効果がみられている。
成人麻疹症例に対する効果は明らかではないが、重篤な副作用はみられないため、重症例では検討してもよいと思われる。内服できない場合は筋注も可能。なお妊娠3ヶ月以内または妊娠を希望する女性への5000単位/日以上の投与は禁忌とされている。
▽曝露後予防
曝露後予防には72時間以内に麻疹ワクチン接種または6日以内に筋注用γグロブリンの投与を行う。麻疹ワクチンの接種対象者であれば、曝露後72時間以内に麻疹ワクチンを接種すれば一部の者は発症を予防できる。生後6~11ヶ月の児には通常麻疹ワクチンを用いないが、集団発生の際には接種可能である。生後6ヶ月未満の小児、生ワクチンを接種できない免疫不全者および妊婦には、曝露後6日以内の筋注用γグロブリンの投与で発症の予防または軽症化できる。・筋注用γグロブリン1回0.25ml/kg(最大15ml)1回のみ筋注
免疫不全者では0.5ml/kg(最大15ml)1回筋注
静注用ヒト免疫γグロブリン製剤も保険適用はないが代用可能であり、50mg/kg(免疫不全者では100mg/kg)。
≪関連記事≫
■妊婦の方のビタミンA過剰摂取は胎児に奇形を生じさせる可能性がある。
■妊婦へビタミンAは禁忌!?
■ディフェリンゲルは妊婦に禁忌!?
■妊婦が薬を飲んで薬の影響が大きい時期は!?
■妊婦への投与が禁忌である代表的な薬剤
■妊娠前には風疹抗体検査をした方がよい!!
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。