2026年7月7日火曜日

質問スキル:「WHY」より「WHAT・HOW」で相手の可能性を引き出す【コーチングシリーズ⑧】

 コーチングの3大スキルの中で、最もコーチ力が問われるのが「質問」です。良い質問は相手の視点を変え、相手自身が気づきを見つける力を持ちます。


「For me」の質問と「For you」の質問

質問には大きく2種類あります。

「For me」の質問(情報収集の質問) 質問者が知りたいことを聞く質問。「今日はどこが痛いですか?」「薬はいつ飲みますか?」

「For you」の質問(効果的な質問) 相手の内発的気づきを促す質問。相手の行動を促進し、相手が自ら考える力をつける。

コーチングで求められるのは「For you」の質問です。


4種類の質問の特性

過去質問 vs 未来質問

過去質問(あまりオススメしない) 「飲み忘れちゃったんですか?」→「…はい」 過去に焦点を当てる。「そんなこと言われても、構わないでくれ」と感じさせてしまうことがある。

未来質問(オススメ) 「どうしたら忘れずに飲めると思いますか?」→「財布においたら、忘れなくなると思います!」 未来に焦点を当て、これからの行動に結びつきやすい結果が得られる。

否定質問 vs 肯定質問

否定質問(あまりオススメしない) 「ダメじゃないですか!」→「…ですよね。でも、」 やることをやっていなかった場面でつい使いがち。相手は保身にまわりやすく、考えを閉ざしてしまう。

肯定質問(オススメ) 「そんなこともありますよ。どうしたら、できそうですか?」→「つい忘れちゃって。次は気をつけます!」 相手の言動を肯定的に捉え、相手の考えを促す。具体的な行動に結びつきやすい。


WHY質問からWHAT・HOW質問へ

これが最も重要な質問の転換です。

WHY質問(原因追及型:オススメしない)

「どうしてできないの!?」 「なぜ間違えた!?」 →「…」(沈黙)

「なぜ・どうして」という疑問詞は、その人自身の責任を追及する「原因思考型質問詞」です。相手を傷つける結果になりやすく、改善策には繋がりにくい。

WHAT・HOW質問(解決指向型:オススメ)

「何が調剤過誤の原因だと思う?」→「忙しかったからだと思います」 「どうしていったらいいかな?」→「優先順位をつけるといいと思います」

WHATとHOWは「具体的な解決先に向かうことができる解決指向型質問詞」です。

原因をその人に帰属させるのではなく、原因を外側に引っ張り出して「何が原因なのか」「どのようにしていけばよいか」を一緒に考える。

ミスの当事者も自分が責められた感じがしにくいので、自分のミスを客観的に見つめ直し、改善策を冷静に考えられます。


拡大質問と限定質問の使い分け

拡大質問(オープンエンドクエスチョン) 5W1Hを使う質問。相手が自由に考え、言語化することをサポートする。 「将来どうなっていたいですか?」「血糖値を良くするためにどんなことができそうですか?」

→ 話し好きな方・積極的な方に有効。情報量が多く、踏み込みやすい。

限定質問(クローズドクエスチョン) Yes/Noで答えられる質問。 「循環器内科にご通院ですか?」「朝食後に飲んでいますか?」

→ 話したがらない方・シャイな方に有効。簡単に答えられる。

実は限定質問から始めて話しやすい雰囲気を作り、拡大質問に移行するという使い方も効果的です。


糖尿病患者さんへの「質問力」実例

コーチングを使った糖尿病患者さんへの具体的な質問例:

「糖尿病でもっとも困っている・心配なことは何ですか?」 「糖尿病はあなたやご家族の毎日の生活にどんな影響を与えていますか?」 「(説明前に)お知りになりたいのはどんなことでしょうか?」 「糖尿病を良くするために何かしていることがありますか?」 「糖尿病を良くするために何か一つしてみるとしたら、どんなことができそうですか?」

これらはすべて「For you」の未来質問・肯定質問です。


質問のポイントまとめ

① 拡大質問 ≧ 限定質問(まず拡大、シャイな人には限定から) ② 未来質問 > 過去質問 ③ 肯定質問 > 否定質問 ④ WHAT・HOW > WHY(「なぜ」より「何が・どのように」)


まとめ

  • 「For you」の質問が相手の内発的気づきを促す効果的な質問
  • 過去より未来に焦点を当てる質問が行動に結びつく
  • 否定より肯定の表現で相手の考えを促す
  • WHYより「WHAT・HOW」で解決指向の話し合いができる
  • 患者さんへの具体的な質問例を意識して活用する

次回は「Iメッセージ・YOUメッセージ:言葉の主語を変えるだけで関係が変わる」を解説します。


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承認スキル⑦ 

病院薬剤師の仕事ブログ(hosphar)

2026年7月6日月曜日

薬剤師がNST・褥瘡ケアに関わる意義:シリーズ総まとめ【褥瘡・NSTシリーズ⑬】

 全13回のNST・褥瘡シリーズ最終回です。「薬剤師がNSTや褥瘡ケアに関わることで何が変わるのか」を総まとめします。


このシリーズで学んできたこと

【NSTシリーズ①〜⑥】 

① NSTとは何か?誕生の歴史と意義 

② NSTの目的・役割・活動成果 

③ 薬剤師がNSTで担う役割 

④ 輸液のカロリーを正しく知る 

⑤ 経腸栄養・経静脈栄養の選択(TPN・PPN・EN) 

⑥ 離島・僻地病院でのNST活動体験記

【褥瘡シリーズ⑦〜⑫】 

⑦ 褥瘡とは何か?原因・ステージ分類 

⑧ モイストウンドヒーリング:傷は乾かすな 

⑨ 褥瘡治療の基本的な考え方と3ステップ 

⑩ 褥瘡外用剤の解説(ゲーベン・ネグミンシュガー・ブロメラインなど) 

⑪ 創傷被覆材の選び方(ハイドロサイト・カルトスタットなど) 

⑫ 褥瘡と栄養の深い関係


薬剤師がNST・褥瘡ケアに関わることで何が変わるか

① 「カロリーが足りていない」を発見できる

「絶食でソルデム3A×3本」の処方を見た時に、「これでは258kcal、おにぎり1.5個分しかない。ビーフリードへの変更を提案しよう」と気づける薬剤師が一人いるだけで、患者さんの栄養状態が変わります。

② 褥瘡外用剤の適切な提案ができる

「黄色壊死期に浸出液が少ない創にネグミンシュガーが処方されている」——創を乾燥させすぎる可能性があります。「ゲーベンクリームの方が適切では」と提案できる薬剤師が、褥瘡ケアの質を上げます。

③ 「この褥瘡が治らない原因は栄養だ」と言える

Alb 2.5g/dL未満の患者の褥瘡が治らない時に、「管理栄養士と連携して栄養評価・介入を提案しましょう」と言える薬剤師がチームを動かします。

④ 薬物療法と栄養療法の橋渡しができる

「誤嚥が多い患者さんにACE阻害薬の嚥下改善効果を活用できないか」「消化管運動が悪い患者さんにモサプリドを提案できないか」——薬と栄養の両面から考えられるのが薬剤師の強みです。


NSTで薬剤師が発揮できる独自価値

NST専門療法士として20年以上活動してきて感じる「薬剤師ならではの強み」は3つです。

① 輸液を「栄養」として読む力 「この点滴でどのくらいのカロリーが入っているか」「アミノ酸はどれだけ入っているか」を即座に計算できるのは薬剤師の専門性です。

② 薬物と栄養の相互作用を知っている 「葉酸とメトトレキサート」「ビタミンKとワーファリン」「亜鉛とキレート剤」——栄養素と薬の相互作用を知っているのは薬剤師の強みです。

③ 処方提案の形で医師に働きかけられる 「ビーフリードへの変更を提案します」という具体的な処方提案の形でアプローチできるのは薬剤師だけです。


病棟薬剤師・NST薬剤師に伝えたいこと

私が沖永良部島の離島病院でNSTを立ち上げた時、「こんな環境でNSTなんてできるのか」と思いました。でも医師が少ないからこそ薬剤師の関わりが大切だと気づきました。

大病院でも小さな病院でも、薬剤師がNSTに関わることで:

  • 患者さんの栄養状態が改善する
  • 褥瘡が減る・治りやすくなる
  • 在院日数が短縮する
  • 医療の質が上がる

「薬剤師がいてよかった」と思ってもらえる場面のひとつが、NST・褥瘡ケアへの関わりです。


まとめ:薬剤師に伝えたい3つのこと

① 輸液のカロリーを知ること ソルデム3A×3本=258kcal。これを知っているだけで、絶食患者への適切な提案ができます。

② 褥瘡の「色」と「ステージ」を読むこと 黒→黄→赤→白の流れと、それぞれの病期に合った外用剤・被覆材を知ること。

③ 「栄養なしに治癒なし」を伝えること Alb 2.5g/dL未満の褥瘡患者に、どんな処置をしても治癒は困難。管理栄養士・NSTとの連携を積極的に促すこと。


最後に

NST・褥瘡シリーズを通じて伝えたかったのは「薬剤師はもっと栄養と創傷ケアに関われる」ということです。

「薬の専門家」にとどまらず、「患者の栄養状態を読み、チームに提言できる薬剤師」を目指してほしいと思います。

13回、最後までお読みいただきありがとうございました!


全13記事一覧

① NSTとは何か?誕生の歴史と意義 

② NSTの目的・役割・活動成果 

③ 薬剤師がNSTで担う役割 

④ 輸液のカロリーを正しく知る 

⑤ 経腸栄養・TPN・PPNの選択 

⑥ 離島・僻地病院でのNST活動体験記 

⑦ 褥瘡とは何か?原因・ステージ分類 

⑧ モイストウンドヒーリング 

⑨ 褥瘡治療の基本的な考え方 

⑩ 褥瘡外用剤の解説 

⑪ 創傷被覆材の選び方 

⑫ 褥瘡と栄養の深い関係 ⑬ 総まとめ(本記事)


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承認スキル:5種類の承認で相手の自己肯定感を高める【コーチングシリーズ⑦】

 「仕事をしていて一番つらいことの一つは、誰にも認めてもらえないこと」——これはスタッフにも患者さんにも共通する感情です。今回はコーチングの「承認スキル」を解説します。


承認とは何か

承認とは、相手の変化や成長、存在そのものを、ありのままに認めて、相手に伝えることです。

「誰かに認めてもらいたい」——これは人間の根本的な欲求です(マズローの欲求5段階説の第4段階:承認欲求)。

この承認欲求が満たされることで、人は次の「自己実現」へと向かう力を得ます。

承認は「心の栄養・心のビタミン」です。


「褒める」と「勇気づけ」の決定的な違い

アドラー心理学では「褒めない、叱らない。勇気づけをする」と言われます。

この「褒める」と「勇気づけ」の違いが重要です。

褒める(縦の関係・YOUメッセージ)

「綺麗に掃除できたね。偉いです!」 「売上目標達成したね。良くやった!」

褒めるは「事実+評価」。主語が「あなた(YOU)」になります。評価する側とされる側という縦の関係になります。

勇気づけ(横の関係・Iメッセージ)

「わかりやすい資料ですね。助かります!」 「元気な挨拶してくれるね。嬉しいよ!」

勇気づけは「事実+Iメッセージ(私の感情)」。相互尊敬・相互信頼の横の関係から生まれます。

アドラーの言葉:

「人は貢献感を感じ、自分に価値があると思える時にだけ勇気を持つことができる」


勇気づけの3兄弟

最も万能な承認の言葉は、実はシンプルな3つです。

  • 「ありがとう!」
  • 「嬉しい!」
  • 「助かった!」

これが「勇気づけ3兄弟」です。

難しいことを言わなくていい。この3つを日常的に使うだけで、職場の雰囲気は大きく変わります。


5種類の承認

承認には5つの種類があります。

① 結果承認 生み出した結果を承認する。 「先月のHbA1cが改善しましたね!」

② プロセス承認(過程承認) 結果に至るまでのプロセスや苦労を承認する。失敗したときに特に効果的。 「毎日頑張って来てくれてましたよね。その積み重ねが確実に出てきています」

③ 行動承認 具体的な行動を承認する。 「毎日薬を飲み続けているんですね」

④ 意識承認 まだ行動には出ていないが、意識していることを承認する。 「薬を飲もうとしていることが、もう大事な一歩ですね」

⑤ 存在承認 相手の唯一性・存在そのものを承認する。承認の中で最も重要。 「○○さんに来てもらえて、私も元気をいただいています」


存在承認:在宅・終末期で特に重要

5種類の中で最も大切なのが「存在承認」です。

医療の最前線——在宅や終末期の現場では特に重要です。

利用者さん:「いつもすまんなぁ。ワシなんか人に世話をかけてばっかりで、何の役にも立たん」

薬剤師:「そんなことありませんよ。○○さんに来てもらいたくて、私はお薬を準備しています。○○さんにお会いして、元気をいただいているんですよ。」

利用者さん:「…ありがとう」

「あなたがここにいていいんだ」という安心感——これが存在承認の力です。


承認の示し方:うなずき・あいづち・リフレイン

承認は言葉だけでなく、非言語でも伝えられます。

うなずき 相手の話をしっかり聴き、うなずく。うなずきがない相手に話すことはとても苦痛に感じてしまいます。うなずくだけでも相手は認めてもらっていると感じられます。

あいづち 「うん」「なるほど」「そうなんですね」「いいですね」など。コツは少なすぎず多すぎず。口癖のようにならないよう、バリエーションを持つ。

リフレイン(オウム返し) 相手の言葉をそのまま繰り返したり、キーワードのみを繰り返す。


まとめ

  • 承認とは相手の変化・成長・存在をありのままに認めて伝えること
  • 「褒める(縦・YOU)」より「勇気づけ(横・I)」が強力
  • 勇気づけ3兄弟:「ありがとう」「嬉しい」「助かった」
  • 5種類の承認:結果・プロセス・行動・意識・存在
  • 存在承認が最も重要。「あなたがいていい」という安心感を届ける

次回は「質問スキル:相手の可能性を引き出す効果的な質問とは」を解説します。


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傾聴スキル⑥ 

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2026年7月5日日曜日

傾聴スキル:「心で聴く」3つのレベルと実践法【コーチングシリーズ⑥】

 コーチングの3大基本スキルは「傾聴・承認・質問」です。今回はその中でも最も基本となる「傾聴」について解説します。傾聴は「ただ聞く」ことではありません。


傾聴には3つのレベルがある

レベル1:耳で聞く 耳で音だけを聞く。BGMとして聞く。話に食いつかない。

レベル2:頭で聞く 頭でいろいろ判断し、自分の考えをもって聞く。反対意見を持ったりして(しまう)。

レベル3:心で聴く(本当の傾聴) 心を一緒に動かして聴く。

相手の眼になり、耳になり、心になって、 相手と同じ目で見て、同じ耳で聴いて、同じ心で感じようと思って 相手の話を聴くこと。

コーチングで求められるのはこのレベル3です。


傾聴の4つのポイント

① 先入観・固定観念の排除(ゼロポジション)

「この患者さんはいつも薬を飲まない人だから…」「この部下は問題を起こすから…」という固定観念を取り払う「ゼロ」の状態で聴く。

自分のフレームを取り払うことが、相手を正しく理解する最初のステップです。

② 最後まで聴く

自分の話したいことは脇に置く。相手が話し終わるまで遮らない。これだけで相手の信頼を大きく得ることができます。

③ うなずき・あいづち

相手が話しやすくなるような、うなずき・あいづちをしましょう。 ポイントは相手の話し方に合わせた深さ・同じくらいの頻度。「うんうんうん」と連続したり、口癖のように「なるほどなるほど」を繰り返すのは逆効果です。バリエーションを持って。

④ 共感(同情・同感と区別する)

意味
同情かわいそうに思うこと
同感自分の経験から解釈すること
共感他人の気持ちを理解しようと努めること

「かわいそうに」と上から見るのでも、「自分もそうだったから」と自分の経験を押し付けるのでもなく、「あなたはそう感じているんですね」と相手の気持ちに寄り添うのが共感です。

⑤ ペーシング

相手の身振りや動作、表情、話すスピードに合わせること。人は「自分と似ている」と感じる相手に親近感を覚えます。


傾聴を妨げる「D言葉」

傾聴を妨げる「D言葉」があります。

だから」「だけど」「だったら」「だって」「でも」「ですから」「どうせ

相手との会話の中でD言葉を使うと、相手は自分を否定されたと感じ、話を傾聴してもらえないという不信感を持つようになります。

代わりに「YES+BUT法」を使う:

「そうですね(YES)」→ 相手の気持ちを受け取る 「しかし…」(BUT)→ 自分の考えを添える 「どうでしょうか?」→ 確認する

この順番で話すと、否定的なニュアンスを和らげながら自分の意見を伝えられます。


傾聴の3つの具体スキル

ミラーリング 相手の姿勢や仕草を鏡のように合わせる

ペーシング 相手の声のトーンや話すペースを合わせる

バックトラッキング(オウム返し) 相手の言葉をそのまま繰り返したり、時おり要約して返す

バックトラッキングは特に強力です。話し手が自分の言葉を聞き直すことで、混沌としていた考えが整理され、新たな気づきが生まれます。

例: 患者さん:「最初の1週間は頑張って散歩していたけど、雨が続いてやめちゃいました。やっぱりだめですね」

バックトラッキングA:「雨が続いてやめちゃったんですね」(ネガティブを強調) バックトラッキングB:「運動のよさを実感された時期もあったんですね」(ポジティブを強調)

バックトラッキングの仕方によって、その後の話の方向性が大きく変わります。できたことに焦点を当てることで、行動変容がより効果的になります。


「聴くということ」——詩に学ぶ傾聴の本質

グレン・ヴァン・エカレンの詩の一節を紹介します。

話を聞いてくれと言うと、あなたは忠告を始める。 私はそんなことを頼んでいない。 話を聞いてくれと言うと、問題を解決してくれようとする。 私が求めているのは、そんなことではない。 聞いてください。ただ私の話を聞くだけでいい。

患者さんもスタッフも、まず「聴いてほしい」と思っています。すぐにアドバイスや解決策を出そうとするより、まず「聴く」——この姿勢が、信頼関係の基盤になります。


まとめ

  • 傾聴の3レベル:耳で聞く→頭で聞く→心で聴く(コーチングはレベル3)
  • 4つのポイント:先入観排除・最後まで聴く・うなずき・共感
  • D言葉(だから・だけど・でも…)は傾聴を妨げる
  • ミラーリング・ペーシング・バックトラッキングが具体スキル
  • まず「聴く」——これが信頼関係の土台

次回は「承認スキル:5種類の承認で相手の自己肯定感を高める」を解説します。


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信頼関係の作り方⑤ 

病院薬剤師の仕事ブログ(hosphar)

2026年7月4日土曜日

信頼関係の作り方:尊敬・安心感・味方の3つの柱【コーチングシリーズ⑤】

 コーチングの前提となるのが「信頼関係」です。どれだけスキルが高くても、信頼関係がなければコーチングは機能しません。今回は信頼関係を作る3つの柱を解説します。


信頼関係の3つの柱

コーチングで信頼関係を作るには、3つの要素が必要です。

① 尊敬(Respect) 相手をリスペクトから入る。「尊敬しろ」ではなく、技術として考える。尊敬できるところを探してみる。そこから態度・声に出してみる。人間関係が上手くいきやすくなります。

② 安心感(Safety) コントロールではなく「安心感」があるかどうかが大切です。「正論・説得・おどす・物でつる・泣き落とし」などによるコントロールではなく、安心感を与えられているかを問い直しましょう。

③ 味方(Being on their side) 自分は相手にとって味方だと思ってもらうこと。相手の考え方を「受け入れる」のではなく「受け止める(共感する)」。目標を共有する。その人が大切にしていることを大切にする。

相手は、信頼されたら、裏切りにくくなる。


のび太くんとお母さんに学ぶ「信頼なき関係」

コーチングを語る時によく使う例が「ドラえもん」です。

のび太くんとお母さんの関係を「信頼関係の3つの柱」で見てみましょう。

  • 尊敬 ×:上下の関係になっている
  • 安心感 ×:「勉強しなさい!」はコントロール
  • 味方 ×:のび太の考えを受け止めていない

これでは、いくら「コーチング的な質問」をしても心が開きません。

コーチングの本質は「正そうとするな!わかろうとせよ!」です。


ペーシング:空気を合わせる技術

信頼関係を素早く築く技術が「ペーシング」です。

ペーシングとは、相手にペースを合わせること——相手との間に「共通点」を見つけたり、相手の話し方や表情など、いろいろなことを意識的に合わせていくことです。

ペーシングできること:

  • ①視線を合わせる(視線の高さを合わせる)
  • ②表情・感情・あいづちのスピード・言葉
  • ③話し方(スピード・トーン・テンション)
  • ④動き・仕草(身振り・手振り)

人は自分と似た人に安心する。

共通点探しで、相手に「安心感」をプレゼントしましょう。


タイプ別コミュニケーション:みんなに同じ声かけをしない

2015年に突然、薬局長に任命された私が最初に悩んだことがあります。

「みんなに響く言葉を掛けたい!」

でもすぐに気づきました——スタッフには、いろんなタイプがいると。

  • 給料重視のスタッフ
  • 仕事のやりがい・満足度重視のスタッフ
  • 働きやすさ重視のスタッフ
  • 休みの取りやすさ重視のスタッフ
  • 人間関係重視のスタッフ

同じ声かけでは、全員には届きません。「松岡修造さん」のような情熱的なコミュニケーションが全員に響くわけでもない。

そこで活用できるのが「ソーシャルスタイル」によるタイプ別コミュニケーションです。


ソーシャルスタイルの4タイプ

1968年に社会学者David Merrillらが提唱した「Social Style(ソーシャルスタイル)」を使い、外から見えるその人の態度を4タイプに分類できます。

「自己主張の強弱」と「感情表出の強弱」の2軸で分類します。

コントローラー型 人に指示されるのが大嫌いな行動派。論理と結果を重視。短く簡潔に要点を伝える。

プロモーター型 注目されるのが大好きな社交家。人との関わりを楽しむ。明るく話しかけ、アイデアを認める。

アナライザー型 計画・分析を重視し、我が道を行く勉強家。データと根拠を示す。論理的な説明を好む。

サポーター型 和を好む気配り上手。人間関係を大切にする。共感と安心感を与える話し方が有効。


医療での実践:タイプ別に声かけを変える

コントローラー型の患者さんへ: 「端的に言うと、○○の薬を飲むと△△%改善します」

プロモーター型の患者さんへ: 「一緒に頑張りましょう!きっとできますよ!」

アナライザー型の患者さんへ: 「この薬の作用機序はこういう仕組みで、データ的には○○%の効果があります」

サポーター型の患者さんへ: 「ご家族のためにも、一緒にゆっくり考えていきましょうね」


まとめ

  • 信頼関係の3つの柱:尊敬・安心感・味方
  • コーチングの本質:「正そうとするな、わかろうとせよ」
  • ペーシング:相手に合わせることで素早く安心感を与える
  • タイプ別コミュニケーション:同じ声かけでは全員に届かない
  • ソーシャルスタイル4タイプ:コントローラー・プロモーター・アナライザー・サポーター

次回は「コーチングの3大基本スキル:傾聴・承認・質問の全体像」を解説します。


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心理的安全性とは④ 

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