2018年8月3日金曜日

■睡眠薬の副作用と対策(詳細版)

①眠気
睡眠薬は夜の間だけに効果が発揮されることが理想ですが、効きすぎてしまうと翌朝まで眠気が続いてしまうことになります。これを「持ち越し効果(hung over)」といいます。
・強い眠気で朝起きれない
・午前中にボーっとして集中できない
・気が緩むと居眠りをしてしまう
といったことになってしまいます。
眠気の副作用は、作用時間が長い睡眠薬でよく認められます。中間型や長時間型といった睡眠薬では、1日たっても体から薬が抜けきりません。このため少しずつお薬がたまっていき、眠気が生じやすくなってしまいます。
持ち越し効果が認められた場合、
・睡眠時間をしっかりととっているかを確認する
・薬を調整する
このステップを踏んでいきます。薬の調整としては、
・薬の量を減らす
・作用時間の短い睡眠薬に変更する
のどちらかになります。



②ふらつき
睡眠薬には筋弛緩作用もありますので、それが悪い方に働くとふらつきといった副作用になります。
肩が凝ってしまったり、身体に緊張が強い場合はむしろ良い方向に発揮されます。
ですが特に高齢者などでは、足腰が弱っている方に筋弛緩作用が強くでてしまうと、ふらついてしまって転倒のリスクになってしまいます。夜中にトイレで目が覚めたときに転倒してしまい、骨折してしまうこともあります。
ふらつきが出やすいのも、作用時間が長い睡眠薬です。筋弛緩作用が強いお薬には特に注意が必要です。
ふらつきの対策としては、
・薬の量を減らす
・作用時間の短い睡眠薬に変更する
・筋弛緩作用の弱い睡眠薬に変更する
となります。ベンゾジアゼピン系よりも非ベンゾジピン系の方が、ふらつきの副作用は少ないです。


③健忘
睡眠薬を服用した後に、記憶がなくなってしまうという副作用が生じることがあります。
記憶はなくなっているというと怖いかと思いますが、周囲からみると普通にいつも通りのあなたの行動をとっています。友達に電話していたり、お菓子を食べ散らかしていたりといったことで、翌朝になってその痕跡をみつけてビックリします。
このような「物忘れ」を、「前向性健忘」といいます。睡眠薬を服用して以降(前向き)の記憶を忘れてしまうのです。
このような状態になるのは、睡眠薬が中途半端な覚醒状態にしてしまうことで、海馬を中心とした記憶に関する脳の機能が低下してしまうためと考えられています。
ですから前向性健忘は、睡眠薬が急激に作用する時に起こりやすい副作用になります。
・作用時間が短い睡眠薬
・効果が強い睡眠薬
・睡眠薬の量が多いとき
・アルコールと睡眠薬を併用したとき
 この前向性健忘の対策としては、
・寝る直前に睡眠薬を服用すること
・絶対にアルコールと一緒に睡眠薬を飲まない
になります。それでも認められる場合は、
・薬の量を減らす
・作用時間の長い睡眠薬に変更する
となります。


④反跳性不眠(離脱症状)
睡眠薬は、長期間服用していると体に慣れてしまいます。その結果、お薬としての効果は薄れているのに、薬を減らすと不眠が強まってしまうことがあります。このような状態を反跳性不眠といいます。睡眠薬の離脱症状とも言えます。「睡眠薬がないと眠れない」と勘違いしてしまうことが多いのですが、薬がやめられないのは反跳性不眠が原因であることも少なくありません。
このような状態になると、睡眠薬の量は増えないけれどもやめられなくなってしまいます。このことを、常用量依存といったりします。
このように依存しやすい睡眠薬としては、
・バルビツール酸系やベンゾジアゼピン系
・作用時間が短い睡眠薬
・効果が強い睡眠薬
になります。ですから対策としては、
・睡眠に良い生活習慣を意識する
・依存しにくいタイプの睡眠薬を使う
・作用時間が長い睡眠薬にする
・できるだけ少量・短期間で使う
・アルコールと一緒に服用しない
 何よりも大切なのは、睡眠に良い生活習慣を意識して取り組むことです。薬になるべく頼らず、自然な眠気を大切にしていきます。睡眠薬のチョイスにあたっては、できれば依存しにくいタイプの睡眠薬を使っていきます。一過性の不眠であれば作用時間の短い睡眠薬でもよいですが、慢性不眠であれば作用時間の長い睡眠薬でのコントロールが望まれます。
 こういった睡眠薬の依存を心配されている方は少なくありませんが、皆さんが何気なく摂取しているアルコールに比べたらマシです。
 睡眠薬の用法と用量を守って服用していれば、過度に心配することはありません。




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