2018年7月26日木曜日

■睡眠薬(処方薬)の種類とその構造

睡眠薬(処方薬)は、効果によって大きく4種類のタイプに分けられます。

≪ベンゾジアゼピン系≫
 前に述べたように、医師から処方される睡眠薬として一般的なタイプです。脳の神経活動を全般的に抑えることで眠りやすくする特徴を持ち、日本では約50年前から使われています。作用の持続時間が短いものから長いものまでいろいろな種類があることから、睡眠薬の中では比較的ポピュラーなタイプのものといえます。しかし、ふらつきなどの副作用が出やすい、依存性がやや高いというデメリットがあるため、慎重に飲む必要があります。

≪非ベンゾジアゼピン系≫
 ベンゾジアゼピン系と同様に、不眠改善作用に特化したタイプです。筋弛緩作用などが弱いため、ベンゾジアゼピン系の薬に見られるふらつきや転倒の危険性、依存性が緩和されているため、高齢者を中心に処方されています。

≪メラトニン受容体作動薬≫
 「メラトニン」という体内時計のリズムを整え、睡眠を促す働きを持つホルモンと同じような作用があるタイプの薬です。副作用の心配が少なく、総睡眠時間を増やす作用が期待できるのが特徴です。

≪オレキシン受容体拮抗(きっこう)薬≫
 睡眠からの目覚めを促す「オレキシン」というホルモンの働きを抑制することで、眠りやすい体内環境を作り出すことを目的としたタイプです。入眠のスムーズさに加え、中途覚醒を防ぐ効果も含まれています。日本では2014年から使われ始めた、比較的新しいタイプの睡眠薬として知られています




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2018年7月25日水曜日

■自然な眠気を強める睡眠薬

近年では、睡眠に関係する生理的な物質を調整するお薬が発売されています。
現在発売されているのは、2つの物質に関係するお薬です。
・メラトニン受容体作動薬:ロゼレム
・オレキシン受容体拮抗薬:ベルソムラ

ロゼレムは、体内時計のリズムを司っているメラトニンの分泌を促すお薬になります。

メラトニンは20時頃から分泌され、深夜12時頃をピークに、明け方になると光をあびて消えていくという物質です。年齢を経るごとに分泌量が減少するといわれていて、ロゼレムはこのメリハリをつけるお薬です。

ベルソムラは、私たちが覚醒状態があるときに働いているオレキシンという物質の働きをブロックし、睡眠状態へスイッチを切り替えていくようなお薬です。

どちらも生理的な物質に作用するため、依存性が極めて少ないといわれています。その一方で強引さがないため、効果や副作用に個人差が大きいという特徴があります。



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■脳の機能を低下させる睡眠薬

現在も中心となって使われている睡眠薬で、睡眠導入剤というとこのタイプになるかと思います。

・ベンゾジアゼピン系
・非ベンゾジアゼピン系
・バルビツール酸系

 この3つのタイプがありますが、いずれもGABAの働きを強めることで催眠作用がもたらされます。 GABAは神経間の情報を伝えている物質(神経伝達物質)で、GABAが働くことで神経細胞の興奮が抑制されます。

 バルビツール酸系は、量が多くなるとGABAを介した間接的な働きだけでなく、直接神経細胞にも働いてしまいます(cl-チャネル)。このため中枢神経を抑制しすぎるリスクが高く、安全性が低いため使われなくなりました。

 ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系の2つが主に使われています。どちらもGABA-A受容体のベンゾジアゼピン結合部位に作用するのですが、この結合部位はω1とω2という細かなタイプ(サブタイプ)に分かれています。

・ベンゾジアゼピン系:ω1+ω
・非ベンゾジアゼピン系:ω1 

それぞれのサブタイプは、

ω1:催眠作用
ω2:筋弛緩作用・抗不安作用

このような作用が期待できます。
このため非ベンゾジアゼピン系は、筋弛緩作用(ふらつき)が少ないお薬ということになります。
これらの脳の機能を低下させるタイプのお薬は計算がある程度でき、作用時間・強さから睡眠薬を選んでいきます。




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2018年7月24日火曜日

■睡眠薬の作用メカニズムから2つに分類


¢睡眠薬をその作用メカニズムの違いから2つに分けることができます。

¢脳の機能を低下させる睡眠薬
⇒ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系・バルビツール酸系

¢自然な眠気を強くする睡眠薬
⇒メラトニン受容体作動薬・オレキシン受容体拮抗薬



¢現在使われている睡眠薬は、脳の機能を低下させる睡眠薬が中心になります。大脳辺縁系や脳幹網様体と呼ばれる部分の神経活動を抑えることで、催眠作用をもたらすお薬です。 

¢それに対して近年は、自然な眠気を強くする睡眠薬が発売されています。私たちの睡眠・覚醒の周期に関係する生理的な物質の働きを調整し、睡眠状態に仕向けていくお薬です。

¢の機能を低下させる睡眠薬の睡眠薬の効き方は、「疲れきって寝てしまった」時のような形です。脳の機能を低下させるので、強引さのある効き方をします。

¢それに対して自然な眠気を強くする睡眠薬は、本来の眠気を強める形になります。ですから、効果が人によっても異なります。



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■睡眠薬(精神導入剤)とは?

¢こころの病気では、睡眠が不安定になってしまうことは非常に多いです。
¢睡眠が十分にとれないと心身の疲労が回復せず、集中力低下や自律神経症状などにつながってしまいます。ですから睡眠を整えることは、様々な病気の治療で共通して重要になります。 
¢睡眠薬は、睡眠導入剤や眠剤などとも呼ばれたりしますが、現在5種類のメカニズムのお薬が発売されています。

 
¢非ベンゾジアゼピン系
超短時間型:マイスリ
・アモバン・ルネスタ
¢ベンゾジアゼピン系
超短時間型:ハルシオン
短時間型:レンドルミン・エバミール
/ロラメット・リスミー・デパス・サイレース/ロヒプノール
中間型:ユーロジン・ベンザリン
/ネルボン
長時間型:ドラール
¢メラトニン受容体作動薬:ロゼレム
¢オレキシン受容体拮抗薬:ベルソムラ
¢バルビツール酸系:ラボナ・イソミタール
バルビツール酸系は古いお薬で安全性が低く、使われることは稀。



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