2026年5月31日日曜日

なぜ医療現場で“報告できない空気”が生まれるのか?|病院薬剤師が考える心理的安全性と医療安全

 

はじめに

医療安全において、

「報告・連絡・相談(報連相)」

の重要性はよく言われます。

しかし実際の現場では、

「これくらいなら言わなくてもいいか」
「怒られそうだから後にしよう」
「忙しそうだから今はやめておこう」

と、報告をためらってしまうことはないでしょうか。

病院で働いていると、

“言えなかったこと”が後から問題になる

場面に出会うことがあります。

そしてその背景には、多くの場合、

心理的安全性の低さ

があります。

今回は、病院薬剤師という立場から、

なぜ医療現場で“報告できない空気”が生まれるのか

について考えてみたいと思います。


この記事でわかること

この記事では、

・報告できない空気が生まれる理由
・心理的安全性との関係
・医療安全への影響
・病院薬剤師としてできる工夫

について考えていきます。


「報告しない人」が悪いのか?

問題が起こると、

「なぜ報告しなかったのか」

という話になります。

もちろん、報告は重要です。

しかし、

“報告できない環境”

がある場合も少なくありません。

例えば、

  • 報告すると強く叱責される
  • ミスを責められる
  • 嫌味を言われる
  • 「また?」という態度を取られる

こうした経験が積み重なると、人は徐々に話さなくなります。

つまり、

個人の問題ではなく、組織文化の問題

でもあるのです。


医療現場でよくある「言えない理由」

1.怒られそうだから

最も多い理由かもしれません。

「前に強く言われた」
「怖い先輩がいる」
「機嫌が悪そう」

そんな理由で相談を躊躇することがあります。

しかし、

医療では“確認不足”が患者さんの不利益につながります。

本来は、

“怒られるリスク”より“患者安全”が優先

されるべきです。


2.忙しそうだから

医療現場は忙しいです。

薬剤部も例外ではありません。

「今聞くのは悪いかな」
「落ち着いてからにしよう」

と思っているうちにタイミングを逃す。

これは誰にでも起こり得ます。

だからこそ、

忙しい時ほど、

「何かあれば言ってね」

という空気づくりが重要になります。


3.自分のミスを認めたくない

人は誰でも失敗を隠したくなります。

これは自然な心理です。

特に、

「責められる文化」

では、その傾向が強まります。

しかし、

インシデント報告は、

犯人探しではなく再発防止

のためにあります。

ここを組織全体で共有する必要があります。


“報告できない空気”が生むリスク

小さな違和感を言えない職場では、

大きな事故が起こりやすくなります。

例えば、

  • 疑義照会の迷い
  • 投与量への違和感
  • アレルギー歴確認不足
  • 配薬時の気づき

本来なら、

「ちょっと確認したい」

の一言で防げることがあります。

しかし、

相談しにくい空気があると、

その一言が消えます。

そして、

“沈黙”がインシデントにつながる

ことがあります。


病院薬剤師として意識したいこと

1.相談しやすいリアクションをする

誰かが相談してきた時、

最初の反応が重要です。

×「何で今?」
×「そんなことも分からない?」

ではなく、

○「相談ありがとう」
○「確認してくれて助かる」

この積み重ねが心理的安全性になります。


2.ミスより背景を考える

「誰が悪いか」

ではなく、

「なぜ起こったか」

を考える。

忙しさ、人員、手順、環境など、

背景に目を向けることで再発防止につながります。


3.自分から声をかける

新人や若手ほど、

自分から相談しにくいことがあります。

だからこそ、

「困ってない?」
「何か気になることある?」

と声をかけることが重要です。


現場で感じること

病院で働いていると、

「もっと早く相談してくれたら防げた」

と思う場面があります。

一方で、

「確認してくれてありがとう」

の一言が、次の相談につながった経験もあります。

医療安全は、

立派な制度だけでは守れません。

日々の小さな会話、

相談しやすい空気、

安心して報告できる関係性。

そうした積み重ねが、

患者安全につながっているのだと思います。


まとめ

報告できない空気は、

個人の問題ではなく、

組織文化の問題

でもあります。

そして、その背景には、

心理的安全性

があります。

誰でも安心して相談できる。

ミスを隠さず共有できる。

違和感を声に出せる。

そんな職場こそ、

本当に安全な医療現場なのではないでしょうか。

病院薬剤師として私自身も、

「相談しやすい人」

でありたいと思っています。

皆さんの職場では、安心して報告できる空気がありますか?



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