2026年6月30日火曜日

コーチングとは何か?医療従事者が知っておくべき基本【コーチングシリーズ①】

 アンガーマネジメントシリーズに続いて、今回から「コーチングシリーズ」をお届けします。

「コーチングって怪しくない?」「スポーツや企業の話でしょ?」——そう思っている医療従事者の方もいるかもしれません。でも実は、コーチングは患者さんとの服薬指導や、スタッフとのコミュニケーションに今すぐ使える、非常に実践的なスキルです。


コーチングとは

コーチングとは、知識やスキルを一方的に教えるのではなく、相手の中にある「やる気・能力・アイディア・可能性・行動力」を引き出し、自分で考え行動する「自発性」を促すコミュニケーションスキルです。

相手が目指すゴール(目標達成)に向けてサポートするのがコーチの役割です。

コーチは「クライアントには無限の可能性があり、夢や目標達成に必要なものはすべて持っている」ということを100%信じて、相手の話を最後まで否定せずにとことん聴きます。


なぜ医療でコーチングが必要なのか

こんな患者さん、いませんか?

  • 「血圧が高いのに認めない」「病院でマスクを着けてくれない」
  • 「タバコやめるぐらいやったら、死んだ方がマシや」
  • 「一生懸命に説明しても、薬をきちんと飲んでくれない」

このような状況に医療従事者が陥りがちな対応があります。

医療従事者:「血糖値を良くするためには、
      食事はバランスよく!
      毎日運動してね!
      タバコはやめて!
      薬はきちんと飲んで!」

患者さん:(何も言わず、小さくなる…話聞いてくれよ)

知識を一方的に与える指示命令型の一方通行コミュニケーションでは、うまくいかないケースがあるのです。


双方向コミュニケーションの力

コーチングが提案するのは「双方向のコミュニケーション」です。

「行動を変えないのには、変えない理由がある」 「答えは相手の中にある」 「相手の中にある答えを引き出してあげる」

この発想に基づいて、患者さん自身に考えてもらいます。

例えば:

医療従事者:「血糖値を良くするために、
      これから気をつけていきたいと
      思っていることは何ですか?」

患者さん:「うーん、やっぱりまずは食べる量に
     気をつけないといけないんだよね。
     でも、なかなか上手くいかないんだよ。」

患者さん自身が言葉にした目標は、医療者から言われた目標よりはるかに行動に結びつきやすいのです。


自己決定感がやる気を変える

なぜ自分で決めたことの方が行動に結びつくのでしょうか。

それは「自己決定感」の力です。

何かを自分で選んだり、自分で決めたりすること——この自己決定できるかどうかは、やる気に深く関わっています。「自己決定感・自分で決めた感」が強いと内発的動機づけが高まり、自信が付くことが論文でも報告されています(『幸福感と自己決定―日本における実証研究』参照)。

指示され「やらされること」では、やる気はいまいち出ません。

自分で決めたことの方が、やる気が出る。だから成果も出やすく、仮に結果に繋がらなかったとしても自分で決めたことなので納得でき、それが「満足度・幸福度」に繋がります。


コーチングの3原則

コーチングには3つの原則があります。

① 双方向性 上から下にならないように、同じ立場で会話できる関係を作る。患者さんの話をしっかり聞き、受け取ったことを伝えたり、質問したりすることで双方向の関わりを持つ。

② 継続性 患者さんが行動を起こす・変わるまで継続的に関わる。ズレがある場合は軌道修正する。

③ 個別対応 その人に合わせたコミュニケーションを行うことで、スピードを高め、結果を出しやすくする。


コーチングの第一歩はスキルではなく「心の状態」

コーチングを学び始める時、多くの人がスキルを知りたがります。でも実は、**一番のベースになるのはコーチングをする「あなた自身のいい状態」**です。

元気のない医療者だったら、患者さんはがっかりします。

まずは自分が元気であること。これが土台です。

知識やスキルがどれだけあっても、あなたの状態がよくなかったら、相手の状態もつかめないし、何をしたらいいかも思いつかず、よい結果には結びつきません。

「患者さんを良くしてあげたい」という気持ち——この**Mind(心の状態)**が土台にあってこそ、Contents(内容)とDelivery(伝え方)が活きてくるのです。


まとめ

  • コーチングとは相手の中にある答えを引き出す双方向コミュニケーション
  • 指示命令では動かない患者さんも、自分で決めると動き出す
  • 「自己決定感」が内発的動機づけを高め、行動・成果につながる
  • コーチングの3原則:双方向性・継続性・個別対応
  • スキルより先に、自分自身の「心の状態」を整えることが大切

次回はコーチング・ティーチング・カウンセリングの違いを解説します。


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