「怒りは第2感情」——アンガーマネジメントシリーズでもお伝えしましたが、今回はその背景にある「ABC理論」をコーチングの文脈で深掘りします。
ABC理論とは
アルバート・エリスが提唱した認知療法の基本概念です。
- A(Activating event):出来事 遭遇する出来事。100%コントロールは不可能。
- B(Belief):受け止め方 出来事をどう受け止めるか。自分の意志のもとに生まれる。
- C(Consequence):感情 結果として生まれる感情・気持ち。
重要な発見:感情Cを生み出しているのは、出来事Aではなく受け止め方Bである
同じ出来事に遭遇しても、受け止め方が違えば、生まれる感情は全く変わります。
医療での具体例
場面:夜勤明けに急患が来た
Aさんの受け止め方:「なんでこんな時間に…最悪だ」→ C:怒り・疲弊感
Bさんの受け止め方:「よかった、私がいるタイミングで来てくれた」→ C:使命感・充実感
同じ「夜勤明けの急患(A)」でも、受け止め方(B)によって感情(C)が全く違います。
患者さんへの応用
場面:糖尿病と診断された患者さん
受け止め方①:「もう終わりだ、一生薬を飲み続けないといけない」→ C:絶望・無力感
受け止め方②:「早期発見できてよかった、今から気をつければ合併症を防げる」→ C:安心感・前向きさ
薬剤師が介入できるのは「B(受け止め方)」へのアプローチです。
「血糖値が改善してきましたね。この調子でいけば、合併症を防いで元気な生活が続けられますよ」という言葉が、患者さんのBを変え、Cを変え、次の行動を変えます。
怒りは「第2感情」
ABC理論と関連して、感情の構造を理解しましょう。
怒りは第2感情です。怒りの前には「期待」という第1感情があります。
薬を飲んでいない患者さんに怒りを感じる——その裏には「良くなってほしい」「心配している」という期待・一次感情があります。
その期待・一次感情を伝えると、相手の受け取り方が全く変わります。
「なんで薬飲んでないの!(怒り・二次感情)」 →「薬を飲んでくれないと、倒れたりしないか心配なんです(心配・一次感情)」
二次感情より一次感情を伝えることが、Iメッセージの本質でもあります。
受け止め方(B)を変えるコーチングの質問
受け止め方(B)に働きかけるコーチングの質問例:
「この状況を、違う角度から見るとどう見えますか?」 「10年後に今の状況を振り返ったら、どう見えると思いますか?」 「もし親友が同じ状況だったら、何と声をかけますか?」 「この経験から学べることは何ですか?」
視点が変わると、受け止め方が変わります。受け止め方が変わると、感情が変わります。感情が変わると、行動が変わります。
まとめ
- ABC理論:感情Cは出来事Aでなく受け止め方Bが決める
- 同じ出来事でも受け止め方次第で感情は変わる
- 医療従事者が介入できるのは患者さんのBへのアプローチ
- 怒りは第2感情——その裏の第1感情(期待・心配)を伝える
- 受け止め方を変える質問で視点を広げる
次回は「コーチングマインドチェックリスト実践編:今の自分の姿勢を点検しよう」を解説します。
講演・研修依頼について
「コーチングを活用した患者・スタッフとの信頼関係の作り方」研修を病院・薬局向けに承っています。 E-mail:toshiki.taura@gmail.com
≪関連記事≫