2018年8月7日火曜日

■漢方成分の市販睡眠薬・漢方薬のメリットとデメリット

市販の睡眠薬として発売されているものは、抗ヒスタミン薬以外としては漢方薬があります。

気持ちを落ちつける効果の期待できる生薬を配合しています。漢方薬としては、以下のようなものがあります。
・レスフィーナ
・イララック
・パンセダン


≪漢方薬のメリットとデメリット≫
 漢方薬は眠れないときに飲むのではなく、朝・昼・夜と定期的にきちんと飲むことが大切です。きちんと飲むことで、身体の不調を改善し、眠りのサイクルを取り戻して、不眠を解消していきます
 漢方薬は睡眠薬と異なり、直接的に睡眠を誘発するような働きは持っていませんが、依存性が少なく安心度は高いといえます。症状によっては体質改善と即効性を同時に得るため、漢方薬と西洋薬の併用が必要な場合もあります。漢方薬は市販されているものがありますが、飲む種類や飲み方を医師と相談のうえ、治療を進めることが理想的です。



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2018年8月6日月曜日

■抗ヒスタミン成分の市販睡眠薬

抗ヒスタミン薬としては、以下のようなものがあります。

ドリエル、ネオディ、マイレストSナイトール、グ・スリーPプロリズム、ドリーミオ、カローミン、アンミナイト

主な成分はどれも「ジフェンヒドラミン」という成分です。ジフェンヒドラミンには、脳を覚醒させる働きのヒスタミンという物質をブロックする作用があり、それによって眠気を誘う仕組みです。

この成分は、花粉症やアレルギーの治療薬にもよく用いられますが、そのような薬を不眠症でない人が飲むと「眠くて生活に支障がでる」とよく訴えます。その作用を不眠に応用したものが市販の睡眠薬です。

ですが、効果はあくまで一時的で、飲み続けると耐性がつき、全く効かなくなってしまうことがあります。




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■市販の睡眠薬(睡眠改善薬)の効果とは?

ドラッグストアなどで販売されている睡眠薬は、薬剤師がいる店舗であれば、市販が許可されているものとなります。

それらのお薬は、
・抗ヒスタミン薬:風邪薬やアレルギーのお薬の眠気を利用
・漢方薬:気持ちが落ち着く生薬を配合
のどちらかがほとんどです。

医師の処方が必要な睡眠薬と市販の睡眠薬の違いを整理すると、成分や仕組みが全く異なります。

市販薬の睡眠薬(睡眠改善薬)は、一時的な不眠状態にしか向かないということです。

 一時的な時差ぼけや生活リズムの乱れによって眠りづらくなって辛い場合、短期間の使用なら市販薬も効果が期待されます。ですが不眠が慢性化していた場合は、それを改善するほどの効果は期待できません。

 不眠の要因には様々なものが絡み、状態が慢性化してくると薬だけでの改善はできません。市販薬は、「普段は眠れている人が一時的に眠りづらくなったときに対処する薬」です。不眠で悩んでいる状態が続いている方は、病院で処方される睡眠薬でないと難しいことが多いです。




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2018年8月4日土曜日

■睡眠薬の妊娠や授乳への影響

妊娠中や授乳中は、お薬はできるだけ控えたほうが良いことは言うまでもありません。しかしながらお薬をやめてしまうと不眠がひどくなってしまい、お薬が必要になることも少なくありません。

ここでは、睡眠薬の妊娠・授乳への影響をご紹介していきます。2つの基準をご紹介したいと思います。

妊娠への影響:FDA(アメリカ食品医薬品局)薬剤胎児危険度基準 A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
B:ヒトでの危険性の証拠はない
C:危険性を否定することができない
D:危険性を示す確かな証拠がある
×:妊娠中は禁忌

授乳への影響:Hale授乳危険度分類
L1:最も安全
L2:比較的安全
L3:おそらく安全・新薬・情報不足
L4:おそらく危険
L5:危険


 妊娠への影響を考えていくにあたっては、奇形をおこしやすいか(催奇形性)薬の成分が胎児に届くことによる影響を考えていく必要があります。

 睡眠薬はこれまで、口唇口蓋裂のリスクが高くなるといわれており、FDAの基準でもDとなっていました。しかしながら因果関係がないとする報告もなされており、奇形を引き起こすリスクは低いと考えられています。 睡眠薬は、出産後に気を付ける必要があります。出生直後に離脱症状が生じてしまったり、赤ちゃんに鎮静作用が認められることがあります。産科の先生にお伝えしておけば、過度に心配しなくても大丈夫です。

 しかしながら、ハルシオンユーロジンドラールダルメート/ベノジールに関しては、FDAでは禁忌となっています。添付文章上では、有益性が上回るときのみ服用することとなっているため、禁忌ではありません。

 授乳に関しては、睡眠薬はL3に分類されているものが多いです。効果が強い睡眠薬はL4となっています。赤ちゃんに伝わることで眠気が強まり、哺乳が不十分になることがあります。赤ちゃんの成長がとまってしまうこともあるため、注意が必要です。
 以下のような対処法があげられます。
・人工乳哺育にする
・作用時間が短いものにする
・服用してからの授乳間隔をあける(服用の直前に哺乳する)
・量を減らす




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2018年8月3日金曜日

■睡眠薬の副作用と対策(詳細版)

①眠気
睡眠薬は夜の間だけに効果が発揮されることが理想ですが、効きすぎてしまうと翌朝まで眠気が続いてしまうことになります。これを「持ち越し効果(hung over)」といいます。
・強い眠気で朝起きれない
・午前中にボーっとして集中できない
・気が緩むと居眠りをしてしまう
といったことになってしまいます。
眠気の副作用は、作用時間が長い睡眠薬でよく認められます。中間型や長時間型といった睡眠薬では、1日たっても体から薬が抜けきりません。このため少しずつお薬がたまっていき、眠気が生じやすくなってしまいます。
持ち越し効果が認められた場合、
・睡眠時間をしっかりととっているかを確認する
・薬を調整する
このステップを踏んでいきます。薬の調整としては、
・薬の量を減らす
・作用時間の短い睡眠薬に変更する
のどちらかになります。



②ふらつき
睡眠薬には筋弛緩作用もありますので、それが悪い方に働くとふらつきといった副作用になります。
肩が凝ってしまったり、身体に緊張が強い場合はむしろ良い方向に発揮されます。
ですが特に高齢者などでは、足腰が弱っている方に筋弛緩作用が強くでてしまうと、ふらついてしまって転倒のリスクになってしまいます。夜中にトイレで目が覚めたときに転倒してしまい、骨折してしまうこともあります。
ふらつきが出やすいのも、作用時間が長い睡眠薬です。筋弛緩作用が強いお薬には特に注意が必要です。
ふらつきの対策としては、
・薬の量を減らす
・作用時間の短い睡眠薬に変更する
・筋弛緩作用の弱い睡眠薬に変更する
となります。ベンゾジアゼピン系よりも非ベンゾジピン系の方が、ふらつきの副作用は少ないです。


③健忘
睡眠薬を服用した後に、記憶がなくなってしまうという副作用が生じることがあります。
記憶はなくなっているというと怖いかと思いますが、周囲からみると普通にいつも通りのあなたの行動をとっています。友達に電話していたり、お菓子を食べ散らかしていたりといったことで、翌朝になってその痕跡をみつけてビックリします。
このような「物忘れ」を、「前向性健忘」といいます。睡眠薬を服用して以降(前向き)の記憶を忘れてしまうのです。
このような状態になるのは、睡眠薬が中途半端な覚醒状態にしてしまうことで、海馬を中心とした記憶に関する脳の機能が低下してしまうためと考えられています。
ですから前向性健忘は、睡眠薬が急激に作用する時に起こりやすい副作用になります。
・作用時間が短い睡眠薬
・効果が強い睡眠薬
・睡眠薬の量が多いとき
・アルコールと睡眠薬を併用したとき
 この前向性健忘の対策としては、
・寝る直前に睡眠薬を服用すること
・絶対にアルコールと一緒に睡眠薬を飲まない
になります。それでも認められる場合は、
・薬の量を減らす
・作用時間の長い睡眠薬に変更する
となります。


④反跳性不眠(離脱症状)
睡眠薬は、長期間服用していると体に慣れてしまいます。その結果、お薬としての効果は薄れているのに、薬を減らすと不眠が強まってしまうことがあります。このような状態を反跳性不眠といいます。睡眠薬の離脱症状とも言えます。「睡眠薬がないと眠れない」と勘違いしてしまうことが多いのですが、薬がやめられないのは反跳性不眠が原因であることも少なくありません。
このような状態になると、睡眠薬の量は増えないけれどもやめられなくなってしまいます。このことを、常用量依存といったりします。
このように依存しやすい睡眠薬としては、
・バルビツール酸系やベンゾジアゼピン系
・作用時間が短い睡眠薬
・効果が強い睡眠薬
になります。ですから対策としては、
・睡眠に良い生活習慣を意識する
・依存しにくいタイプの睡眠薬を使う
・作用時間が長い睡眠薬にする
・できるだけ少量・短期間で使う
・アルコールと一緒に服用しない
 何よりも大切なのは、睡眠に良い生活習慣を意識して取り組むことです。薬になるべく頼らず、自然な眠気を大切にしていきます。睡眠薬のチョイスにあたっては、できれば依存しにくいタイプの睡眠薬を使っていきます。一過性の不眠であれば作用時間の短い睡眠薬でもよいですが、慢性不眠であれば作用時間の長い睡眠薬でのコントロールが望まれます。
 こういった睡眠薬の依存を心配されている方は少なくありませんが、皆さんが何気なく摂取しているアルコールに比べたらマシです。
 睡眠薬の用法と用量を守って服用していれば、過度に心配することはありません。




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