2016年8月30日火曜日

■社会不安障害(SAD)の薬物療法

SADは、発症年齢が早く、長年に渡り日常の社会生活が障害されてしまうため、早期に治療を行うことが重要で、薬物療法を基本に認知行動療法を平行して行う。

【薬物療法】
≪抗うつ薬:SSRI
・エスシタロプラム(レクサプロ)
・パロキセチン(パキシル)
・フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)
SAD治療の第一選択薬。
再発予防のため、維持治療を1年以上することが望ましい。

SNRI
・ベンラファキシン
WFSBPガイドラインにおける一次治療薬。
『社会不安障害』の適応は無い。

≪ベンゾジアゼピン系≫
・クロナゼパム
・ロフラゼプ
不安症状が強い場合に頓服またはSSRIと併用する。
短期間の使用が望ましい。
『社会不安障害』の適応は無い。

≪β遮断薬≫
・プロプラノロール
頓服で用いる。
緊張場面や恐怖状況における動悸や発汗や震戦を抑える。
『社会不安障害』の適応は無い。



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2016年8月26日金曜日

■社会不安障害(SAD)とは!?

 社会不安障害(social Anxiety DisorderSAD)は、人前で不安や恐怖を過大に感じ、次第にその場面を避けようとする疾患です。発症年齢が10歳代半ばと早く、不安障害やうつ病やアルコール依存などの精神疾患が多く併存します。
 長年にわたり日常の社会生活が障害され、進学・就業・昇進・結婚などに大きな影響を及ぼします。
 SADは、自然治癒が困難なため、早期にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などによる治療を行うことが重要です。

【不安・恐怖を感じ回避する状況】
・人前で話す。
・人と接する
・緊張から顔が赤くなる、汗をかく
・人前での食事や会食
・お茶を出す
・名刺交換をする
・人前で字を書く
・他人の視線を感じる
・自分のお腹が鳴る
・電話の応対
・公共のトイレで用を足す

【不安や恐怖に伴い、日常生活に差し障る身体症状を発症】
・顔面の紅潮、蒼白
・息苦しさ、吐き気
・震戦
・パニック発作
・声の震え、口の渇き
・動悸、発汗
・胃腸の不快感、下痢

【原因】
 SADは、セロトニンの異常から、恐怖の認知や不安の表出を司る脳の扁桃体が過剰に興奮し、発症すると言われています。偏桃体の過剰興奮から不安や恐怖を喚起する思考が形成され、実際に社交場面や対人場面に遭遇した際、不安や恐怖を感じ、身体症状が現れます。その時の経験が、さらに思考を増幅し悪循環が生じます。



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2016年8月24日水曜日

■ルンバールの適応と禁忌

【ルンバールの適応】
ルンバールが適応となるのは主に脳疾患や神経疾患です。これらの疾患の発症時には、髄液の値(圧・蛋白・糖など)が変化するために、髄液を採取し検査することで、病気の判別を行います。なお、一般的に適応となるのは以下の疾患です。
・髄膜炎
・くも膜下出血
・クモ膜下腔閉塞
・脳腫瘍
・特発性頭蓋内圧亢進症
・ギランバレー症候群
・多発性硬化症
・神経梅毒
・神経ペーチェット病
また、上記の疾患の判別だけでなく、場合によっては抗癌剤の髄注や脊髄造影のための造影剤注入の際にも行われます。
 
【ルンバールの禁忌】
・頭蓋内圧亢進が著しい場合(脳ヘルニア(大後頭孔ヘルニア)をきたすような頭蓋内圧亢進のみ禁忌)
・著しい出血傾向のある場合
・穿刺部位に感染巣がある場合
・脊髄の動静脈奇形がある場合
中でも気をつけなければいけないのが、頭蓋内圧が亢進している場合です。腫瘍や出血、膿瘍などによって頭蓋骨の中が圧迫された状態を「頭蓋内圧亢進」と言い、髄液を採取することで、脳圧が一気に下がり、大後頭孔を通って脳が外に飛び出す「脳ヘルニア」を発症する可能性があります。
ただし、髄膜炎などで頭蓋内圧が亢進している場合でも、腫瘍や出血、膿瘍などが原因で脳ヘルニアをきたす“可能性がない”場合には禁忌とはなりません。



■ルンバールとは!?

ルンバールは、腰椎部で行う脳髄液採取または検査のことであり、一般的には『腰椎穿刺』と言います。背中から腰椎と腰椎の間に針を刺し、脊髄くも膜下腔に存在する髄液を採取する手技であり、主に髄膜炎・脳腫瘍・くも膜下出血などの診断・検査に行います。
穿刺後に髄液の圧力を計り、糖や細胞数、蛋白などの各種データを測定するために56ml程度の髄液を採取しますが、この手技は難しいものではなく、15分~20分程度で終わる簡単なものです。
しかしながら、侵襲を伴う検査であるため、穿刺箇所や穿刺深度により合併症を発症することもあります。また、髄液を採取することで、髄膜や神経、静脈が下方に牽引され、鈍い頭痛を伴うことがあります。