2018年8月1日水曜日

■睡眠習慣を見直すことが重要

睡眠薬を使っていくにあたっては、睡眠習慣を見直すことも重要です。睡眠習慣と合わせて取り組むことで、睡眠薬に依存することなく不眠の改善を行っていきましょう。

ここでは特に、睡眠薬の使い方に関係する部分についてお伝えします。不眠で寝付けないとき、多くの方が間違った対処法を行っています。

・お酒に頼る
・なるべく早く寝る

この2つは不眠を悪化させてしまいます。お酒は寝つきを一時的に良くしてくれますが、睡眠の質を落としてしまいます。

また、なるべく早く寝てベッドで粘っている方もいらっしゃいます。ベッドでゴロゴロして眠れない時間をすごすことは、「なかなか眠れない」という失敗した認知を強めてしまいます。

むしろ睡眠時間は、ギリギリまで絞ってしまったほうがよいです。そして眠れないときは、粘らずに睡眠薬を使ってしまったほうが不眠はよくなります。

睡眠時間を5~6時間にしぼってデッドラインを設定し、その時間までは自然な眠気が生じたらベッドに入るようにしていきます。その際にお薬を使っていただき、それでも眠れなければ頓服をすぐに使ってください。

このようにして、ベッドに入れば眠れるという認知を作っていくことが大切です。





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2018年7月31日火曜日

■不眠のタイプ別の薬の使い分け

睡眠薬は、不眠のタイプ不眠期間の長さによって使い分けていきます。

まず不眠のタイプからみていきましょう。作用時間と睡眠の質によって使い分けていく必要があります。睡眠薬の作用時間と特徴を整理してみたいと思います。

自然な眠気を強くする睡眠薬としては、ベルソムラは中途覚醒や早朝覚醒に効果が期待できます。ロゼレムは、体内時計のリズムを整える作用が期待できます。
 
このため、お薬の作用時間の観点では以下のように使い分けられます。
入眠障害:超短時間型~短時間型
中途覚醒:短時間型~長時間型・ベルソムラ
早朝覚醒:中間型~長時間型・ベルソムラ

さらに睡眠の質の観点では、以下のように使い分けられます。
熟眠障害:ロゼレム・ベルソムラ・鎮静系抗うつ薬・抗精神病薬
悪夢:三環系抗うつ薬
睡眠覚醒リズム障害:ロゼレム

そして不眠で悩んでいる期間の長さも大切です。
一時的な不眠:短い睡眠薬
慢性的な不眠→長い睡眠薬・自然な眠気を強める睡眠薬

慢性的な不眠では、作用時間が長い睡眠薬を中心に使っていきます。これは睡眠薬の使用が長期にわたった時に、やめやすくするためです。ベルソムラのような自然な眠気を強める睡眠薬も依存性がないため、慢性的な不眠に向いています。

それに対して一時的な不眠では、短いタイプの睡眠薬で効果の実感が強いものを使っていきます。一時的な不眠を改善することで、心身の状態がよくなって不眠も改善することを期待していきます。
 
 

 

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■睡眠薬の「睡眠の質」への影響

睡眠薬を服用することで睡眠時間が長くなりますが、睡眠の質への影響はお薬によっても異なります。

睡眠は大きく2つに分けることができます。REM睡眠とnonREM睡眠になります。

REM睡眠では、身体が休みをとり脳では情報の処理を行っている睡眠です。私たちが夢を見ているときの睡眠で、REM睡眠が減ると身体の疲れが取れずに、記憶などが定着しづらくなります。

nonREM睡眠は、4段階に深さを分けられます。深い睡眠では、脳が休みをとっています。ですから深い睡眠が減ると熟眠感がなくなり、免疫などが低下します。

2つの睡眠のメリハリで、疲労やストレスから回復をします。これらの睡眠に対する不眠を改善するお薬の影響をみてみましょう。

最もよくつかわれるベンゾジアゼピン系は、浅い睡眠を増やすことで睡眠のメリハリが悪くなります。全体として睡眠の質が低下してしまいます。

睡眠の質を考えるときには、抗うつ剤や抗精神病薬も含めて考えていきます。抗精神病薬の睡眠への影響について、以下に代表的なお薬をまとめておきます。






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■睡眠薬以外の不眠に効果のあるお薬

不眠に使われるお薬は、睡眠薬以外にもあります。
・抗うつ剤
・抗精神病薬
これらのお薬のうち、眠気を生じるものがあります。患者さんの症状を全体的にみて、睡眠薬よりも効果が期待できることがあります。

抗うつ剤

  睡眠薬がわりに使われる抗うつ剤は、鎮静系抗うつ薬と呼ばれます。セロトニン2受容体をブロックする作用があり、これにより睡眠が深くなります。NaSSAや四環系、三環系などは抗ヒスタミン作用が強く、催眠作用も強く認められます。トリプタノールなどの三環系抗うつ薬はREM睡眠を減らす作用があるので、悪夢の時などに使われます。
 
 抗精神病薬


  抗精神病薬は、ドパミン2受容体をブロックすることで鎮静作用をもたらします。SDAやMARTAなどの非定型抗精神病薬にはセロトニン2A受容体をブロックする作用もあり、睡眠を深くする作用も期待できます。




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2018年7月30日月曜日

■睡眠薬の強さの違い



 睡眠薬ごとに強さは異なります。まずは睡眠薬のタイプによって比較してみましょう。これらのうち、おもに睡眠薬として使われているベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の強さについて、作用時間の違いごとに比較してみたいと思います。

睡眠薬の強さは、用量を増やせば作用は強くなります。ですから、最高用量で比較していきます。

超短時間型:効果のピークは1時間未満、作用時間は2~4時間
(ハルシオン>アモバン>マイスリー≧ルネスタ)

短時間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は6~10時間
(レンドルミン≧デパス≒エバミール
/ロラメット>リスミー)

中間型:効果のピークは1~3時間、作用時間は20~24時間
(ロヒプノール
/サイレース>ベンザリン/ネルボン>ユーロジン)

長時間型:効果のピークは3~5時間、作用時間は24時間~
(ドラール>ベノジール
/ダルメート≒ソメリン)

 用量を超えて過量服薬しても、効果が強まるわけではありません。睡眠薬の用量を決めるにあたっては、様々な量で効果と安全性を試験しています。

 その結果として効果が頭打ちになる量が、睡眠薬の最高用量となっています。眠れないからといって、用量を超えて使うことはやめましょう。




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