2026年7月13日月曜日

ABC理論:出来事・受け止め方・感情の構造を医療現場で活かす【コーチングシリーズ⑭】

 「怒りは第2感情」——アンガーマネジメントシリーズでもお伝えしましたが、今回はその背景にある「ABC理論」をコーチングの文脈で深掘りします。


ABC理論とは

アルバート・エリスが提唱した認知療法の基本概念です。

  • A(Activating event):出来事 遭遇する出来事。100%コントロールは不可能。
  • B(Belief):受け止め方 出来事をどう受け止めるか。自分の意志のもとに生まれる。
  • C(Consequence):感情 結果として生まれる感情・気持ち。

重要な発見:感情Cを生み出しているのは、出来事Aではなく受け止め方Bである

同じ出来事に遭遇しても、受け止め方が違えば、生まれる感情は全く変わります。


医療での具体例

場面:夜勤明けに急患が来た

Aさんの受け止め方:「なんでこんな時間に…最悪だ」→ C:怒り・疲弊感

Bさんの受け止め方:「よかった、私がいるタイミングで来てくれた」→ C:使命感・充実感

同じ「夜勤明けの急患(A)」でも、受け止め方(B)によって感情(C)が全く違います。


患者さんへの応用

場面:糖尿病と診断された患者さん

受け止め方①:「もう終わりだ、一生薬を飲み続けないといけない」→ C:絶望・無力感

受け止め方②:「早期発見できてよかった、今から気をつければ合併症を防げる」→ C:安心感・前向きさ

薬剤師が介入できるのは「B(受け止め方)」へのアプローチです。

「血糖値が改善してきましたね。この調子でいけば、合併症を防いで元気な生活が続けられますよ」という言葉が、患者さんのBを変え、Cを変え、次の行動を変えます。


怒りは「第2感情」

ABC理論と関連して、感情の構造を理解しましょう。

怒りは第2感情です。怒りの前には「期待」という第1感情があります。

薬を飲んでいない患者さんに怒りを感じる——その裏には「良くなってほしい」「心配している」という期待・一次感情があります。

その期待・一次感情を伝えると、相手の受け取り方が全く変わります。

「なんで薬飲んでないの!(怒り・二次感情)」 →「薬を飲んでくれないと、倒れたりしないか心配なんです(心配・一次感情)」

二次感情より一次感情を伝えることが、Iメッセージの本質でもあります。


受け止め方(B)を変えるコーチングの質問

受け止め方(B)に働きかけるコーチングの質問例:

「この状況を、違う角度から見るとどう見えますか?」 「10年後に今の状況を振り返ったら、どう見えると思いますか?」 「もし親友が同じ状況だったら、何と声をかけますか?」 「この経験から学べることは何ですか?」

視点が変わると、受け止め方が変わります。受け止め方が変わると、感情が変わります。感情が変わると、行動が変わります。


まとめ

  • ABC理論:感情Cは出来事Aでなく受け止め方Bが決める
  • 同じ出来事でも受け止め方次第で感情は変わる
  • 医療従事者が介入できるのは患者さんのBへのアプローチ
  • 怒りは第2感情——その裏の第1感情(期待・心配)を伝える
  • 受け止め方を変える質問で視点を広げる

次回は「コーチングマインドチェックリスト実践編:今の自分の姿勢を点検しよう」を解説します。


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