コーチングの前提となるのが「信頼関係」です。どれだけスキルが高くても、信頼関係がなければコーチングは機能しません。今回は信頼関係を作る3つの柱を解説します。
信頼関係の3つの柱
コーチングで信頼関係を作るには、3つの要素が必要です。
① 尊敬(Respect) 相手をリスペクトから入る。「尊敬しろ」ではなく、技術として考える。尊敬できるところを探してみる。そこから態度・声に出してみる。人間関係が上手くいきやすくなります。
② 安心感(Safety) コントロールではなく「安心感」があるかどうかが大切です。「正論・説得・おどす・物でつる・泣き落とし」などによるコントロールではなく、安心感を与えられているかを問い直しましょう。
③ 味方(Being on their side) 自分は相手にとって味方だと思ってもらうこと。相手の考え方を「受け入れる」のではなく「受け止める(共感する)」。目標を共有する。その人が大切にしていることを大切にする。
相手は、信頼されたら、裏切りにくくなる。
のび太くんとお母さんに学ぶ「信頼なき関係」
コーチングを語る時によく使う例が「ドラえもん」です。
のび太くんとお母さんの関係を「信頼関係の3つの柱」で見てみましょう。
- 尊敬 ×:上下の関係になっている
- 安心感 ×:「勉強しなさい!」はコントロール
- 味方 ×:のび太の考えを受け止めていない
これでは、いくら「コーチング的な質問」をしても心が開きません。
コーチングの本質は「正そうとするな!わかろうとせよ!」です。
ペーシング:空気を合わせる技術
信頼関係を素早く築く技術が「ペーシング」です。
ペーシングとは、相手にペースを合わせること——相手との間に「共通点」を見つけたり、相手の話し方や表情など、いろいろなことを意識的に合わせていくことです。
ペーシングできること:
- ①視線を合わせる(視線の高さを合わせる)
- ②表情・感情・あいづちのスピード・言葉
- ③話し方(スピード・トーン・テンション)
- ④動き・仕草(身振り・手振り)
人は自分と似た人に安心する。
共通点探しで、相手に「安心感」をプレゼントしましょう。
タイプ別コミュニケーション:みんなに同じ声かけをしない
2015年に突然、薬局長に任命された私が最初に悩んだことがあります。
「みんなに響く言葉を掛けたい!」
でもすぐに気づきました——スタッフには、いろんなタイプがいると。
- 給料重視のスタッフ
- 仕事のやりがい・満足度重視のスタッフ
- 働きやすさ重視のスタッフ
- 休みの取りやすさ重視のスタッフ
- 人間関係重視のスタッフ
同じ声かけでは、全員には届きません。「松岡修造さん」のような情熱的なコミュニケーションが全員に響くわけでもない。
そこで活用できるのが「ソーシャルスタイル」によるタイプ別コミュニケーションです。
ソーシャルスタイルの4タイプ
1968年に社会学者David Merrillらが提唱した「Social Style(ソーシャルスタイル)」を使い、外から見えるその人の態度を4タイプに分類できます。
「自己主張の強弱」と「感情表出の強弱」の2軸で分類します。
コントローラー型 人に指示されるのが大嫌いな行動派。論理と結果を重視。短く簡潔に要点を伝える。
プロモーター型 注目されるのが大好きな社交家。人との関わりを楽しむ。明るく話しかけ、アイデアを認める。
アナライザー型 計画・分析を重視し、我が道を行く勉強家。データと根拠を示す。論理的な説明を好む。
サポーター型 和を好む気配り上手。人間関係を大切にする。共感と安心感を与える話し方が有効。
医療での実践:タイプ別に声かけを変える
コントローラー型の患者さんへ: 「端的に言うと、○○の薬を飲むと△△%改善します」
プロモーター型の患者さんへ: 「一緒に頑張りましょう!きっとできますよ!」
アナライザー型の患者さんへ: 「この薬の作用機序はこういう仕組みで、データ的には○○%の効果があります」
サポーター型の患者さんへ: 「ご家族のためにも、一緒にゆっくり考えていきましょうね」
まとめ
- 信頼関係の3つの柱:尊敬・安心感・味方
- コーチングの本質:「正そうとするな、わかろうとせよ」
- ペーシング:相手に合わせることで素早く安心感を与える
- タイプ別コミュニケーション:同じ声かけでは全員に届かない
- ソーシャルスタイル4タイプ:コントローラー・プロモーター・アナライザー・サポーター
次回は「コーチングの3大基本スキル:傾聴・承認・質問の全体像」を解説します。
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