コーチング面談の実践で最も使われるのが「GROWモデル」です。患者さんとの服薬指導から、スタッフとの1on1面談まで幅広く活用できる強力なフレームワークです。
GROWモデルとは
GROWモデルは、コーチング面談の質問を4つのステップで構造的に捉えるフレームワークです。
- G(Goal):ゴール——目標を明確にする
- R(Reality):リアリティ——現状を明確にする
- R(Resource):リソース——活用できる資源を確認する
- O(Option):オプション——選択肢を引き出す
- W(Will):ウィル——意思決定を促す
このモデルを使うことで、面談中に「どこを質問しているのか」が明確になり、迷子にならずに済みます。
G:ゴールの質問——あるべき姿を明確にする
まず「どういう状態を目指しているか」を明確にします。
ゴール設定の質問例:
- 「どういう状態を目指していますか?」
- 「具体的にはどういうことですか?」
- 「例えばどういう状態でしょうか?」
- 「どれくらいの数値になると達成感が得られますか?」
- 「その目標を達成したい理由は何でしょうか?」
- 「その目標が達成できたら何を得られると思いますか?」
糖尿病患者さんへの例: 「血糖値をどのくらいにしたいですか?」 「HbA1cが7.0%になった時、どんな生活ができていると思いますか?」
目標の数値だけでなく、「その目標を達成した先にある生活・未来」を明確にすることが重要です。未来のイメージが明確なほど、行動への動機が強くなります。
R:リアリティ&リソースの質問——現状と資源を明確にする
現在の状態と、活用できる資源(人・物・時間・経験)を確認します。
現状確認の質問例:
- 「そのことについて、現在はどんな状態ですか?」
- 「今までどんな対応を取ってきましたか?」
- 「上手くいった点とそうでない点は?」
資源確認の質問例:
- 「活用できる資源はありませんか?」
- 「誰か頼れる人はいませんか?」
- 「うまくいくときといかないときの差は何だと思いますか?」
スタッフ面談での例: 「この半年で、自分が頑張れたと思うことはどんなことですか?」 「その経験から、今後に活かせることはありますか?」
O:オプションの質問——選択肢を豊富に引き出す
ゴールに向かうための「選択肢」をできるだけ多く引き出します。
選択肢を引き出す質問例:
- 「どんなことをすると目標が達成できそうですか?」
- 「他にはいかがですか?」
- 「うまくいった時のやり方を再現できる方法は?」
- 「別のやり方で目標達成できる方法は?」
- 「もし制限がなかったとしたら、何をやってみますか?」
ポイント:どれだけ豊富に選択肢を出せるかが大事です。「それしかない」ではなく「こんな方法もある」という可能性の広がりが、相手の自主性を引き出します。
W:ウィルの質問——意思決定を促す
選択肢から実際に「何を、いつ、どうやって」実行するかを決める段階です。
意思決定を促す質問例:
- 「様々な選択肢の中で、何を実行に移しますか?」
- 「いつまでに実行しますか?」
- 「達成の可能性は何%くらいだと感じますか?」
- 「進捗のチェックはどうやって行いますか?」
- 「誰か巻き込んでおいた方がいい人はいませんか?」
大切なこと:コーチが答えに誘導(エセコーチング)するのではなく、相手が本当に求めている正解に導いてあげることが本物のコーチングです。
面談の4レベルと目指すべき関係
スタッフとの面談には4つのレベルがあります。
- レベル1:雑談面談
- レベル2:トラブル対応面談
- レベル3:問題発見・悩み解消面談
- レベル4:目標共有・共感度アップ面談 ←ここを目指す
多くの管理職が「チームがひとつにならない」と悩みますが、原因は「目標をベースとしたコミュニケーションの不足」にあります。
GROWモデルでの面談習慣が、チームを目標共有・共感度アップの段階へ引き上げます。
私の1on1面談テンプレート
参考として、私が実際に使っている1on1面談のテンプレートを紹介します。
今期(12月〜5月 or 6月〜12月):10点満点中何点? →「何でその点数だったの?」 →「頑張ったこと、取り組んだこと、反省を教えてください」
どうすればあと1〜2点上がりますか? →「次期に向けて頑張りたいこと、やりたいこと」
悩みや問題はある?
周りにプラスを与えられること(患者・自部署・他部署)——一つ宣言
シンプルですが、このテンプレートを使うことで面談が「雑談」で終わらず、スタッフの成長と目標共有につながります。
まとめ
- GROWモデル:G(目標)→ R(現状・資源)→ O(選択肢)→ W(意思決定)の4ステップ
- 目標の数値だけでなく「達成した先の未来」を明確にする
- 選択肢は豊富に引き出す——「これしかない」から「こんな方法も」へ
- コーチは相手が本当に求める答えに導く(エセコーチングにならない)
- 1on1面談を習慣化することでチームが目標共有・共感度アップへ
次回は「アドラー心理学の5つの要素:医療従事者のための人間関係の教科書」を解説します。
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