2013年9月30日月曜日

■脂肪乳剤は、基本末梢投与です。

『脂肪乳剤って末梢から投与してもいいんですか?』
『脂肪乳剤ってCVの側管から投与してるんですけど、いいんですか?』
などたまに質問受けます。

■脂肪投与量
①必須脂肪酸欠乏の予防
成人では、10%脂肪乳剤100~200ml/日または500ml/週
②エネルギー源として
全投与量の20~30%程度
成人では20%脂肪乳剤250ml/日程度

■脂肪乳剤投与上の注意点
①脂肪投与量が多すぎると、高脂血症や肝障害などを発生する。
②日中に投与して翌朝の採血で高脂血症になっていない範囲で投与する。
③脂肪のみを投与したり、同時に投与する糖質が少ないと、よく代謝されない。
④脂肪乳剤は、Caイオン・Mgイオン・Znイオンなど二価以上の陽イオンを含む輸液と混合するとただちに巨大化する。そのため、多剤との混合投与には十分な注意が必要である。
⑤脂肪乳剤の投与速度:脂肪が円滑に代謝されるためには、一般的な投与速度は0.1~0.15g/kg/時とされている。投与により静脈炎や血管痛・発熱・悪心・嘔吐・悪寒・顔面紅潮・頻脈・頻呼吸などの急性症状を起こすことがある。また、急速投与すると網内系の抑制によって免疫能が低下し感染症の増悪する危険性がある。そのため、代謝速度を勘案し、至適投与速度0.1g/kg/時以下を守るべきである。
⑥脂肪乳剤にはダイズ油由来のビタミンK1を微量含んでおり、ワーファリンの作用を減弱させるおそれがあるので注意する。
⑦n-3系の必須脂肪酸含有量が極端に少ない(α-リノレン酸は微量、EPAやDHAは全く含まれていない)ため、エネルギー基質として大量に投与(投与総カロリーの20~30%)しないときにはn-3系の欠乏症がおこりうる。
⑧血漿増量剤の荷電によって脂肪粒子表面の荷電に変化が生じるため、デキストランが体内から消失する時間(約96時間)以内では脂肪乳剤の投与を避ける。
⑨可塑剤のDEHP(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)を含む輸液セットで、脂肪乳剤を投与すると、DEHPが溶出し投与されてしまう。そのためDEHPを含まない輸液セットなどをしようすることが望ましい。

■脂肪乳剤は基本末梢投与です。
理由なんですが、
・粒子が巨大化しやすい→粒子の系が大きくなる→毛細血管が、詰まりやすくなる。
・脂肪乳剤は白い→配合変化などの確認ができない。
・脂肪のため細菌繁殖が起こりやすい
・TPNなどのCVからの投与は、フィルター詰まりの原因となる。
などが考えられます。


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2013年9月29日日曜日

■栄養剤に水を混ぜて注入するといけないのは、なぜですか?

▼原則的に、栄養剤は薄めないと考えてください。
栄養剤のみを先に注入してから、白湯やお茶はあとから注入するのが正しいという考えに最近はなっているみたいです。特に、お茶で栄養剤を薄めるっていうのは、栄養剤のたんぱく質と固まってしまってカテーテルを詰まらせる原因となったりするのでやめた方がいいです。
確かに以前は、栄養剤の浸透圧を下げるため水などで薄めて注入した方が下痢などが起こりにくいんじゃないかって言われてました。けどその考え方は見直されてきました。
日本で発売されている経腸栄養剤は、1kcal/mlの低濃度の製品が多く、もうこれ以上薄める必要がないほど薄いのです。
まっ最近では1.5~2kcal/mlのものも発売されてます。これらの製品は、1kcal/mlの製品では濃度が薄いので、量が多くいってお腹は膨れるがその割には栄養が入らないとかお腹(胃)が膨れ上がって胃食道逆流の危険性が増えるといったことなどに対して改良されたものです。
でも、白湯で薄めないといけない場合もあります。
それは、栄養剤に対して濃度依存性に下痢を起こす患者様に使う場合だったり、長期間消化管を使っていない患者様に栄養剤の慣らし運転をする場合です。慣らし運転は、濃度を低く量を少なくして栄養剤の投与を開始し、様子をみながら少しずつ増やしていくやり方です。あとは、栄養剤の固形化も結果としては薄めていることになりますが、特別な目的があるとき以外は薄めない方がいいのです。

▼さっここで、よくある質問です!!
『栄養剤のみを注入しても後から白湯を入れるのだから、胃の中で混ざって結局混ぜて注入するのと同じことじゃないの?』
この答えも調べました。これについて研究した人は偉いですよ~ヾ( ´ー`)
この考えは、間違いなのです。核医学的胃排出時間〔胃から栄養剤が十二指腸に出ていく時間を、胃内容が半分になるまでの時間で表したもの〕は、およそ55~70分〔高齢者では、57~106分〕だったみたいです。つまり、栄養剤が滴下されている間も、胃内容物はどんどん腸に流れているということになります。なので、胃内容が減った状態で後から白湯が入ってくるのと、最初から薄まった栄養剤が胃に入ってくるのとでは、違う現象であることがおわかりいただけるかと思います。それは、栄養剤を嘔吐して誤嚥するリスクと、白湯を嘔吐して誤嚥するリスクの差です。

▼下痢防止のために水で希釈しない。
栄養剤を水で希釈するのは、何度も言いますが、浸透圧を低下させるためです。じゃあその希釈することの問題点を考えてみましょう。まず希釈するという操作自体が細菌汚染の原因となります。なので、下痢予防のために栄養剤を水で希釈するのは逆効果です。また、栄養剤を薄めることは、栄養剤の粘度を低下させ、胃・食道逆流を誘発し、誤嚥性肺炎のリスクを高めます。そして水分の過剰摂取にも繋がり、下痢の原因になったりもします。
ヒトは約7,5Lの水分が唾液や消化液として分泌されています。特に小腸内には、1日に約7Lの小腸液が分泌されているため小腸内で希釈されるそうです。ですから、経腸栄養剤の投与速度を落とすと、経腸栄養剤が消化液で自動的に薄められるので、水で希釈するのと同じ効果が得られます。投与速度を半分に落として投与すれば、水で倍量に希釈するのと同じ効果が得られ、投与時間は同じです。
日本は、まだまだかもしれませんが、海外では、経腸栄養剤は水で希釈しないことが常識となっているそうです。
ただし、小児の場合は、腎機能の関係から高浸透圧性アシドーシスを予防するために0.5~0.8kcal/mlの濃度で投与することが推奨されています。

▼高濃度栄養剤〔1.5kcal/ml以上〕は下痢がおおいのでしょうか?
高濃度〔1.5kcal/ml以上〕の栄養剤は、浸透圧が高いため下痢が多いというイメージがあります。しかし、浸透圧が760mOsm/Lある成分栄養剤〔エレンタール〕とかの栄養剤ならともかく、高濃度という場合でも半消化態の栄養剤の場合は、それほど高くありません。約540mOsm/Lの浸透圧製品で、下痢の発生頻度が9.1%と報告されていますが、1kcal/mlの製品と比べてもそんなに高くありません。700mOsm/L以下なら特に問題はないと言われています。



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